「あ〜セフレ欲し〜〜」「あれ楓 彼氏いなかったっけ」「別れたんだってさ」――そんな女子高生たちの恋愛トークが繰り広げられる漫画「と或る女たち」が、ラストにわかる“ある思い”にハッとしてすぐに再読したくなる展開です。

お昼休みの何気ない会話のようですが……?
学校の休み時間、何気ない軽いひと言から始まった、高校2年生の女子4人による恋愛トーク。彼氏と別れた理由を「向こうの愛が重過ぎた」と話す楓は、セフレという関係が合理的だと話し、それに対してそれぞれがお菓子を食べながら話します。
「“初めて”がまだなのにセフレが欲しいの…?」と困惑する響、「もーちょいキュンキュンしたい」と話す凛花、「まぁセックスって運動だからね」と真顔で語り出す梨元。クラスの男子にはキツそうな生々しい内容ですが、彼女たちの仲良しぶりがわかるノリの良い会話は見ていて楽しいです。テンポの良さがまるで漫才のよう!

女子高生たちのリアルでテンポの良い掛け合いが楽しい
そして話し合い(?)の結果、打ち解けやすいのもセフレを切り出しやすいのも「異性より同性の方」という話の流れに。そこから翌日は「イメトレ」という名の女子同士についての妄想や、「みなさんそろそろ すけべについて話しませんか」と“触覚”の話をしつつ、昼休み終了のチャイムで4人の会話は終わります……が?

話は「女子相手のが(打ち解けやすくて)いい」という方向へ
おしゃべりな女子高生たちの何でもない日常会話。しかし、これまで話した内容は楓にとっては大事なことでした。授業が始まる直前、彼女は同じクラスの響に、どういう考えでセフレが欲しいと言ったのか説明し、響が「私は楓がそうしたいならセフレ作んのも有りだと思うけど」と話したのを機に、「じゃあ響きはセフレになってって言ったらなってくれる?」と真剣な表情で聞くのでした。ああ、そういうことだったのか……!

どんな気持ちでこの言葉を口にしたのかを想像すると胸が……
同漫画は、同性の友達に“想い”を寄せる女子高生のお話。楓の響への気持ちはラストで明かされ、それまでの会話に含まれていた彼女の言葉の意図に気付きます。ハッキリと伝えることができず、どうにか相手にとって重くならないように“セフレ”という言葉を出したりしたのかな……などと想像すると、胸にポッカリ穴が開いて徐々に切なさで埋まっていくような感覚になります。
作者は、深山はなさん。今回の漫画は12月に発売された初単行本『一端の子』のうちの1編です。女性を愛する女性たちの物語8編が収録されており、第7話「防弾ガラス張り」では、そんな女性の一人である蓮水さんを“そう”だとは少しも思いもせずに口説く男性(彼女と同棲中)側の視点で物語が描かれます。

高校生の時に高根の花だった蓮水さんとバイト先で一緒になった陽輔は……(第7話「防弾ガラス張り」より)
伝わらない本当の思いや言葉、現実に存在する常識や差別。しかし、描かれているのは同性愛ならではの苦悩というだけでなく、全ての人間関係に言えることだと気付きます。そして、愛ってなんだろうという、その答えの無い答えを描いている。そんな作品となっています。

友だちに告白されて引いてしまった中3の思い出に後悔する女性や、もともと“ストレート”だった女性も登場します(第3話「無題」より)
ちなみに作者の深山さんは同作がデビュー作であり、2019年4月号からリニューアルした『別冊少年チャンピオン』での連載開始時の年齢は20歳。持ち込みから一発で連載が決まったことからも逸材ぶりが伺えます。
第1話「えがお」は秋田書店の公式ページにて試し読みが可能です。エピソードによって色が違い、順に読んでいくとまた各話の印象も変わるので、興味を持った方は単行本を手に取ってみることをおすすめします。
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