タイトルや触れ込みの時点で、とんでもないアニメ映画が日本にやってきた。それが1月14日から劇場公開されているフランス・イタリア合作の「シチリアを征服したクマ王国の物語」だ。

(C)2019 PRIMA LINEA PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 3 CINEMA – INDIGO FILM
原作はイタリアの作家ディーノ・ブッツァーティが1945年に発表した児童文学で、ヨーロッパで半世紀以上にわたって読み継がれている人気作。今回のアニメ映画版は2019年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」や同年アヌシー国際映画祭で公式上映され、絶賛を浴び多数の賞を受賞。映画評論サイトRotten Tomatoesでは、脅威の批評家支持率100%を達成した。
そんな高評価も納得の面白さ。アニメとしての豊かさを備えつつ、子どもから大人まで学びが得られる奥深さもあり、それでいて「クマさん版『ベルセルク』かな?」と思うほどの殺伐さも内包する、日本のアニメ映画には絶対にないアバンギャルドな魅力を持った作品に仕上がっていた。さらなる見所や特徴を紹介しよう。
単純明快な冒険活劇×容赦のない敵たち
本作のあらすじは、「クマの王がハンターに捕らえられた我が子を救うため、クマの仲間たちを引き連れて山を降り、人間が住む平地を目指す」というもの。この時点で単純明快な冒険活劇としての面白さがあるわけだが、立ちはだかる敵がなかなかに容赦がない。

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何しろ「巨大な化け猫」「人喰いトロル」「古城の幽霊」などが登場し、その戦いの過程でクマの一団の中からは死者も出るのである。さらに大ボスの「残忍な大公」も容赦無くクマたちに攻撃を浴びせ、大公にいいように使役される「魔法使い」もクマたちを混乱に導いていく。
もちろん子どもも見る映画なので直接的な残酷描写はほぼ皆無。だが、一見して絵柄がかわいらしく、色彩も豊かで楽しい冒険ファンタジーに見えたとしても、そこには「命があっけなく失われる」様や、「人間の悪意が異なる文化の者たちを苦しめる」といったリアルかつシビアな視点があるのだ。

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しかも、クマたちはただ数の暴力で圧倒するのではなく、臨機応変に智略も尽くして危機に立ち向かう。そうしたクマたちの「賢さ」が、後述する「正しい統治をしていたはずが、気付けば謀略渦巻く政治劇へ」とつながる皮肉もまた見所になっていた。
まさかの謀略が渦巻く政治劇
前述した「クマの王が仲間を引き連れて我が子を救う冒険に旅立つ」というプロットは、実は物語の前半部分にすぎない。「大ボスの大公を倒して、息子も救えてめでたしめでたし」では終わらないのだ。

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後半の詳細は実際に見てほしいので伏せるが、そこで「独裁政治が築かれていく過程」や「異なる文化を持つ人種との共存・共生の難しさ」がリアルに描かれていたことはお知らせしておこう。
単純明快な冒険活劇だと思っていた物語が、国家の謀略や一色触発のパワーゲームが展開する政治劇へと展開していく。その変遷が子どもにも分かりやすく描かれており、大人は現実の政治における不正を連想して恐れ慄くことができるだろう。
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