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どうも、お笑い芸人のヤマグチクエストです。
皆さんは、1997年10月16日に発売され、今もなお愛され続けているプレイステーション用ソフト「moon」をご存じでしょうか?
初代PSでも指折りの名作と呼ばれながら、その後他ハードへの移植などは一切なく、さらに開発元のラブデリックが解散してしまったこともあり、もはや再販は絶望的とも言われていた同作。新品ではプレミアがつき、中古市場でも定価以上は当たり前……そんな「moon」が、来る10月10日にNintendo Switchで復活することになりました(公式サイト/ニンテンドーeショップ)。
ということで、今回はねとらぼ編集部の方々に、なぜ「moon」という作品がこれほど愛されているのか、なぜ「伝説」とまで呼ばれているのかをプレゼンさせていただこうと思います。

ヤマクエさん所有の、初代プレイステーション版「moon」
ライター:ヤマグチクエスト

笑いを忘れたゲーム好き芸人。中でもRPGやシナリオの思い入れが強く、「伏線」「考察」と聞いただけでよだれが出る。あと野球も死ぬほど好き。
過去にねとらぼで取材した記事:「ゲームやってない奴って話がつまんなくないですか?」 ガチゲーマー芸人「ヤマグチクエスト」のゲームへの異常な愛情
「moon」をプレゼンされるねとらぼ編集部の面々

ヤマグチクエスト:
プレゼンする人。ガチゲーマーでお笑い芸人。

たろちん:
やったことはないが、「神ゲー」であるという情報のみ知っている。

山下ラジ男:
「moon」って「何?」って感じ。情報は「無」。

マッハ・キショ松
「FFの黒魔導士っぽい奴が出てくること」と「今回のリメイクが2000円くらいで買えること」は知っている。

「黒魔道士っぽい奴」はたぶんこれのこと(公式サイトより)
誰もが無理だと思っていた「moon」のリメイク

編集部の会議室に集まってもらった

今んとこ、全員ほぼ無関心ってことでいいですね?(半ギレ)

いや無関心ってことはないけども。ヤマクエ先生ほどの熱はないってだけで。

再販なんてありえないだろうなと誰もが思っていたところに来た朗報中の朗報だからね? 20年以上の時を超えたんだからね!?

はあ……。

しかも1980円ですよ! 再販されないばっかりに、プレミアつきまくって中古でも6000円くらいしてたのに!

新品だと?

新品だと5万円前後で買えたらラッキーってレベルですよ!

うわあ……。

新品だと5万円近くする(Amazon.co.jpより/価格は記事執筆時点)

サントラもめちゃくちゃいいんですが、これも中古で2万円弱しますからね。

もうお宝レベルだ。

それくらいの値段でも取引されるくらい面白いし、魅力あふれるゲームだってことです。皆さんにそういった情報が何もないことが今手に取るように分かりましたけど、その方がやりやすいです。

なんかすいません。

早速ですが、やりましょうか。

よろしくお願いします。

聞く姿勢に入る3人
RPGって本当に「冒険」するゲームなの?

まずこの「moon」ですが、「アンチRPG」などといわれておりまして、「もう、勇者しない」というキャッチコピーとかCMなんかも有名です。

なんか聞いたことあるかも。

「アンチRPG」とは

ところで皆さん、「RPG」って何だと思います?

ええ……! えっと、「ドラクエ」とか?

まあそうですよね。あと「FF」とか。いわゆる「冒険」ですよね。

うん、モンスター倒して、レベル上げて、魔王倒すってのがRPGってイメージ。

そのイメージを作り上げた王道作品たちは確かにすばらしいし、僕もめちゃくちゃ大ファンです。でもよく考えてください? 「ロールプレイングゲーム」って、魔王を倒すとか、冒険とか、一言も言ってないですよね?

……ん? 確かに。

「役割をプレイする(直訳)」という意味なんですよRPGって。だから「モンスターを倒したりしなくてもRPGは作れるんだ」ということを20年以上前に試みて、証明したのが「moon」なんです!

公式サイトより。RPGを遊ぶ時、こんな疑問を感じたことはない?

はー。ちなみに、同じ年に出たゲームって何があるんです?

