国立科学博物館(科博)が8月から実施している、保有する標本・資料の維持のためのクラウドファンディングが11月5日で募集終了を迎えます。窮状の訴えに大きな反響が集まり、1億円の支援が1日とたたず集まると同時に、「なぜ国が支援しないのか?」という疑問もSNSで続出しました。ねとらぼ編集部ではこの疑問について、科博と管轄官庁である文化庁を取材しました。

同博物館はこれまでに航海実験のためなどクラウドファンディングを2回実施していますが、今回は独立したプロジェクトではなく、「かはくの担う機能の根幹にかかる費用」を募るという、博物館としての存続にかかわるものとなっています。
科博のミッションの1つである膨大な数の標本・資料の保管には多額の資金がかかり、ただでさえギリギリの運営体制だったところへコロナ禍が発生。2019年度には約7億5000万円だった入場料収入が2020年度には約1億5000万円まで落ち込みました。
そこへ近年の物価高騰、わけても光熱費の高騰が追い打ちをかけることに。もともと億単位の額だった光熱費が、2023年は2021年に比べ約2倍の見込みになるといいます。
科博ほどの大規模な施設がこのような危機に陥ったことに、多くの人が衝撃を受けて支援に参加し、1億円という目標額をわずか9時間で達成されました。現在では8億円を超える支援が集まっています。

なぜ? SNSで疑問
支援の声と同時にSNSで多く見られたのが、「“国立”という名の付く博物館を、なぜ国は支援しないのか」という疑問です。
2022年度の決算報告書では、科博の収入の約8割は国からの「運営費交付金」で、残りが入場料などの収入。国からの交付金が支柱になっていることが分かります。
一方で「“国立”と冠しているが、科博は独立行政法人(独法)となっており、国からある程度独立している」との指摘もあります。
さらに、2023年10月の財務省の資料によると、「我が国の国立博物館・美術館の収入全体に占める自己収入等の割合は、諸外国の主要な博物館・美術館に比べると低い」「これらの博物館・美術館は、独立行政法人として一定の自主性及び自律性の発揮が求められる」として、適切な水準の入場料設定や、クラウドファンディングなどにより、「自己収入の拡大に向けた取組を進めるべき」としています。

このように国は、科博などに対し自己収入を増やすよう促しています。とはいえ今回は、貴重な資料を多く保有する科博が「標本・資料の新規受け入れを断念せざるを得ないケースもいよいよ増えています」と訴えるほどの状況です。SNSの「クラウドファンディングの前に何かしらの追加支援があって良かったのでは」という意見も頷けます。
このような疑問について、科博と文化庁に聞きました。
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