プリキュアが20周年を迎えられたのも、ひとえに子どもたちが玩具を買ってくれたからなのです。
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「スカーレットバイオリン」が復調のきっかけに
そんな苦境の中、あるプリキュア玩具が発売されます。その名は「スカーレットバイオリン」。
「Go!プリンセスプリキュア」の追加プリキュア「キュアスカーレット」専用のバイオリン型の武器アイテムです。

この玩具が、大ヒットアイテムとなるのです。
アニメ内での描写と玩具の連動がうまく作用し、キュアスカーレットのカッコよさとともに子ども人気へとつながりました。
玩具業界誌では「久しく低迷していたプリキュアが、新キャラクター商品の健闘により復調基調に転じる」「スカーレットが登場して右肩上がりに回復」「年末商戦で前年比124%」などと久しぶりにプラスの評価がされるようになります。
夏休み商戦スペシャル
女児キャラクターは大きなシェアを持ちながら久しく低迷していたプリキュアが 新キャラクター商品の健闘により復調基調に転じたことで堅調な伸びとなった他、
『月刊トイジャーナル2015年9月号』P20
プリキュアに関しては夏以降、新キャラのスカーレットが登場して右肩上がりに伸び今回の年末商戦では前年比124%となりました。
『月刊トイジャーナル2016年2月号』P48〜49
そしてこの「スカーレットバイオリン」を皮切りにプリキュアは勢いを回復、2度目の大復活を果たすことになっていくのです(もちろん市場の評価が数字として現れるのに半年は掛かることを思えば、この玩具一つの功績だけではないとは思われますが、きっかけとなったことも間違いはありません)。
未就学児キャラクターナンバーワンへ返り咲いた
以降、2016年の「魔法つかいプリキュア!」では「おしゃべり変身!モフルン」がリードアイテムとなり、プリキュア市場の上昇トレンドを促進。玩具業界誌では「ここ数年苦戦が続いていたが、復活の兆しが見えている」と言及されます。
女児キャラクター市場で圧倒的な強さを誇る「プリキュア」シリーズは、ここ数年苦戦を強いられてきたが、2月にスタートした「魔法つかいプリキュア!」がTVアニメスタート直後に発売したメイン商品を中心に玩具の販売状況も好調で2、3月の売り上げは前年比で123%で推移、復活の兆しが見えている。
『月刊トイジャーナル2016年5月号』P45

そして、2017年の「キラキラ☆プリキュアアラモード」で、ついにプリキュアは「未就学児キャラクターナンバーワンに返り咲いた」とまで言及されるにいたります。
一時期「妖怪ウォッチ」の影響もあり落ち込んでいた戦隊およびプリキュアであるが、ここ数年の上昇トレンドで確実に未就学児向けキャラクターナンバーワンに返り咲いた感もある。
『月刊トイジャーナル2017年3月号』P61

「肉弾戦の封印」は武器アイテムの苦戦に
「明確なモチーフ」を提示し、分かりやすさを追求することにより売り上げを回復させたプリキュア。しかし、今度はそれが足かせとなる出来事が起きてしまいます。
2017年の「キラキラ☆プリキュアアラモード」では、従来にない新しい試みとして「肉弾戦の封印」が行われました。パンチやキックで戦う描写を抑えたのです。
しかしこれは「プリキュアの表現」を広げる、といった点では成功を収めましたが、「玩具売り上げ」の面では「武器アイテムが苦戦する」という事態を招いてしまいます。
「Go!プリンセスプリキュア」「魔法つかいプリキュア!」「キラキラ☆プリキュアアラモードのこれまで直近3年間のプリキュアは、世界観を分かりやすく伝えるためにプリンセス、魔法、動物&スイーツといったそれぞれ明確なモチーフを打ち出すことで、売り上げ人気ともに伸ばしてきた。
そしてその集大成となったのが前作の「キラキラ☆プリキュアアラモード」だった。
ただ分かりやすいテーマを打ち出した事で課題も残った。本来のなりきり遊びやヒロイズムといった要素が十分に伝えきれていなかったのである。
『月刊トイジャーナル2018年2月号』P9
前作「キラキラ☆プリキュアアラモード」では戦闘シーンを控えめにした結果、武器アイテムが苦戦したという過去がある。
『月刊トイジャーナル2018年5月号』P60

やはり「プリキュアがカッコよく肉弾戦で戦う姿」は、女の子のなりきり遊びを促進し売り上げにつながっていくようです。
この結果を受け、女の子にとってのヒーローは「お母さん」であるという観点から「戦う女の子」「圧倒的ヒロイズム」を意識して作られたのが2018年の「HUGっと!プリキュア」です。
バンダイ・ガールズトイ事業部マーケティングチーム 西島翔太氏
こうした上昇基調の中で今回あえてチャレンジするのが「原点回帰」。プリキュア本来のコンセプトである「戦う女の子」、「圧倒的ヒロイズム」を描く。「プリキュア本来のカッコイイ戦闘シーンや変身シーンなど、ターゲットである3〜6歳の女児の憧れを喚起して、なりきり欲求を最大限引き出していく。
『月刊トイジャーナル2018年2月号』P9

「HUGっと!プリキュア」は描かれるプリキュアたちのヒロイズムに加え、制作側のジェンダー感も反映した作風が世間で大きな話題となり、15周年記念作品という後押しもあってバンダイナムコのトイホビー売り上げも6年ぶりに100億円の大台を突破するなど、近年では最高の売り上げを達成することとなったのです。
「ヒーローの出番です!」
しかし2020年以降は、新型コロナや不況、物価高などの影響もありプリキュア関連商品の売り上げは再び下降傾向となっていきます。2023年3Q時では残念ながら歴代でも最も低い数字となっています。
今、バンダイナムコのプリキュア関連商品の売り上げは、数字だけを見ればかつて「次、失敗したら終わる」といわれていた時期よりも低くなっています。
しかし、プリキュアの実績と信頼は玩具会社より「続けていくことが大事」とまで言及されるようにもなってきているのです。
バンダイ 取締役社長上野和典氏
女児キャラクターに関しても「プリキュアシリーズをいつまでやっていくのか」という議論になることもあるのですが、続ける事が重要なのです。
止めることを視野に入れながらでは企画の方向性が分散しますし、続ける事を前提にして内容をどうするかを考えれば、企画も商品もかなり厳選されていきます。
『月刊トイジャーナル2009年1月号』

そんな中、20周年記念作品「ひろがるスカイ!プリキュア」が始まりました。
鷲尾さんがプロデューサーに復帰し、青色の主人公、男の子プリキュア、成人女子プリキュアなど新機軸を取り入れながらも、原点回帰ともいえる「ヒーロー」が描かれます。
幾度も苦境を乗り越えてきたプリキュア。こんなときだからこそ「ヒーローの出番」なのです。
(C)ABC-A・東映アニメーション