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2023年は「ドキドキ!プリキュア」10周年イヤー。
なぜ「ドキドキ!プリキュア」は、「全員が優等生」という異色のプリキュアになったのでしょうか?

kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
- これまでのプリキュア連載一覧
「ドキドキ!プリキュア」は、2013年放送のプリキュアシリーズ第10作。前作「スマイルプリキュア!」が子どもたちはもちろん、大きなお友達も巻き込み大人気となった後を受けて始まりました。
テーマは「愛」と「愛から生まれるドキドキ」。「愛」という難しいテーマを、「博愛」「自己愛」「献身」など多様な愛を描くことで、小さな子どもたちにも分かりやすく伝えました。敵すらも包み込むキュアハートの圧倒的な「笑顔」が印象的でしたよね。
そんな「ドキドキ!プリキュア」の特徴の一つに「プリキュア全員が優等生」ということが挙げられます。
主人公、相田マナ(キュアハート)は、成績優秀で生徒会長も務めるハイスペックなキャラ、他のプリキュアたちも、全国模試ベスト10、学年トップの成績の「菱川六花(キュアダイヤモンド)」、超お金持ちお嬢様「四葉ありす(キュアロゼッタ)」、トップアイドル「剣崎真琴(キュアソード)」と、登場するプリキュアたち全員のスペックが高く設定されていました。
プリキュアの主人公というと「ちょっとドジで勉強は苦手だけど、元気いっぱい!」みたいなキャラで子どもたちの共感を誘うことが多い中、キュアハートをはじめ「全員が優等生」というのは異色の設定でした。

「ドキドキ!プリキュア」が全員優等生となった理由
なぜ「ドキドキ!プリキュア」は全員が優等生という設定となったのでしょうか?
「ドキドキ!プリキュア」のシリーズディレクター(監督)の古賀豪氏は、「当時プリキュアが低年齢層へとシフトしすぎて幼稚園の卒園と同時にプリキュアも卒業する」という風潮となっていたことを懸念し、小学生以上にも興味をもってもらうために「子どもたちが憧れる女の子」にしたかったため、と書籍の中で語っています。
古賀 あと、『プリキュア』シリーズが低年齢層の子どもにシフトしすぎているのではないかというのが気になっていたんです。小学生になったら『プリキュア』を卒業しなくちゃ、と思われている気がして。僕としては、興味があれば小学生になっても、『プリキュア』を観られるようにしたかった。そこで、ターゲットにしている子たちが憧れるような女の子を主人公にしたんです。
これは正直なところ賭けだったかなとも思っていました。でも結果的に女の子には、キュアハートだけでなく、ありす/キュアロゼッタやキュアエースのような、お姫様然としたキャラクターも人気が出たので結果オーライかなと。
学研ムック「ドキドキ!プリキュア オフィシャルコンプリートブック」(P83)
「全員が優等生」という設定はプリキュアの「対象年齢を引き上げるための施策」の一つだったのです。

開始とともに大好評
そんな「ドキドキ!プリキュア」。放送開始とともに子どもたちに大反響となり関連商品もよく売れました。
変身玩具「ドキドキ変身!ラブリーコミューン」は、前作「スマイルプリキュア!」の「スマイルパクト」を上回る勢いで売れ、玩具業界誌でも「シリーズ史上1番の好発進」と言及されます。
その1つが2月3日に放送開始した、シリーズ10作目の「ドキドキ!プリキュア」だ。 昨年のスタート時を上回りシリーズ史上1番の好発進で、なりきりアイテムを中心に動いており、メーカー側も昨年の動きを踏まえ、ゴールデンウィーク以降も好調が維持するような仕掛けを投じていくとの事で今後の動きにも要注目だ。
(東京玩具人形協同協会)『月刊トイジャーナル』2013年3月号(P62)

あの「スマイルパクト」を上回る勢いというのは当時としても、ものすごいことだったのです。そんな絶好調な滑り出しで、シリーズ最高の売り上げも視野に入っていた「ドキドキ!プリキュア」。
しかし、その勢いは徐々に落ちていってしまいます。
一方、女児玩具に関しては「ドキドキ!プリキュア」が初動は過去最高の販売を記録したものの次の商品までの間隔が空き、ペースダウン。3月に入って前年を割っている。
(東京玩具人形協同協会)『月刊トイジャーナル』2013年4月号(P76)
玩具業界誌では「期待値に届いていない」「売り場の期待に応えられない」などと言及されるようになってしまうのです。
女児玩具は「プリキュア」が売れてはいるが期待値には届いていない。
(東京玩具人形協同協会)『月刊トイジャーナル』2013年7月号(P56)
バンダイの「プリキュア」は決して売れていないわけではないが、現状では売り場の期待に応えられていない。
(東京玩具人形協同協会)『月刊トイジャーナル』2013年7月(P57)
なぜ「ドキドキ!プリキュア」は失速傾向となってしまったのでしょうか。そこには、「ドキドキ!プリキュア」の「対象年齢を上げる」という施策が、ある誤算を生んでいた事が一つの要因と考えられます。
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