グリーンの髪に澄んだ歌声、次元を超えてきたようなビジュアル、そしてミュージシャンの両親を持つトリリンガル……設定を盛りすぎた漫画のキャラクターのようですが、18歳の歌姫Au/Ra(オーラ)は実在しています。
いささかトリッキーなのは、Au/Ra自身が積極的にコスプレを楽しんだり2次元化したビジュアルを多用したり、ファンタジー要素満載のミュージックビデオを作成して次元の壁をあいまいにしている点。「日本のアニメが大好き」と公言し、国内ミュージシャンやクリエイターとのコラボの機会を得るなど日本への距離を徐々に縮めています。

Au/Raは、世界的に注目されるゲームクリエイター・小島秀夫氏が手掛けた最新作「DEATH STRANDING」のインスパイア―ドアルバム「デス・ストランディング:タイムフォール(オリジナル・ミュージック・フロム・ザ・ワールド・オブ・デス・ストランディング)」にも参加。国内外のゲームファンにもその存在が知られています。
5月には「End of the World」(SEKAI NO OWARIがグローバル展開を目的として取り組む新プロジェクト)のNakajinさんとリモートライブを開催。「千と千尋の神隠し」から「あの夏へ(英題:One Summer's Day)」のカバーは美しいアレンジとボーカルが大きな反響を呼び、「歌声素敵でした」とセカオワファンに印象を残し、いま着々と日本でのファンベースを構築しています。
「千と千尋の神隠し」から「あの夏へ」
スペイン・イビサ島生まれ西インド諸島育ち、ロンドンやニューヨーク、ロサンゼルスで活動するAu/Raはなぜ日本やアニメを愛し、クリエイターたちとコラボの機会を得るまでにいたったのか。2020年、念願の来日を果たす予定がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で断念せざるを得ない中「死ぬまでに絶対日本へ行きたい」と熱弁するAu/RaにZoomインタビュー。彼女自身や、音楽性やビジュアルに大きな影響を与えたアニメ作品を聞きました。

ミュージシャン家庭で育った18歳
ーー リモートインタビューを受けていただきありがとうございます。コロナ禍でのそちらの生活はどんな感じですか?
Au/Ra 正直、すごく変な気分。新しいライフスタイルに順応していく最中な感じがして興味深いかな。スタジオにこもってクリエイティブであろうと努めているけれどとかくチャレンジング! とにかくこの状況下で新しい音楽を作ろうと頑張っているよ。
私たちミュージシャンも、しばらくはオンラインで作業したりコミュニケーションを取ったりすることが続きそう。いまもスタジオにいるし。すぐにこういう生活が普通になるんじゃないかな。クールだと思うけど、まだ誰にとっても不慣れでおかしな段階だよね。
ーー そこはスタジオでしたか。学校はどうしているんですか?
Au/Ra 13歳からずっとホームスクール。いまはオンラインで学習していて、創作活動と両立させているの。
ーー ご両親もミュージシャンなんですよね。
Au/Ra そう。親がミュージシャンの家庭って面白いよね。自分の経験からいろいろアドバイスをくれるし助かるの。ちょっと独特だけど。
ーー ご両親の尊敬できる部分は?
Au/Ra ミュージシャンって浮き沈みが激しいものでしょ。配信が普及し始めたころはCDの売り上げが落ちて生活が苦しいこともあったようだけど、それでも音楽への愛があったからやめなかった、その勇気を尊敬してる。結果的に親の仕事を継いだ形にはなったけれど、強制されたわけでもないし、自分がやりたいことをやっているだけ。でもやっぱり親からの影響がなかったとは言えない。
ーー なるほど、ミュージシャンを目指すことにした具体的なきっかけは何だったんですか?
Au/Ra 9歳か10歳のときにYouTubeでカバー動画を見て、私も試してみたこと。誰の手助けも受けずに自分でアップロードまでしたんだけど、動画を見たパパが「こりゃひどい」って手を貸してくれて、だんだん自分でオリジナルを作るようになったの。環境を考えると自然なことではあったけど、これが自分にとっての転換期なのかなって。
Au/Ra7歳、「もののけ姫」でアニメと出会う
ーー SNSでは日本のアニメについてよく投稿されています。来日したことはありますか?
Au/Ra 実はないの! 今年予定していたんだけど、こんなことになっちゃって。念願かなっての日本行きだったはずだからすっごく悲しい! 普通の生活が送れるようになったら絶対絶対日本へ行きたい。もう信じられないよね。
オタクコレクション
ーー 意外でした! アニメを好きになったきっかけは?
Au/Ra 偶然の産物。7歳のときパパが私を「もののけ姫」を見に連れて行ってくれたんだけど、うちの家族は、アニメというと全部子ども向けだと思い込んでいて。でも「もののけ姫」は少し大人向けでしょ? 初見はかなり衝撃的でちょっとトラウマになっちゃったんだけど、数年後に見直したら心を奪われた。怖いけど不思議で、魅力的。そこからジブリ全般にはまっちゃったの。
「もののけ姫」には「現代社会が直面している問題が詰まっている」
ーー 「もののけ姫」の主人公サンについて、国際女性の日に投稿されていたこともありましたね。
Au/Ra 初めてサンをみたときから心引かれていたね。ディズニー映画もずっと見ていたし好きだけど、サンはいわゆるプリンセス像からは懸け離れた存在。白馬に乗った王子様の助けを待ち誰かに守られるんじゃなくて、自分で武器を取って化け物と闘う。そこが断然クールじゃんと思った。プリンセスウォリアーはただのお姫様じゃない。情熱的で強く、恐れを知らない。だから「自分も将来はもののけ姫みたいになる!」って憧れたの。当時はサンのまねをして4つ足で歩いていたくらい!
ーー 想像以上にガチ! プリンセスウォリアーという表現がいいですね。

