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Netflix映画「REBEL MOON – パート1: 炎の子」が12月22日から独占配信を開始。過去約10年にわたってスーパーマンやバットマンの物語を描いてきたザック・スナイダー監督が長年あたためてきた意欲作かつ、自ら“スナイダー版スター・ウォーズ”とも称する銀河を巡る壮大なオリジナルストーリーで、後編「REBEL MOON – パート2: 傷跡を刻む者」は同じくNetflixで2024年4月19日からの配信が予定されています。
舞台は巨大な銀河帝国“マザーワールド”が支配する世界。物語は過去を捨て平和なコロニーでひっそりと生きる主人公コラの村が、マザーワールドの母星インペリウムの侵略を受けたことから展開。コロニーを救うため再び武器を取ったコラは宇宙へ飛び出し、また自らの過去と向き合って悪の帝国へリベンジを挑むこととなります。
これまで「300〈スリーハンドレッド〉」「ウォッチメン」といった作品を手掛けてきたスナイダー監督は、「REBEL MOON」製作にあたり「スター・ウォーズ」はもちろん、「七人の侍」を含む黒澤明作品の影響を挙げていて、同作はまさにこうした名作と共通する「“ワケあり”の者たちが集結して決死の使命に挑むドラマ」となっています。ソフィア・ブテラ(「キングスマン」)演じるコラが行く先々で出会うのは魅力的なキャストが演じるクセ強キャラたち。チャーリー・ハナム(「パシフィック・リム」)、ジャイモン・フンスー(「ブラッド・ダイヤモンド」)、ペ・ドゥナ(「ベイビー・ブローカー」)ら個性派俳優が脇を固めています。

ねとらぼでは、作品プロモーションのためパート1配信前に来日したスナイダー監督へインタビュー。配信だから実現した大人向けの作風や、大規模ヒーローフランチャイズでの経験が影響した「REBEL MOON」の製作過程について聞きました。

「世界中2億5千万人がデバイスをオンにするだけで」 Netflixとの連続タッグ
ハードスケジュールも何のその、ポップカルチャー通とあって「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌を英語で口ずさみながらご機嫌で記者を迎えてくれた監督。インタビューは非常にリラックスした雰囲気で進み、時にはNGワードを挟みながら映画文化や作品への思い入れを熱く語ってくれました。
―― 直近の作品はストリーミングでの公開が続いています。劇場公開作品との違いは感じていますか?
ザック・スナイダー監督(以下、スナイダー監督) 劇場と配信は互いに共存できると考えています。配信が今後廃れることはないでしょうね。とても手軽で便利だから。この作品は当初からNetflixで配信する前提で製作しました。Netflixと私の間には確固とした信頼関係があります。劇場公開は念頭にありませんでしたが、一方で70ミリバージョン※も用意しているんです。
※幅広で高精細なフィルムゲージ。なお劇場映画については35ミリフィルムが標準的。
70ミリ版はウルトラパナビジョン(比率2.76:1)で撮影しました。ウルトラパナビジョンで作られた映画は非常に少なくこれまで12、3本しかありません。横方向に縮小した状態で撮影されるので、上映時には正しく引き延ばす必要があります。とてもビスポークでややこしい作業なのですが、幸い今はアルゴリズムを使って計算できるので難しくはありません。100年前の映画のようなレトロな写りが魅力です。

ただ、そういうポテンシャルもあるとの話で、日本では70ミリ版の上映は予定されていません。世界中2億5千万人もの会員がデバイスをオンにするだけで視聴できるというストリーミングの環境は、それだけでもかなりクレイジーでしょう。
―― 今回は監督だけでなく、脚本、撮影監督、プロデューサーも兼ねています。撮影終了から約1年で配信開始とかなりのスピード感だったようですが、制作の過程は?

