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皆さまは、どのプリキュアの変身シーンが好きですか?
「プリキュア20周年イヤー」を記念して、2023年2月1日からYouTubeの東映アニメーションミュージアムチャンネルで、1日1プリキュアの「プリキュア変身シーン」が公開されています(2023年3月23日現在では49人、51個の変身シーンが公開中です。過去に公開されているものを合わせれば71個もの変身シーンが見られます)。

「プリキュアの変身シーン」は子どもの人気も高く、もちろん「変身おもちゃの販促」の一面もあるため製作者も力を入れて作成し、年々表現方法も変化し続けています。その進化の歴史は相当に面白いのです。
プリキュア20年の歴史の中でファンを驚かせたプリキュア変身シーン10個から、その進化の歴史を振り返ってみたいと思います。
kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
- これまでのプリキュア連載一覧
プリキュア変身シーンまとめ
1.手をつないで変身「ふたりはプリキュア」変身シーン
まずは「ふたりはプリキュア」(2004年)の変身シーンです。全てはここから始まりました。「セーラームーン」や「おジャ魔女どれみ」など東映アニメーション「魔法少女の変身」の伝統を受け継ぎつつ、変身おもちゃのアップから始まり、体にパーツが装着、全身を映して決めポーズ、といったプリキュア変身シーンの基本がすでに確立されています。
その特徴は何といっても2人同時変身。この2人が「手をつなぐこと」からプリキュアは始まったのです。キュアブラックの力強さ、キュアホワイトの可憐(かれん)さ。2人の着地のポーズの差により戦闘スタイルの違いを表現しているところも良いですよね。
ちなみに、変身時に体がメタル調に輝くのは「変身シーンを過剰にセクシーに見えないようにする工夫」の一つであったことも後に製作者から語られています。
そういう意味でも「プリキュア変身シーンの方向性」を決定づけた重要な変身シーンでもあるのです。

2.個性の幅を広げた「キュアレモネード」変身シーン
「Yes!プリキュア5」(2007年)以降は1人で変身できるようになったこともあり、「それぞれの個性に合わせた変身スタイル」が確立していきます。
中でも個性的だったのが「キュアレモネード」の変身シーン。くるくると巻かれていく髪の変化が特徴的です。変身中の「アイドルっぽいポーズ」や「ピースサイン」は「モーニング娘。」のプロフィール写真を参考にしていたとのことです(『プリキュア10周年公式アニバーサリーブック』志田直俊氏の発言(P77)から)。

衝撃的だったのは決めぜりふの「はじけるレモンの香り」。
この奇抜な(?)せりふを考えたのはADKのプロデューサー鶴崎りか氏で、「シュワっとした感じがいいかなと思った」と語っています(『プリキュアシンドローム』(幻冬舎)P74から)
固定観念に捕らわれないこの決めぜりふは、以降のプリキュアにおける変身シーンの表現の幅を大きく広げた名決めぜりふだと思うのです。

その後も、変身シーンは年を追うごとにキラキラ感も増し続け、動きも派手になっていきます。
「フレッシュプリキュア!」(2009年)では、キャラが変身空間で走ったりジャンプしたり踊ったりといった「3次元の動き」も取り入れられ、主体的に動き回ることにより動きの表現にも幅が出てくるようになりました。

3.笑顔で変身「キュアサンシャイン」変身シーン
そして「ハートキャッチプリキュア!」(2010年)の変身シーンでは「表情」にも変化が訪れます。
それまでは「戦いに赴く少女」という点から、変身中はキリっとした表情の多かったプリキュア変身ですが、「ハートキャッチプリキュア!」ではとにかく「楽しそう」に変身する姿が描かれました。
また「自動的にパーツが装着される」スタイルではなく、ココロパフュームからの香水を自らの手足に吹き付けることによりパーツが装着される変身スタイルも画期的でした。彼女たちは自らプリキュアへと変わっていくのです。

