ある日突然始まった母の奇妙な行動。それをきっかけに主人公・のぶ子の家の中は、大きく変わってしまいます。今回はそんな「奇妙」で、ちょっと「怖い」作品をご紹介。作者は漫画家の吉田博嗣さん(@yoshida01)。5月に「爆弾級の漫画」として話題になった「やすお」の作者さんでもあります(関連記事)。

記録的な大雨で、あちこちに被害が発生している日の夜。帰宅したのぶ子は嬉々として「広告」を作る母を目にします。

その広告に書かれていたのは「家族募集」の文字。YouTubeにハマってしまった母は、「地球温暖化、異常気象、少子高齢化、増税…… これからは助け合って生きていかないとダメな時代になるのよ!」と、のぶ子のあきれ顔をよそに、コピーした広告をあちこちに貼り、さらにはSNSを使って家族募集をはじめます。「そのうち飽きる」だろうと思っていたのぶ子ですが……。

家に帰ったのぶ子に母が紹介したのは
「あなたのお姉ちゃんの みさきちゃんよ」
面食らうのぶ子。聞けば洪水で家が流されて住むところがなくなってしまい、そこで「家族募集」に応募してきたとのこと。人助けと思い「ま、いっか」と承諾するのぶ子。しかし、みさきはいつまでも出ていく気配がなく、あげく今度は「新しいお兄ちゃん」まで現れます。

そして堰を切るかのように増殖していく「家族」。
隣の田中家との合併。見知らぬ家族の増殖。食卓は巨大になり、トイレは行列。走り回る子供たち。

やがて「家族」は、近隣の住人も巻き込み、互いの家はつながり、一つとなり、どんどんと増殖していきます。よし子のプライベートな空間は消え失せ、家の中は足の踏み場もない状態に。ついには新しいお父さんまで現れる始末。

我慢の限界と、怒りを爆発させてしまうよし子。気がつけば、どこにいても「家族」がいる。どこにいても、誰しもが「家族」。どこまでも広がる「家」。よし子は部屋に引きこもり、得体の知れない悪夢にうなされるようにまで追い詰められてしまいます。

果たして、この「家」は、「家族」はどうなってしまうのか。60ページにわたる長編であるこの作品。「家」と「家族」の存在に考えさせられる人、さまざまな解釈を試みる人など、いろいろな受け取り方をされています。実際に読んでみて、みなさんはどのようなものが浮かぶのでしょうか。
※作品提供:吉田博嗣さん(@yoshida01)
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