ねとらぼ

アレキサンドライト――#2。


II


 強引に修理に出してやろうかと思うが、
 致し方ない。

 なにせ、鉱石からつくりだされた世界的にも稀少なアンドロイドなのだ。

 だから僕は、事務所の掃除洗濯料理など家事全般のほかに、事務と受付と人形のオイル差しと人工筋肉の手入れと電話のアポイントメント対応に至るまで、すべての業務をこなして死にかけていた。

 そんな日々だった。

 ボンパーン、と壊れすぎたチャイムの音が鳴った。

 告解の来客がやってきた。

 顔がツギハギだらけの、いかつい男だった。『暗殺者の館』に出てくるピーター・ローレのような風貌だ。

 だが、その巨体が、罪を告白する教会の告解部屋に入ると、嗚咽に震えた。

「最愛の娘が死んだのです」

 その瞬間、タイプRの表情がわずかに動いた。

 メルクリウス社管轄の病院から、大量の遺体の頭部が持ち出されたという事件を人づてに聞いたのは、それからしばらくしてからのことだった。

 ――その時はまだ、その娘の人格が彼女に移植されていることを知らなかった。

東京レッドライン 近衛りこ 羊肉るとん


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