自販機用の缶ドリンク「かに鍋スープ 雑炊仕立て」が、メーカーも驚くほど売れている。


真っ赤なかにのイラストと、力強い「かに鍋」「スープ」「雑炊」そして「お米入り」の文字。強すぎる個性を誇示する缶の中には、かに鍋風味の温かいスープと、香ばしいお米の粒が入っている。
大阪の飲料メーカー・ダイドードリンコが2023年9月、鶏の水炊き風ホットドリンク「博多水炊きスープ 雑炊仕立て」とともに発売。両製品合計の出荷実績は、過去5年間に新規投入した缶スープでトップに躍り出た。
通常、秋冬期の商品は10月までに生産を終了する。だがこの商品は11月以降に販売数量が急伸。異例の追加生産に踏み切った。「売れすぎて、開発担当者も営業担当者もびっくりしました」とダイドーの広報担当者は話す。
売れ始めたきっかけは、X(旧Twitter)でのバズだった。
発売直後に鬼バズ……想定外の引き合いも
「【朗報】ダイドー、今年も攻めた商品を出す」「かに風味ではなく完全にかに鍋の味がします。美味しい!」
2023年10月。「かに鍋スープ」が一部の自販機にしか展開されていなかったころ、こんなポストがXで注目を集めた。コーヒーやコーンスープではなく「かに鍋」という発想の意外性と、「お米入り」というこだわり、妥協のない味が、Xユーザーのハートをキャッチしたのだ。
投稿を発端に、テレビの情報番組で紹介され、SNSでさらに話題に。ネット番組やWebニュースなどでも取り上げられて話題がふくらんだ。その後、全国的に気温が下がって温かいスープが欲しくなる時期に入り、11月ごろから売れ行きが急上昇したという。
同社の窓口にも「どこに置いてあるのか?」という問い合わせが相次いだ。自販機の商品は、設置場所の環境によって内容を変えており、「かに鍋スープ」を入れる予定がない場所もある。だが、SNSでの反響や報道の効果で、予定になかった自販機オーナーから「かに鍋を入れてほしい」という要望を受けることもあったという。
なぜ米を飲もうとした? 開発に苦節3年
そもそも、雑炊を缶ドリンクにしたのはなぜか。なにゆえに、米を飲もうとしたのか?
広報担当者によると、「外出先でお腹が空いた時、お米を食べたい」という開発者の思いが発端だったという。手軽に小腹を満たせる缶ドリンクは、コーンポタージュなどが定番だが、“お米”で小腹満たしができないかを検討。3年の開発期間を経た2021年、第1弾としてお米入りの「参鶏湯(サムゲタン)風スープ」を発売し、大きな反響があったという。

3年かかったのは、お米をドリンクの具材にするのが技術的に難しかったためだ。軽く焙煎するなどの工夫を加えることで、加熱しても缶底にくっつかず、米粒の食感を楽しめる具材を実現した。
“お米ドリンク”シリーズの第2弾として2023年秋に投入したのが、「かに鍋スープ 雑炊仕立て」と「博多水炊きスープ 雑炊仕立て」だ。 ”鍋のシメ”をイメージし、冬のごちそうとして人気のかにと、鶏の旨みを楽しめる水炊きを選んだ。
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