その中でも「キュアサンシャイン」の変身シーンは、「かわいい姿へと変わっていく」という自己解放の表現として、とにかくよく動きました。特にココロパフュームをくるくる回しながら手から手へ投げ渡す動きがあまりにもすごく、当時のプリキュアファンを驚愕させました。
この原画を手掛けたのはアニメーターの志田直俊氏。志田氏は、このパフュームを回すシーンはトム・クルーズの映画「カクテル」の影響であったと後に語っています。

志田:キュアサンシャインのバンクで、サンシャインは変身アイテムをくるくる回すんですけど、あれはトム・クルーズの映画「カクテル」を参考にしたんです。
森宗:ハリウッドスター(笑)
志田:トムがバーの中でカクテルをくるくるやるんですよ。見ていてどうにかならないかなって。コンテどおりにやると、ちょっと地味だから何かないかって思って。
メディアパル『プリキュア10周年公式アニバーサリーブック』(P77)
滑らかに動き回り、派手なエフェクト、かわいいを開放していく演出……キュアサンシャインの変身シーンは当時のプリキュアファンに衝撃を与え、「変身シーンを手掛けたアニメーター」が注目されるきっかけにもなった時代を代表する変身シーンなのです。
4.じゃんけんぽん!「キュアピース」変身シーン
その後も「プリキュアの変身シーン」は1作ごとに演出面、エフェクト面、動きの滑らかさを製作者が競い合うようにして進化しつづけていきます。
中でも「スマイルプリキュア!」(2012年)の「キュアピース」は、これまでにない画期的な試みが導入され話題となりました。
変身の最後に「ぴかぴかぴかりん、じゃんけんぽん!」の決めぜりふとともに、全国の子どもたちと一緒にじゃんけんをするのです(バンクなのに毎回じゃんけんの手は変わります)。
そう。テレビからキュアピースがこちらにコミュニケーションしてくるのです。

この変身シーンは、キュアピースのかわいさも相まって、子どもたちに大人気の変身シーンとなりました。
この「じゃんけんをする変身バンク」は、シリーズ構成の米村正二氏によると「採用するかどうか最後までもめていた」ようです。
ピースの「ピカピカぴかりん〜」の名乗りは衝撃的でした。
米村:あれは最後までもめました(笑)。
でも最終的には、今までのシリーズには無かった名乗りだし、ちょっと面白い感じがするからいいだろうということになりました。じゃんけんも子どもが好きですからありだろうと。
少しでも子どもたちがピースのじゃんけんを楽しんでくれてたらいいのですが。
学研パブリッシング『スマイルプリキュアコンプリートファンブック』(P89)
キュアピースの変身シーンは、テレビを見ている子どもたちと一緒に楽しむ「インタラクティブなコミュニケーション」を導入した唯一の画期的な変身シーンなのです。

5.板岡錦を世に知らしめた「キュアプリンセス」変身シーン
キュアサンシャインの原画を手掛けた志田氏以降、一部のマニアのみで語られていた「変身シーンを手掛けたアニメーター」も注目を集めるようになっていきます。
その第一人者に「板岡錦」の名を挙げるプリキュアファンも多いのですが、その名を世に知らしめたのがこの「キュアプリンセス」変身シーンです。
「ドキドキ!プリキュア」(2013年)の「キュアロゼッタ」から単独で変身シーンの原画を手掛けるようになった板岡氏が描く変身シーンは、より細かく、より元気に動いていたのです。

このキュアプリンセス変身シーンでも、マントがたなびく表現、カメラが回転するのではなくキャラ自体が動き回り、あわせてカメラも回転する複雑な構成、止め絵のかわいさ、最後に指で作った銃をフッと吹くシーンなど、とにかくよく動きファンを驚かせました。
板岡氏は、その後も「キュアマシェリ&キュアアムール」や「キュアジェラート」「キュアミルキー」「キュアサマー」「キュアプレシャス」などプリキュアを代表する変身シーンの原画を数多く手掛け、今では「変身職人」とまで呼ばれるプリキュア変身シーンの第一人者となっています。

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