発売したのが1997年で、同じ年に「FF7」が出ています。「RPGといえばこういうもの」というイメージが完成しきったところで「アンチRPG」を作ったんです。

同じ年に発売された「ファイナルファンタジーVII」(画像は駿河屋より)

そりゃ伝説だわ。

いやいや、こっからですよ「moon」は!
何かがおかしい「MOON」の世界

ゲームをスタートすると、最初は「MOON」っていう別のゲームが始まります。「邪悪なドラゴンを勇者が討伐する」っていうRPGで、とある少年が部屋でこれを遊んでいるんです。

ゲームの中で別のゲームが始まるんだ。

ゲームで遊ぶ少年

「MOON」のタイトル画面

で、しばらくは勇者になってこの「MOON」の中を冒険することになるんですが、これがなんだかおかしい。

ほう?

オープニングのメッセージが、なんか意味深なことを言ってるようで言ってなかったり、民家のタンスを漁るといきなり伝説の装備が一式手に入ったり、最初のマップでそれを装備するといきなり虹の橋がかかって先へ進めるようになったり。

意味深なようでよく見ると意味不明なオープニング

タンスからいきなり伝説の兜、鎧、靴が出てくる

装備するとなぜか虹の橋が

RPGでよくあるやつだ。

いきなり伝説の装備一式まるまる手に入ったりする?

何というか、いちいち「RPGっぽさ」がオーバーなんですよ。でまあ、途中いろいろすっ飛ばしながらゲームは進んでいって、なんだかんだでラスボスのドラゴンを倒す直前までたどり着きます。

ドラゴンをボッコボコにする勇者

展開が早い。

ところがドラゴンを倒すか倒さないかというところで、急に画面が真っ暗になって、お母さんに「ゲ―ムなんかやめて早く寝なさい!」って怒られるんです。

ん!? あそうか、少年が遊んでるって設定だった。

少年はそれでしぶしぶゲームをやめて寝ようとするんですけど、するとなぜかまたゲームが起動して、少年をゲームの中に吸い込んでしまう。ここから「moon」の本編が始まるんです!

テレビの中に吸い込まれてしまう少年

少年は空の穴から落ちていき、ゲームの世界へ

ああ、ここまでがオープニングだったんだ。

そういうことです。ところがいざゲームの世界に入ってみると、さっきやっていた勇者の行動が絶対的な正義ではないことに気が付く。

悪いドラゴンやっつけるぞって正義じゃないの?

例えばさっきのゲームの中で、勇者は「くるったいぬ」というモンスターと戦っていました。でもよくよく行動を振り返ってみると、この犬、しっぽを振ったりしているだけで、特に攻撃してきたりはしていなかったんです。

「くるったいぬ」と戦う勇者

「しっぽをふる」で攻撃をしてくるが……

で、同じシーンをゲームの中で見てみると、実際はただのおとなしい犬で、勇者がそれを追いかけ回していただけだったことが分かるんです。

んん?!!!

犬を追いかける勇者

それからさっき、民家のタンスをあさって手に入れた伝説の装備。

RPGの主人公が民家のタンス漁ってるのとか普通に異常だもんなあ。

これも実は、ただの「○○と○○○○○」だったんです(※編注:ちょっとネタバレなので一部伏せ字に)。

「伝説の装備」を身に着ける勇者(※クリックでモザイクが外れます。これもちょっとネタバレ注意)

そりゃ伝説だわ。

いや勇者気付けよ。

他にも、罪のないモンスターを魔法で黒コゲにするシーンを目の当たりにしたり、実は勇者がヤバいやつだということがだんだん分かってくる。

ほえー。

ゲームに入るまではごく当たり前だと思っていたことが、中に入ってみると全然違って見えてくるんですよ。RPGで出てくる「ザコ敵」って、問答無用で「悪」じゃないですか。でも、そんな彼らの意思を顧みず「勇者」の目線だけで語られる物語って、果たして「正義」なのかなということを訴えかけた導入なんです。

勇者の前に立ちはだかるスライム……という構図ではなく

何もしていないのに、魔法で黒焦げにされてしまうスライム

おお! 「アンチRPG」だ!

ただ、それだけじゃない。その逆転の発想だけだったらこのゲームは伝説なんかじゃない。

先生、テンション上がってきた。
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