家に帰ってきて、部屋でくつろいでいるのに「帰りたい」とつぶやいてしまう。一体どこへ帰りたいというのか、自分にも分からない。日々の生活に疲れていると、誰しも「自分にもよく分からないが、どこかへ帰りたい」と思ってしまうようです。
今回ご紹介する作品は、まさにそのような境遇から「帰り着いた」男性と謎の子どもを巡る、心温まる不思議な物語。作者は漫画家の野分なか実(@Nowaki_psd)さんです。

都会での社会生活に疲れ切り、自殺が頭をよぎるまでに追い詰められてしまった男性。ですがその直前、どこからか聞こえた不思議な声に引き止められ……ふと思いつき、ここではない故郷へ「やっと帰れる」ことになりました。



仕事を辞めて田舎へ帰った男性は、山中に放置されていたボロボロの祖母の家を建て直し、荒れ果てた畑を耕し、そこに作物を植えて……地道な努力の末に、田舎でのひとり暮らしを成立させたのです。
ある夏の日のこと。男性の住む地域を大型の台風が襲い、地響きが鳴り響くほどの「何か」が起きるのですが、特に被害はありませんでした。そして朝になり、畑の手入れへと向かった男性は、あぜ道の草むらで気を失っている小さな子どもを見つけるのです。


昨日の台風で行き倒れたのかと、男性はその子を駐在所まで連れて行くのですが、子どもが行方不明になったという届け出はありませんでした。その子は名前も分からず、他人の言葉は理解できるものの喋れず、文字は書けないようで、身元がさっぱり分かりません。
どうしたものかと途方に暮れる男性でしたが、その子はどういう訳か男性によくなついています。結果としては駐在さんの発案から、しばらく男性が面倒を見て届け出が出るのを待つ、ということになったのでした。
しゃべることができず、名前の分からなかったその子は、雨を自在に降らせられるという特技を見た男性から「コサメ」という名前をもらいました。ふたりは仲睦まじく同じ時間を過ごしていたのですが、しばらく経ったある日のこと、男性のもとに初老の男性がやってきます。

初老の男性は「白髪の青年を探している」と言うのですが、コサメの姿を見るなり「やっぱりここにいたのか、願いを叶えてやったんだから、ちゃんと働いて返せ」と意味深な反応を見せます。さらに、困惑する男性に対し「そいつは人間じゃない、家に入れるのはやめておけ」と忠告し、帰っていくのでした。
そして翌日のこと。男性が目を覚ますと、隣で寝ていたはずのコサメがいなくなっていました。慌てて駐在所へ駆け込み、駐在さんに起きた事態を伝えるのですが……駐在さんは不思議そうな表情を浮かべ「誰の話をしているの?」と返したのです……。

不思議な超能力を持つ、人ならざる子ども「コサメ」の正体とは。初老の男性とコサメの関係、男性の夢に出てきた「白髪の青年」、そしてコサメは一体何を「願った」というのか。気になる続きとふたりの結末は、漫画を読み進めてお確かめください。
作品提供:野分なか実(@Nowaki_psd)さん
記事:たけしな竜美(@t23_tksn)
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