1月2日に公開された米Los Angeles Times紙の座談会に参加した、ワーナー・ブラザーズ・アニメーションのサム・レジスター社長が業界でのAI利用について言及。レジスター社長は現在のところAI利用には意欲的ではない旨を述べ、その理由をアニメーターたちを守るためだと説明しました。

AI利用について参加者の見解分かれる
2023年のエンターテインメント業界は、コロナ禍で落ち込んだ興行収入の回復を目指すも、ハリウッドの脚本家と俳優によるストライキというハードルが早々に立ちはだかることに。このストライキではAIの台頭を脅威と感じる不安から、その使用に関する規制も要求されており、闘争が長引くにつれ、エンターテインメントとAIに関する論争はより本質的なところまで深まっていくことになりました。
座談会の中で持ち出された「AIを使っているか? それについて案じているか?」との質問に対し、「ジャスティス・リーグ:二つの地球の危機」(2010年)、「ルーニー・テューンズ:ラビッツ・ラン」(2015年)、「トムとジェリー」(2021年)などを制作してきたレジスター社長は、「アニメーションはヴィジュアルメディアです。今のところ、AIが視覚的なことでできることについて、(生身の)アーティストがもっとうまくできない、という例は見たことがありません」と回答。視覚的な仕事をするうえで技術面でAIに優位性があるわけではないとしました。
ここでヴァーティゴ・エンターテインメント創設者のロイ・リーは、AIがアニメーション制作においてすばらしい仕事をする一例を提示。絵コンテを分析するために台本をAIへ入れてみることがあると述べ、その結果を「まるで芸術作品のよう。メモを入れると、即座に変えてくれるんです」と試みの有効性を伝えました。
リーの証言を受け、レジスター社長は「アニメーションスタジオとしては、できる限り長くアーティストと芸術の一形態を守ることも重要だと思っています」と持論を展開。
「なぜなら、本当にそれを実行する人に対し仕事を与えるべきだと思うから。そうすれば、まず彼らがエントリーレベルの経験を得ることができるんです」とAIを積極的に使わないのは単にどちらが優れているかというだけでなく、業界全体の成長や機能、才能の保護を考えてのことだという見解を示しました。
レジスター社長の意見に、トライスター・ピクチャーズのニコール・ブラウン社長が同意。「つまり、映画とは誰かの経験、誰かの視点、誰かのヴィジョンを描いたものなんです。たとえストライキ中に多くのAIに関する議論が発展したとしても、コンテンツを制作する者として、私は人間と働きたいんです」と映画制作会社の視点から訴え、発言へ賛同するように参加者たちがうなずき合いました。

才能ある若者は「デジタルを望む」との意見も
一方、AIはこれからどんどん改良されていくとし、AIで再現した元NBA選手ウィルト・チェンバレンの声をすっかり本人のものだと勘違いしていたというエピソードも。
さらにユナイテッド・タレント・エージェンシーのタレント部門パートナーで共同責任者のクリス・ハートは、現在でも若い才能が次々に現れているとしながらも、テレビや映画の部門は縮小傾向にあり、より多角的に進化していると発言。
さらに、才能ある若者の一部は「本当にデジタルを望んでいます。本当に(インターネット上の映像や音声を配信する)ポッドキャスティングを望んでいるんです」とし、時代の流れにより若者がエンターテインメントに望むものにも変化があると指摘していました。




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