8月22日〜24日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「エンディング産業展」が開催されました。エンディング産業展とは、墓石、火葬、ペット墓、遺言など、人生の終わりにまつわるさまざまな分野に携わる会社が集まるイベントです。
さまざまな企業が出展しているなか、ひときわ目を引く展示品がありました。遺品整理の会社「ToDo-Company」ブースに飾られていた、「孤独死の現場のミニチュア」です。
編集部注:本記事は「孤独死」の現場を再現したミニチュアの画像を掲載しています。

いつ誰が孤独死を遂げてもおかしくない
制作しているのは、同社に勤める遺品整理人の小島美羽(こじま・みゆ)さん(関連記事)。小島さんは孤独死の現実を広く知ってもらおうと考え、2016年から独学でミニチュアを作りはじめました。写真では生々しすぎて見てもらえない場合、また故人のプライバシーを守れない場合があるため、適度に現実をデフォルメしたミニチュアを通じて伝えることにしたそうです。

経済的に裕福でも、誰も知らないまま1人で亡くなる方も
例えば首都圏で政治活動をしていたという男性が亡くなった部屋のミニチュアは、高価そうな家具や芸術品が飾られているなか、1つの椅子だけに血がしみついています。男性は高級マンションの一室で、椅子に腰かけたまま亡くなっていたそうです。高級マンションは防音や防犯がしっかりしているため、かえって中で人が亡くなっていることに気づかれない場合があるといいます。この作品は、経済状況にかかわらず、孤独死は誰にでも起きうることを伝えています。

よく片付いたきれいな部屋だが……
娘さんが地方に嫁ぎ、父親ひとりで暮らしていたというアパートの1室を再現したミニチュアには、タバコやクロスワードパズル、競馬雑誌、処方せんなどが散乱していました。自炊ができなかったため、棚にはレトルト食品がいくつも置かれています。近所の人の連絡で部屋に入ると、父親はすでに布団の上で亡くなっていたそうです。ふとんについた人型のしみは、生活感を色濃く残す部屋の主がこの世にいないことをはっきり物語っています。

ふとんには人型のしみが残る

物が無造作に散らばっている部屋

手前のコンロは電気をつけると青く光ります
現在、ミニチュアの写真とともに小島さんが見てきた孤独死のエピソードを紹介する書籍『時が止まった部屋―遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし―』(原書房)が発売されています。価格は1512円(税込、以下同)です。誰にとってもひとごとではない「死」について、ミニチュアを通じて考えてみるのもいいかもしれません。

たくさんの遺品が置かれた部屋。表彰状や客用のふとんが目につく。生前につながりを持っていた人にも孤独死のリスクはつきまとう

本棚には辞典などたくさんの本が入っている

ネコを8匹飼っていた家。飼い主が孤独死すると、ペットも亡くなってしまう場合が多いほか、生き残ったペットも新しい飼い主が見つからず保健所へ連れていかれてしまうことがある

特に多いケースだという中高年男性の部屋を再現したもの。布団を中心に生活していることがわかる

2019年8月20日に発売された小島さんの著書(書影はAmazonより)
エンディング産業展では、ほかにも終活に関するさまざまなブースが出ていました。
アルマークが展示していたのは、卒塔婆を手軽に印刷できるプリンターです。ベルトコンベアーに乗った卒塔婆が四角いプリンターへ吸い込まれていくと、瞬く間にお経が印刷されて出てきます。インクは速乾で、出てきてすぐに触っても手につきません。
また、宇宙に散骨する「宇宙葬」を提案する企業もありました(銀河ステージ)。遺灰をおさめたカプセルを月面へ運ぶ「月旅行プラン」(270万円)など、新しい埋葬の形も始まっているようです。

印刷したての卒塔婆(アルマーク)

ファッショナブルな骨壺(エスケー)

ねぶたをモチーフとしたお花の祭壇(フォーシーズンズ)
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