スナイダー監督 脚本執筆の時点では特に具体的な指示はないんです。ト書きも一般的なものくらい。一方で絵コンテはかなり具体的に作ります。ストーリーボードは私が見せたい世界そのもの。(あるシーンの絵コンテを見せながら)完成した作品と見比べても、この時点で撮りたい映像がかなりはっきり定まっていたと分かるでしょう。脚本は読み手に向けたものとして書いているのかな。
だからプリプロダクションでも、チームに「脚本は見ないで!」と伝えます。特にデザイナー。「でも脚本では……」と返ってくることもありますが、「それはどうでもいいから」と。絵コンテが全てです。もちろんせりふは別ですが。
「ルークと一晩過ごしたいと狙っている相手はいたはず」 大人向けに作られたヒーロー

―― 「スター・ウォーズ」や黒澤作品からの影響を明言しています。あらためて「REBEL MOON」と過去の名作の関係をお聞かせください。



スナイダー監督 哲学的な観点からすると、「REBEL MOON」は「スター・ウォーズ」を分解再構築した作品といえます。「スター・ウォーズ」自身も黒澤作品から影響を受けていることはよく知られています。
実は「REBEL MOON」にはR指定バージョンもあるんです(続編配信前に公開予定)。全年齢版ではある程度マーケットプレースも意識しましたが、R指定バージョンは「そんなもの知るか」といった作風です。ずっと大人向けで「スター・ウォーズ」にはできなかったことをやっています。思いっきり振り切っていてより再構築要素が強い。何せビジネス意識がゼロなので。
「スター・ウォーズ」に登場するカンティーナ(酒場)の場面で、農場育ちのかわいらしい青年を見初め、ルークと一晩過ごしたいと狙っている相手はいたはずだし、当時からルークの貞操を心配していた観客もきっといたでしょう。だけど「スター・ウォーズ」じゃそんな場面は描けません。「REBEL MOON」にも登場するカンティーナでの場面を楽しみにしていてください。
―― 指定なしバージョンを試写で拝見しましたが、エド・スクライン(「デッドプール」)演じる悪役・ノーブル提督の印象は十分に邪悪でした。感情移入の余地がないほど残虐なキャラにした意図は?

スナイダー監督 ノーブル提督のキャラ構築は全てストーリーのためです。彼がどこまでも容赦ない悪役で村が圧倒的に危機という状況でないと、自分自身を危険にさらしてまで主人公が宇宙に飛び出していく理由がない。だからノーブル提督は卑劣な悪役になりました。
ノーブル提督の視点からすると、「マザーワールドから離れて好き勝手やれる」と自分が置かれた状況を心から楽しんでいるんです。ノーブル提督自身も邪悪、マザーワールドも邪悪ではあるものの、組織化されて官僚主義的な面もあるため、組織の一員としては完全にイカレっぱなしでいるわけにはいかない。彼のような頭のネジが数本外れた男には窮屈な側面もあるんです。

―― 「マン・オブ・スティール」「ジャスティス・リーグ」といった作品では、コミックを下敷きにしたヒーロー作品を描いてきました。今回、オリジナルのヒーロー作品を作り上げるにあたり、過去の経験が生きたことはありますか?

スナイダー監督 後編を見てもらえば、私がコラをどのように描きたかったか伝わると思います。ダークで気難しい主人公。原作が存在して正史からは離れがたいDCにはやらせてもらえなかったことです。コラの人となりがより分かると同時に、つらい思いをしてもらうことになります。R指定版ではより激しくね。
幸い後編は4月に配信されるので、皆さんをじりじりと2年も渡せたりしません。どうか楽しみにしていてください。きっと皆さん、全てを理解するはずです。

『REBEL MOON – パート1: 炎の子』
監督・脚本・プロデューサー: ザック・スナイダー
キャスト: ソフィア・ブテラ、チャーリー・ハナム、ペ・ドゥナ、ジャイモン・フンスー、ミヒウ・ハウスマン、スタズ・ネア、レイ・フィッシャー、エド・スクライン、アンソニー・ホプキンス
Netflix映画『REBEL MOON – パート1: 炎の子』12月22日(金)世界独占配信、『REBEL MOON – パート2: 傷跡を刻む者』2024年4月19 日(金)世界独占配信
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