KADOKAWA、集英社、小学館の3社は7月28日、漫画海賊版サイト「漫画村」の運営者に対し、総額19億2960万2532円の賠償を求める訴訟を提起しました(コンピュータソフトウェア著作権協会による発表)。

漫画村を巡っては、2019年7月から9月にかけ、運営者を含む4人が逮捕され、その後の裁判で既に有罪判決が確定しています(運営者には懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6260万円の判決)。しかし、違法な“タダ読み”によってて出版社側に発生した損害についてはいまだ被害回復がなされておらず、3社はこれまで刑事裁判の進捗も踏まえつつ、同時に損害賠償手続きに向けた具体的検討を進めてきたといいます。

当時の「漫画村」トップページ(画像加工は編集部によるもの)
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)によれば、損害額は漫画村のサイトアクセス総数などから推計したもの。計算では、漫画村にアクセスした利用者が1アクセスにつき漫画コミックス1巻を閲覧していたと仮定し、当該期間中に閲覧されたコミックスの総数を「5億3781万巻」と推定。この数字を元に、さらに公開されていたコミックス各作品の販売価格も考慮しつつ損害額を算出したとのことです。
今回の訴訟にあたり、3社は「作品をお預かりしている出版社にとって、漫画村運営者の民事的責任を明らかにすることは、現実的な回収可能性を措いても避けることのできない責務と考えます」とコメント。クリエイターが安心して新たな創作に挑める環境を守るため、今回の提訴に至ったとしています。
3社による共同コメント
漫画村は2018年4月に閉鎖されるまで、アクセス数で国内最大の海賊版サイトであり、その犯罪収益モデルは、現在確認されている多くの同種サイトに大きな影響を与えたと考えられます。いわば海賊版サイトの象徴的存在であり、刑事罰に加え民事的にもその責任が追及されて然るべきです。
事実、漫画村によって漫画家や原作者らが被った被害は甚大であり、作品をお預かりしている出版社にとって、漫画村運営者の民事的責任を明らかにすることは、現実的な回収可能性を措いても避けることのできない責務と考えます。大きな情熱と、骨身を削る努力によって産み出された作品に与えられるべき対価を、いかにも安易な方法で奪い取る行為は決して許されるものではありません。
原告3社は、クリエイターが安心して新たな創作に挑める環境を守るため、海賊版という犯罪撲滅への重要な一石として、この度の提訴に至ったものです。
ACCSコメント
ACCSはコンピュータソフトウェアのみならず、デジタル化された著作物の著作権侵害に対する会員の法的手続支援や広報啓発活動を幅広く行っています。漫画や雑誌などの出版コンテンツに関する著作権侵害対策も以前より行ってきましたが、特にインターネット上での無許諾アップロード対策について積極的に取り組んでいます。
こうした活動を通して、2017年7月ならびに9月には発売前の漫画作品に掲載されたイラストや台詞、あらすじなどを、いわゆるネタバレサイトで著作権者の許諾なく公開していた5名が逮捕されています。また、同年10月には、当時日本最大級とされた出版海賊サイト「はるか夢の址」を通じた無許諾アップロード事件でアップロード者およびサイト運営者ら9名が著作権法違反の疑いで逮捕されています。
「漫画村」を通じた著作権侵害事件に関しては、外部メディアでの寄稿や職員による出張著作権講習会など、さまざまな機会において事件を取り上げ、社会に対して警鐘を鳴らし続けました。「漫画村」の事件が広く社会に取り上げられた結果、インターネットへの漫画の無許諾アップロードの被害は一旦減少したとの報道も見られましたが、現在でも依然として国外サービスを悪用した大規模海賊版サイトによるコンテンツ被害が継続しているのも事実です。
ACCSはこのような現状を踏まえ、今後も会員への支援を行っていくとともに、関係団体とも緊密に連携し、著作権が尊重される社会の実現に向けてさまざま侵害対策・啓発活動を進めてまいります。
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