これまで、「ブレードランナー」シリーズや「ターミネーター」シリーズなどでも扱われてきた人工知能。それを題材とした映画「AI崩壊」が1月31日から公開されています。

大沢たかおさん演じる天才科学者の桐生浩介が開発した医療AI「のぞみ」が突如暴走してしまった10年後の未来が描かれる同作。「22年目の告白 -私が殺人犯です-」などを手掛けた入江悠監督が、「AI崩壊」に加えたオリジナリティーや今、人工知能を題材とした作品を撮った理由などを語りました。

――入江監督は、もともと近未来映画を撮ることが夢だったとお伺いしました。
入江悠監督(以下、入江監督) もともと子どものころにSFや近未来を描いた作品を多く見て育ったので、自分もそういう映画を撮りたいと夢見ていました。
「ターミネーター」シリーズや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズは大人になってからも繰り返し見てしまうくらい面白い作品ですね。だいぶ刷り込まれていると思います。
――日本でハリウッド映画のような近未来を撮るのは難しそうな印象ですが、実際どうですか?
入江監督 自分が映画の世界を志したとき、日本映画で近未来の作品を撮ることのハードルの高さを知りました。それは、予算的なことだったり技術的なことだったりするのですが、やはりハリウッド映画という大きな壁が立ちはだかっていて、そこに立ち向かうには相当な限りのことがないと無理だと思い、封印していた時期もあります。
近未来を題材とした作品が日本で公開されると楽しみに見に行っていましたが、やはりオリジナリティーを出すのは難しいんだなと感じましたね。
――かなりハードルが高いのですね……。
入江監督 自主映画を作っていた20代のときに、大学時代の友人や映画好きの知人と一度だけ近未来ものに挑戦したことがあるのですが、見事に失敗しました(笑)。近未来ものを撮るとなると、ガジェットや衣装などいろいろなものの予算のかかり方や作り込みが勝負になってくるので、これは無理だなと。近未来映画についてはほぼ忘れようとしていました。
――オリジナル脚本で近未来ものというのは日本映画では珍しいですよね?
入江監督 実写映画でオリジナル脚本というのは珍しいですね。「シン・ゴジラ」などは昔から積み上げてきた歴史の力があると思うのですが、何もない状態から立ち上げるとなるとほぼ不可能に近い。それをやらせていただけるというのは、すごくラッキーですし、その分プレッシャーもありました。

――撮影もかなり大規模でしたね。こだわった部分などありますか?
入江監督 桐生の逃走シーンは、似たような風景だと観客も飽きてしまうし、桐生が必死に逃亡している感じがなくなってしまうと思ったので、プロデューサーとアイデアを出し合いましたね。最初の車の渋滞シーンからスタートして、どう逃げていくか、どれだけバリエーションを持たせられるかというのは、ひとつ勝負だったところでもあります。
キャスティングが決まった後には、大沢さんも意見を出してくださったので、逃げていく過程の幅広さが出ていると思います。



全国各地で撮影されたという逃走シーン (C)2019映画「AI崩壊」製作委員会

――大沢さんとはキャラクター像についてもかなり話し合いを重ねられたそうですね。
入江監督 そうですね。桐生という人間は、AI開発者としてそのジャンルに関しては天才ですが、それ以外は生身の人間で、1人の父親なので、血の通った人間として動くようにしたい、という意見をいただきました。スーパーマンではないし、アクションを完璧にこなしてしまうと現実離れしてしまうから、リアリティーの部分を追求したい、とおっしゃっていました。
――他のキャストの方とも話し合いをされましたか?
入江監督 賀来賢人さん(西村悟)とEXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの岩田剛典さん(桜庭誠)は、自分たちの役柄についてかなり相談してくれました。2人の役柄はサスペンス的な要素も含まれていますので、その役割を果たせているだろうか、と撮影中にすごく繊細に考えてくれていました。
2人とも演技経験が豊富で、頭のいい方ですので、脚本を読んだ段階で自分たちの役割を把握されていて、こちらから何かをお伝えすることはなかったのですが、それでも自分たちが思う正解を疑ってかかる繊細さが素晴らしいと思いましたね。


賀来さんは、桐生の義弟でAIのぞみを管理するHOPE社の社長、岩田さんはサイバー犯罪対策課を指揮する警視庁理事官(C)2019映画「AI崩壊」製作委員会
あとは、観客の方が人工知能や科学というものに入りやすいよう、三浦友和さん(合田京一)と広瀬アリスさん(奥瀬久未)のアナログ的な刑事というキャラクターを設けて、ベタな刑事ものという要素を足しました。あの2人が出てくるとすごくほっとするというか、土臭い感じもあったり2人の掛け合いも面白さがあったり。専門的な用語が出てくる中で、2人が観客と同じ立場でちゃんと操作してくれていますね。いいバディものになっているなと思います。

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