Au/Raが選ぶ生涯ベストアニメ3本
ーー これまで見てきたアニメのうち、ベスト3を選ぶなら?
Au/Ra 難しいな……。まずは「NARUTO」。鉄板だけど外せない。子どものころから見ているしめちゃくちゃ面白いから。「NARUTO」を通じて知った日本のカルチャーのいろいろな面に魅せられてきた。特にニンジャについては「アサシン」という曲のMVで影響が見て取れると思う。私の内なる天使と悪魔が戦うような内容だよ。
それから「Death Note」もクラシックではあるけど名作。ダークな雰囲気がいいよね。
ーー ちなみに月(ライト)派? L派?
Au/Ra オーマイゴッド。……L派! 正直言うと最初は月寄りだったけど、話が進んでいくうち、彼どんどんクレイジーになっていくからちょっと引いちゃって。だんだんLに感情移入するようになったの。


最後は「ノラガミ」。この作品は過小評価されていると思う。キャラクターとストーリーがいい。特に夜ト、私は100%夜ト派。意外性のあるキャラクターで深い。シーズン3がいつ出るのか考えるとへこんじゃう。原作漫画を読みながらずっと待ってるんだよ!
ーー 「NARUTO」や「ノラガミ」など日本文化がどっぷり描かれた作品がお好きなんですね。最近だと「鬼滅の刃」という作品がありまして……。
Au/Ra KIMETSU! アニメから入ってマンガも読んだけどめっちゃいいよね。最近は韓国アニメの「神之塔」も見始めたばかり。あと「暁のヨナ」も過小評価されていると思う。めちゃくちゃいいのに!
ーー 「アサシン」のMV以外に、それらの作品があなたの音楽に与えた影響は?
Au/Ra ビジュアルやアートワークの在り方は特に強く影響を受けている。とりわけ、ダークな部分はアニメから受けた影響が大きい。普段の自分とのバランスをとっているのかな。私の曲のヘビーな部分もアニメの影響を受けていると思う。ただ曲が私自身をそのまま表しているわけではないし、闇も私のパーソナリティーの一部だとは思うけど。
ーー グリーンの髪を生かしてセーラーネプチューンのコスプレをしていたことも。
Au/Ra ネプチューンも好きなんだけど、実はプルートの方が好き(笑)。グリーンに染めていることに特に深い意味はないの、友達と遊んでいて「グリーンにしたら面白くない?」と試した、ただそれだけ。親に対するドッキリのつもりが気に入っちゃったのでそのままにしていたらもう4年。自毛がブロンドだからブリーチする必要がないのは楽かな。長いから手入れに時間はかかるけど、今はもうブロンドの自分が思い出せないくらい“これが私”と思うほど。
ーー 今後もコスプレに挑戦される予定は? 楽しみにしています。
Au/Ra ありがとう! 機会があったらまたやりたいな。
自毛を生かしたネプチューンコスプレ
「アニメ関係のコラボならいつでも大歓迎!」
ーー 今後の活動は?
Au/Ra 日本のいろいろなアーティストとコラボしたい。プライベートなら日本に行きたい! 私のバケットリスト(死ぬまでにやりたいことリスト)の多くは日本に関するものばかり。物事が普通に戻ったら日本でショーもやりたい。インスピレーションを受けてきた国だから、やりたいことだらけよ。
ーー 特にコラボしたい相手は?
Au/Ra クリエイターもだけどファッションも気になる人ばかり。待って、名前が浮かびすぎる。これは一晩よく考えなくちゃ(笑)。アニメ関係のコラボならいつでも大歓迎!

ーー デスストはプレイしましたか?
Au/Ra もちろんしたよ! 小島秀夫さんは天才。彼の世界観の一部になって、音の風景を作ることができたことが幸せだしとってもラッキーだった。私の歌を聞けてすごくクールだった。
ーー ファンへのメッセージをお願いします。
Au/Ra 応援ありがとう! 距離が近づきつつあるって感じてるの。早く会えるといいな!
プロフィール
イビサ島出身、アンティグア島在住、そしてイギリスを中心に活動。世界を席巻している音楽プロデューサー“アラン・ウォーカー”との共演、またSEKAI NO OWARIがグローバル展開を目的として取り組む新しいプロジェクトEnd of the Worldが、楽曲のリミックスを手掛けるなど、今注目のティーンエイジャー・シンガー。最新シングル最新曲「アイディアズ」配信中!
コメントランキング
「FNS歌謡祭 第1夜」であなたが良かったと思うアーティストは?【人気投票実施中】 | 音楽 ねとらぼリサーチ
今川焼? 大判焼き? あの“円形の厚焼き和菓子”の名前は? 47都道府県別・呼び方の勢力図を公開!(投票結果) | グルメ ねとらぼ
「ベストヒット歌謡祭2025」で良かったアーティストは?【人気投票実施中】(投票結果) | 音楽 ねとらぼリサーチ
2025年「NHK紅白歌合戦」の「白組」出場歌手で楽しみなのは?【人気投票実施中】(投票結果) | 音楽 ねとらぼリサーチ
岩手県の「おいしいお土産」10選! 一番うまいと思うのは?【人気投票実施中】(2/2) | 岩手県 ねとらぼリサーチ:2ページ目