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春の季語に駒鳥笛(こまぶえ)という言葉があるそうです。こまどりの鳴き声をまねた笛とのことですが、軽やかな笛の音と春のあたたかさは確かにつながるような気がします。さて、異国ではどんな音がその土地に流れているのでしょうか。今回はブルガリアの楽器を紹介する同人誌です。
今回紹介する同人誌
『バルカン物産収集記 民族楽器編』A4 24ページ 表紙カラー・本文モノクロ
著者:xpucmo(フリスト)

ナナメに吹く笛も? ブルガリアの楽器3種を紹介
こちらのご本では、ブルガリアの楽器であるガイダ、カヴァル、ドゥヴォヤンカの3種類が紹介されています。それぞれの構造、音階、調律、演奏方法などを文章と写真で解説し、要所要所に図やイラストも添えられています。名前を聞いても全く想像できなかった楽器ですが、読んでいくうちに「ガイダはバグパイプに似ているんだ」「カヴァルって斜めに構えて吹くの!?」「ハナミズキやスモモの木で作る笛もあるんだ」と少しずつ、見知らぬ異国の楽器の姿が見えてきました。

実物を手にし、資料をひもといて書く
作者さんは音楽の専門家ではないものの、日本語でブルガリアの民族楽器を紹介している書籍が見当たらないことから、ご自身で買い集めた楽器の実物やブルガリアの文献を中心に、国内の演奏者さんから聞いた話も盛り込んでまとめられたそうです。
本文でさりげなく言及される、現地とは違う日本での乾燥・湿気対策は、きっと楽器の実物を手にしているからこそ伝えたいことでしょう。一方で、斜めに吹く笛カヴァルが「蜂蜜のような」と描写される音色であることや、ガイダの材料にシカやヤギの角が使われることもあると書かれれば、まだ聞いたことのない音を頭の中であれこれ想像し、その土地にいる動物たちの姿も思い浮かびます。実物を生かしたリアルな部分と、実用だけでないエピソードや成り立ちの話の部分が合わさり、その土地への興味が広がっていくような気持で読み進めました。

収集した楽器にスポットを当てて、紙の本で残すこと
実はご本を作られた理由の一つには「せっかく収集した楽器たちにもう一度スポットライトを当てたかった」というお気持ちがあったそうです。自分だけで心ゆくまで愛でるのもコレクションの楽しみですが、その魅力をもっとたくさんの人に知ってもらいたい! と活動的になるのも、とっても面白い方法ですね。
そのために紙の本という手段を選んで、構成を決め、資料を読み、原稿を書いて入稿して、と四方八方からさまざまに手を尽くして光を当てておられる姿……それは大切なコレクションを輝かせる照明職人さんのようです。未知のものを普及しながら、ご自身の大切なものをきらりと輝かせるご本です。

サークル情報
サークル名:アインコーンの杜
Twitter:@einkornltd
ブログ:https://skuchendnevnik.blog.fc2.com/blog-entry-514.html
今週の余談
今どきはどんな音かな? と思ったら、音声や動画を聞くサービスで手掛かりを探すこともできるようになりました。でもなんにも知らないと最初の一歩の踏み出しようもなかったり……。今回はご本のおかげでブルガリアのすてきな音楽を聞くことができましたよ。
みさき紹介文
公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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