「プリキュアは堕落している」と語る土田豊SD、その真意はどこにあったのでしょうか。
INDEX
プリキュアが戦う敵は「決断できない弱い心」
第44話「魔女の一番大事なこと」では、あとまわしの魔女の過去が描かれました。破壊をするためだけに生まれたというアイデンティティーの「破壊の魔女」が自身の傷を癒やしてくれた人間(キュアオアシス)と「友達になりたい」という感情を抱きます。
しかし自己出生との矛盾もあり、その思いと向き合えずにプリキュアとの決着を「あとまわし」にし続けてしまいます。そのうちに人間の寿命が先にきてしまい永遠にその思いはかなえられなくなり、自身も「何を後回しにしていたかすら忘れてしまう」という皮肉めいた結果となりました。
ここで描かれたのは「決断できない弱い心」でした。
プリキュアが戦う敵は「今やらなければならない大事なことをあとまわしにしてしまう、弱い心」であるとしたのです。

そこには「絶対悪」は存在しません。「弱い心」があるだけでした(裏を返せば「絶対悪」の存在しない世界でも、争いは起きてしまうという皮肉でもあります)。
後回しにし続けたばかりに、永遠に願いがかなえられなくなってしまった魔女。それが「だからこそ、今、一番大事なことをやろう!」という「トロピカル〜ジュ!プリキュア」のテーマへと帰結し、プリキュアと魔女を巡る物語は収束していったのです。

プリキュアが戦う敵は、この先子どもたちが現実世界で対峙(たいじ)する「大人」の隠喩でもあります。
「大事なことをあとまわしにし続けて、決断できないばかりに大きな問題を起こす」大人にならないよう、われわれも襟を正していかなければなりませんね。
新しい時代の人魚姫、ローラ
第44話のラストで、願いをかなえ「泡となって消えていく」魔女の姿は、アンデルセン童話『人魚姫』をほうふつとさせます。
この「童話の人魚姫」と、代償を得ることなく自分の力で人間になった「新しい時代の人魚姫、ローラ」との対比は、これからの世界を生きる子どもたちへの希望となっていくのではないでしょうか。
「人間と関わってしまった人魚は、その記憶を消されてしまう」という残酷なおきてのあるグランオーシャン。

ローラは友達との思い出を全て忘れてまで、夢であるグランオーシャンの女王になるのか、それとも人間界に残るかの決断を迫られます。
あとまわしの魔女は「決断」を後回しにし続けてしまい、破滅の道へ進みました。自分の力で道を切り開いてきたローラは、最後にどんな決断をするのでしょうか。ラストまで目が離せません。

今、一番大事なことをやる
「トロピカル〜ジュ!プリキュア」では1年を通して「今、一番大事なことをやろう!」が描かれました。
これは何も「今だけ楽しければ良い」という刹那的な言葉ではなく、「今一番大事なことをするのは、未来をよりよく生きるために必要なこと」だという風に描かれたのです。

今を後悔の無いように、精いっぱい生きることこそが、未来へとつながっていくのだと子どもたちへ伝えたのです。
プリキュアを見ている子どもたちにとって、入園・入学などで環境が変わるときは、期待と不安でいっぱいだと思います。「もし友達になりたい子がいたら、あとまわしにせず勇気を出して『お友達になろう』と言おうよ。プリキュアはそれを応援しているよ」。「トロピカル〜ジュ!プリキュア」は、「夏海まなつとローラ」「あとまわしの魔女と伝説のプリキュア」、重なりあう2つの物語を通じ、子どもたちへそんなエールを送っていたのではないかと僕は思っています。

2022年2月にスタートする次作「デリシャスパーティ・プリキュア」(・はハートマーク)は、「ごはんは笑顔」をキーワードに、「和、洋、中」をイメージしたプリキュアデザイン。妖精たちもおにぎり、パン、麺のモチーフだったりと、「トロピカル〜ジュ!プリキュア」とはまた一味違った作品になりそうですね。
次はどんなプリキュアがどんな活躍をするのでしょうか。楽しみです!
「トロピカル〜ジュ!プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション