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1950年代にロバート・A・ハインラインが世に送り出し、タイムトラベル小説の名作として知られる『夏への扉』を原作として、俳優の山崎賢人さん主演で映画化した「夏への扉 ―キミのいる未来へ―」が6月25日に公開されました。
※山崎さんの「崎」はたつさき

メガホンを取ったのは、「フォルトゥナの瞳」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」などを手掛けた三木孝浩監督。近年では少女漫画原作の恋愛映画を多く手掛ける三木監督ですが、映画に目覚めたきっかけとして『時をかける少女』を挙げたこともあります。“時間旅行もの”というジャンルを確立させた名作を、山崎さんが映画初主演を飾った「管制塔」(2011年)以来のタッグでどう料理したのかも注目です。
同作で山崎さんが演じたのは、早くに両親を亡くし、その後亡き養父の影響で才能豊かな科学者となった高倉宗一郎。自分を慕う養父の娘・璃子(清原果耶さん)と、愛猫で“相棒”のピートとともに日々を過ごす中、とある裏切りで30年間冷凍睡眠させられる憂き目に遭います。2025年の東京で目覚め、全てを失ったことを知った宗一郎が、人間そっくりのロボット(藤木直人さん)とともに、変えられてしまった運命を取り戻そうとする物語となっています。

山崎さんといえば、数々の映画やドラマで主演を務めるなど順風満帆な役者人生ですが、その道のりの中でくじけそうになった山崎さんの背中を押してくれた“相棒”の存在があったのだそうです。今回はそんな宗一郎の信念にリンクした考え方や、SFラブストーリー作品ならではの魅力を山崎さんに聞きました。
約10年ぶりの三木組で演じたのは“諦めの悪い男”

―― 三木監督とは「管制塔」以来約10年越しのタッグとなりました。当時と比べてどんな変化を感じますか?
:山崎 デビュー映画は、自分が右も左も分からず、むしろ今回初タッグなんじゃないかというくらいの感覚だったんですけど(笑)。ただ、三木監督の優しい人柄は覚えていて、今回あらためて三木組はすごく良い空気だと思いました。デビュー当時はうまくいかない演技もあったので、今回は成長した自分の力を出したいという気持ちで作品に取り組みました。
―― 原作はいわゆる“時間旅行もの”の古典的名作ですが、今作では舞台が1995年と2025年になるなど翻案されています。初めて物語に触れたときの印象を教えてください。
:山崎 原作を最初に読ませてもらって、めちゃめちゃ面白くて。一方で、この小説を映画化するために脚本を書くのは大変だっただろうなと。例えば、藤木さんが演じる人間そっくりのロボットは原作にはいないので「何だこれ面白い!」って。

―― 「夏への扉」という表題にとても魅力を感じたとか。
:山崎 タイトルの意味はとてもすてきだと思いました。
「夏への扉」というのは、猫のピートが暖かいところが好きで、冬に家の扉を開けたら夏へと続いている扉なんじゃないかとずっと信じているのに由来するのですが、自分はこれを「どんなにキツい状況でも諦めない」姿勢だととらえました。冬から真逆の季節への扉を探すことって、いわば一番キツい逆境にあっても自分の望む未来に向かって真っすぐ信じて前を向き続けることだな、と。
自分はどんな逆境やつらいことがあっても、とにかく前向きにいようと考えていて、このタイトルにはとても共感しながら宗一郎を演じられました。
―― 宗一郎は、不幸の連鎖が続く境遇で生きてきた人物。不運に見舞われている人生ですが、それでも立ち向かっていく姿が魅力的ですよね。
:山崎 最初に監督から手紙をいただいたのですが、“どこまでも良い意味で諦めの悪い男”とおっしゃっていて、そういう強さを持って演じようと。芯の強さがありますね。
彼は悲しみに慣れているとはいえ、自分が唯一貫いてきたものを失ったら、気持ちが落ち込みますよね。そんな状況でも、宗一郎のそばで愛猫のピートが「夏への扉」を探し続けることで諦めないことを示してくれているように感じますし、宗一郎が「諦めなければ失敗じゃない」と口にするのも彼自身の強さが表れていると思います。

―― 宗一郎の“絶対諦めない”性格はご自身にも重なりますか?
:山崎 そうですね。悲しみやつらいことを知っている人の方が人にも優しくできるし、強くもなれる。落ちているからこそ上にいけるし。自分もそういう考え方がとても好き。宗一郎はつらい状況に慣れているじゃないですか。めちゃめちゃ強い人だと思っていて。そういうところもすごく好きで、共感します。
親友・岡山天音の言葉に救われた過去
―― 山崎さんは絶望したとき、これまでどのように乗り越えてきましたか?
:山崎 努力と気合い。マインドが大事です。自分は仕事が人生の全てと考えていた時期があって、仕事がうまくいかなくなったとき、自分が無価値に思えるというか、存在意義が分からなくなっていたことがありました。そのとき、友人が「賢人、100%で考えすぎだよ」と声をかけてくれたのが救いでした。「人生の数あるうちの1個が仕事だよ」といわれて「なるほど。それ最高だな」と。
―― ちなみに、その助言をくれたのはどなただったんですか?
:山崎 (岡山)天音です。20歳くらいのころ、2人でご飯を食べに行ったときです。あのときの言葉や心持ちを大事にしようと思うようになり、必ずしも仕事が全てだと捉えないことも大切だと考えるようになってきました。
―― 山崎さんにとって、岡山さんはまさに“相棒”ですね。
:山崎 そうですね。そういう風に支えてくれる人って大事ですよね。自分の中に残っている言葉です。
―― その考え方は山崎さんが長年第一線で活躍し続ける仕事観に通ずるものはありますか?
:山崎 自分を選んでくれている人の期待に応えたい気持ちはありますし、一方で自分一人じゃないからこそ、頑張れるのはすごくあります。支えてくれている人たちもいるし、一緒に作品を作っていく人たちがいるので。
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