「国道」と言えば、国が政令で指定した、大都市間を結ぶ片側一車線以上の大きめの道路で、交通量も多く、ロードサイドには商業施設やオフィスが立ち並んでおり……と想像すると思います。しかし日本も広い。中にはそうではない国道もあります。

クルマではとても通れないくらいに道幅が狭かったり、路面が舗装されていなかったり、そもそも通行止めだったり……。そんな国道を道路ファンは「酷道(こくどう)」と愛情と敬意を込めて呼び、愛でる対象にしています。ちなみに同じような県道(都道府県が管理する道路)も「険道(けんどう)」(関連記事)と呼び、同様に愛でる対象にしています。
しかし、景観が良く、とてもきれいに整備されているのにクルマが絶対に通れない国道が青森県にあります。その理由は、階段……だから。はい、国道なのに階段なのです。
なぜ、このような奇妙な国道が生まれたのでしょうか。国道339号を維持管理する青森県道路課と、国道のある青森県外ヶ浜町産業観光課に話を聞きました。


実は「がけの上下をループ橋でつなぐ大規模な計画」もあった
目の前に津軽海峡、海底には青函トンネル。青森津軽半島、そして本州日本海側最北端の風光明媚な地「竜飛崎(たっぴざき/たっぴさき 龍飛崎/竜飛岬ともいわれる)」に「階段国道」はあります。国道339号の一部、竜飛崎灯台入口とその下にある竜飛漁港間の388.2メートルが階段国道として整備されています。

国道339号は、青森県弘前市から五所川原市を経由し、東津軽郡三厩(みんまや)村(現在は合併し、外ヶ浜町)に至る津軽半島を縦貫する幹線道路です。階段となっている部分も含めて、1974年11月12日に国道に指定されました。階段部分はもともとは「県道中里・今別・蟹田線」という路線の一部でした。
指定された当時の階段国道区間は狭く急な坂道で、途中に竜飛(たっぴ)中学校があり、坂の上には小学校がありました。傾斜のきつい部分は石や木を組んで階段にしており、中学校まではもともと階段があったそうです。
国道に指定されたものの、傾斜がきつく、道も狭い。実際にクルマが通る道にすることは困難だとして、整備は手つかずになりました。トンネルやループ橋でがけの上と下をつないで車道にする話も出ましたが、いつの間にか自然消滅してしまったそうです。



その後、青函トンネル(1988年開通)の工事に伴って、近くに車両が通行できる道路ができます。車道として整備する必要性がもう低くなりました。こうしてこの区間は、現在も階段のまま、国道なのにクルマが通れない道になりました。
ただ、児童・生徒が登下校で日々利用することから、安全のために1985年ごろから1996年までの間に青森県によって手すりなどがきちんと整備されました。
このように一定の利用者がいることから、現時点において国道の指定を外す予定はないとのことでした。
※価格は記事掲載時点のものとなっています
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