3倍速くはない……けれど、きっと3倍快適に違いない。もうすぐ完乗率100%の筆者が、どれだけ快適かを早速チェックしてきました。【写真54枚】
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「ひのとり」すごい 締めくくりはすがすがしく、最後まで快適な乗車体験
ひのとりは伊勢中川駅手前での分岐点を右へ。ここは近鉄の名所の1つ。駅を経由しないで近鉄名古屋線と近鉄大阪線を短絡する線路です。ぜひ見届けましょう。左から近鉄大阪線と合流した後、ひのとりはスピードアップ。スマホのGPS速度計アプリでは時速110キロを記録しました。音圧測定アプリでは平均75デシベル。飛行機や新幹線が90デシベルくらいですから、かなり静かです。

景色は平野から山岳へ移ります。上り勾配で山間部に差し掛かると、まずはトンネルが2つ。東青山トンネルを通過して長いトンネル。そのトンネルを出ると、こんどはなかなか終わらないトンネルです。ここが大手私鉄最長の「新青山トンネル」。長さは5652メートルです。
新青山トンネルの先も山岳地帯。なぜこんなところに線路を敷いちゃったの? と思うほど自然のまま。車内にいても、真っ赤な列車が山の緑に包まれるダイナミックな様子を想像できちゃいます。緑の中を走るために、真っ赤なボディーが選ばれたのかも。

伊賀盆地に入り名張の市街地を駆け抜けて、再び山岳地帯を通り抜けて次に現れるのは奈良盆地の大和八木。もういちど山を越えると大阪平野です。旅の終わりが近づいてきました。ところで、大阪にお住まいの皆さんが近鉄特急で帰るとき、どんな景色がきっかけで「帰ってきたなぁ」と思うのかな。近鉄八尾を過ぎて、あべのハルカスが見えたあたりでしょうか。私は布施駅で奈良線が合流する手前くらいで大阪に来たなぁ、と思います。
ビルに囲まれ、鶴橋駅に到着。地下に潜ると大阪難波駅はもうすぐです。それを知らせるためでしょうか。いままで暖色の間接照明だった天井がブルーに染まります。最後まで快適に、締めくくりはすがすがしく。おつかれさまでした。


「東海道新幹線のぞみ」vs.「近鉄特急ひのとり」 魅力は互角、場合によっては……!
近畿日本鉄道は名古屋〜大阪難波間で30分おきに特急を走らせ、「名阪特急」の通称で親しまれています。ひのとりは名阪特急のメンバーの1つで、ハイグレード列車という位置付けです。名阪特急は名古屋〜大阪難波間を2時間10分から2時間20分程度で結びます。ひのとりは停車駅が少ないため、最短で2時間8分と早いです。

名阪特急は運行開始当初から国鉄の気動車準急、電車特急と互角に競ってきました。しかし1964年に東海道新幹線が開業すると、所要時間では完敗しました。2020年現在、名古屋〜新大阪間の「のぞみ」は約50分、こだまでも約60分。名阪特急の半分以下です。
それでも近鉄は東海道新幹線と競い続けます。優位なポイントの1つは料金です。東海道新幹線は運賃と特急料金で計6470円(通常期)。一方、近鉄の名阪特急は4340円。2130円も安価です。ひのとりはこれに加えて特別車両料金がちょっとかかります。レギュラー車両(普通車)がプラス200円で4540円、フレミアム車両がプラス900円で5240円。ゆったり3列のとても上質なプレミアムシートの車両でも料金は東海道新幹線の普通車指定席より安いのです。

もっとも、東京〜大阪間を移動する人が名古屋乗り換えの名阪特急を選ぶとは考えにくいです。しかし、名古屋〜大阪間ならば「高いけれど早い」か「遅いけれど安い」は検討に値します。新幹線が停まる新大阪駅は大阪中心部からやや離れていますが、大阪難波はそのまま大阪中心部。乗り換え可能路線も多いです。目的地によっては所要時間の差は縮まります。また名古屋発の場合、東海道新幹線は始発列車が少ないので指定席を取りにくく、自由席に並んでも座れないかもしれない。対して、名阪特急は全列車名古屋始発です。
やはり名阪特急の優位ポイントは「乗り心地」です。近鉄は新幹線より快適な座席の車両を導入してきました。レギュラー車両であっても4列シート。アーバンライナーには520円の追加でデラックスシートに乗れます。東海道新幹線のグリーン車よりも快適なのにずっと安い料金です。こうした背景や強みに近鉄は名阪特急に勝機を見いだし、さらにグレードアップした「ひのとり」を投入したと思われます。
2020年現在、やはり東京〜大阪間を移動する人が名古屋乗り換えの名阪特急を選ぶとは考えにくい。しかし、ですよ。2027年に「リニア中央新幹線(品川〜名古屋)」が開業したらどうでしょう。名古屋から先は東海道新幹線より安くて快適な近鉄特急にしよう、という流れも生まれるかもしれませんね。
