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1月10日に公開された米allure誌によるグウェン・ステファニーのインタビューで、彼女が「私は日本人」と発言したことに対して批判が殺到、物議を醸しました。この問題に対する当の日本とアメリカの温度差について報じるメディアや、またグウェン側を擁護するような意見も飛び出し「文化の盗用」に対する論争が深まっています。

常々日本文化に対する愛を公にしてきたグウェンは、過去に日本人と日系アメリカ人からなるバックダンサー「原宿ガールズ」を結成し、2008年にはフレグランスライン「原宿ラバーズ」も発表。当該インタビューでグウェンはヤマハに勤めていた父親から日本文化について聞きファンになったことを語っており、そこから問題となった「何てこと、知らなかったけど、私は日本人だった」発言が飛び出しました。
当該発言後、インタビュアーであるフィリピン系アメリカ人のジェサ・マリー・カラオールとの間には沈黙が漂い、「私は、日本人なの」とグウェンがもう一度繰り返したと伝えられています。
グウェンは、これまで日本の文化だけではなく、さまざまな文化を自身の音楽やファッションに取り入れてきました。1990年代にはインドで既婚のヒンドゥー教徒女性が額に付ける「ビンディ」をつけている姿がしばしば見られ、2004年リリースの「Luxurious」MVではヒスパニック系の小道具を採用。
2012年リリースの「Looking Hot」でネイティブ・アメリカンに扮し、2022年には髪をドレッド・ロックスにするなど、「文化の盗用」という観点からこれまで多くの批判にさらされてきました。
件のインタビューでグウェンは「もし美しいもののファンであり、それを共有することが批判されるとしたら、それは正しいことではないと思う」とほかの文化を取り入れることへのまっすぐな気持ちを語っています。

ここ数年、日本文化をフューチャーした過去のMVなどが一部批判を呼んでいたこともあり、今回のインタビューは2023年において非常にスキャンダラスな発言として世界中のメディアが取り上げました。
しかし、中東のメディアAl Jazeeraで公開された「アメリカはグウェン・ステファニーに“盗用”だと怒るが日本人は肩をすくめている」と題された記事では、CNNやThe Guardianといった欧米の大手メディアはこの問題を大きく取り上げたが「日本人の見解については言及しなかった」と前置きしたうえで、一般の日本人に求めたコメントを掲載。「敬意があれば好きなものからインスピレーションを得て何かを作るのは問題ない」「彼女は日本文化を愛してるだけで、日本人を軽視したり攻撃したわけじゃない」など、アメリカでの批判と大きくギャップがあることにフォーカスしています。
また、ハリウッドで制作された2017年の映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」で主役の草薙素子役に白人女性であるスカーレット・ヨハンソンが起用されたことが、アメリカでは「ホワイトウォッシング」と批判される一方で日本では問題にならなかったことや、2020年に発売されたPlayStation4とPlayStation5用のゲーム「Ghost of Tsushima」は欧米では人種に対するステレオタイプが描かれていると批判された反面、日本の批評家からは高評価だったことなどを取り上げており、今回の日本とアメリカの反応の違いを「西洋人の先入観が大きい」とする研究者の声も紹介しています。
さらに障がい者のライフスタイル活動家/作家である女性は、「アジア人コミュニティがグウェン・ステファニーの長年の人種差別、文化の盗用、オリエンタリズムを批判することに賛同します。そのエネルギーを持ってK-POPや黒人でもないのに黒人文化を利用し儲けているアジア人ミュージシャンも批判してください」とグウェンの発言にも反対の立場だが、黒人音楽を取り込むアジア人ミュージシャンも文化の盗用だと指摘するツイートをし、論争に。
アジア人による黒人文化の盗用に言及も
「音楽は芸術の1つの形であり、誰もが好きな音楽を演奏する権利があるのでは?」「いや、自分の芸術で儲ける一方で、その文化の人々に差別的だということが問題なのだ」とツイートの問題点を指摘する人、「アジア人コミュニティは存在しない。彼らはみんな同じではない。これは日本人のことなんだよ」「K-POPは韓国人だよ。日本人じゃない」と“アジア人コミュニティ”とアジア人ひとまとめにするこのツイートこそが差別的だと指摘する声も寄せられました。
またグウェンに関するツイートではほかにも、「もしあなたの文化が誰にも取り込まれないとしたら、その文化はつまらないってこと」とその文化が取り込まれるのはそれだけ魅力があるのだと楽観的にとらえる声や、「男性が好きに女性になれるんだから、グウェン・ステファニーだって日本人になれるんじゃない? これが進歩的な世界ってことだよ」とアイデンティティを自分で決められるのならグウェンが日本人でも良いはずというシニカルな声、また「グウェン・ステファニーの広報は何してたの?」「もうしゃべるなって感じ」と、グウェンの発言は2023年において当然批判されるべきものと言葉少なに否定する意見などがあふれています。
今回のことは多くの人が文化の盗用と他の文化を愛することやインスパイアされることの境界線があやふやになっていることが多く、“文化の盗用”とはどういうものか、共通認識を広めることの重要性が浮き彫りになった出来事ともいえます。
長らくアジア人差別は「ほかの有色人種に対しては決してしないような差別的言動・行動も“親しみの表れ”とされ差別だと認識されない」という状況下で行われていました。しかしコロナ禍において2020年ごろからあからさまに表面化してきたアジア系に対する差別に直面し、特に多人種国家においてはアジア系住民が敏感にアクションを起こすことの大切さが急速に広がっていくことに。
ジェサ・マリー・カラオールは記事内で、グウェンが何度もインタビュー中に「私は日本人」と口にしたと明かし、自身も日本人ではないが、アメリカに住むアジア人女性として何度も人種差別やそれに伴う不安、危険に遭遇してきたと個人的な経験に言及。「苦しみや恐怖の物語を避けながら、この活気ある創造的なコミュニティの一員だと言える人をうらやましく思う」と率直な意見を述べています。
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