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年末年始、ふるさとへの帰省や旅行をされる方もたくさんいらしたようですね。移動手段には何を使われましたか? 私は気になっていた少し遠い場所の図書館まで電車に乗って足を延ばしてみました。車窓から見るいつもと違う風景は心躍ります。そんな旅路でも実はどこかできっと見掛けているはず……今回は駅や電車内で見掛けるマナーについてのポスターの同人誌です。
今回紹介する同人誌
『マナーポスター入門』A5 36ページ 表紙、本文カラー
著者:クリス・シンコフスキー

駅で見掛けるマナーを呼びかけるポスターに注目
こちらのご本は、駅や電車に掲示されているマナーについて呼びかけるポスターに着目した同人誌です。例えば「ストップ! かけこみ乗車」や「歩きスマホは危ないですよ」など、電車を利用していると注意を呼びかけるポスターがあります。作者さんはこの日常にあるポスターに着目し、論文を発表されている研究者(社会学者)です。
ご自身の論文をもとに研究テーマを同人誌にされ、実際に掲示されていたポスターの写真を交えながら、マナーポスターとは? から、誰が制作しているのか? 対象とされる行動は? 効果はあるのか? といった内容が語られます。


気が付けばそこここにその姿が
写真もたっぷり。紙面での分かりやすさが興味深さを引き立てる
紙面はマナーポスターやその周辺について解説する文章と、豊富な写真で構成されています。たくさんの実例を見ることで文章の理解を助け、マナーポスターのデザインの原則は? といった、見た目が重要なポイントになる話も分かりやすく読み進めることができました。また紙面構成としてもカラフルな色使いが肩の力を抜いてくれ、並べられた写真をふむふむと眺めていると「こういう雰囲気のことを指してるんだな」など自分で発見するように楽しくなってきました。


インパクトがありつつも分かりやすさも求められるバランス
マナーという曖昧さが可視化され続けている日常を見ていくこと
作者さんは文中でマナーポスターについて「規制標識、公共広告、交通広告など他のメディアの形式と関連する複雑なコミュニケーションのジャンル」と書かれています。あきらかな犯罪の抑制だけでなく、時と場合によって解釈が変わりかねないマナーというふんわりとしたものを、しっかりとポスターとして明言して発表するギャップ、そこに込められた意図や派生していくさまが浮かび上がります。
ご本を読み、辺りを見回すと、なんとなく身近にあり、なんとなく当然だと思っていたものが自分の暮らしにひっそりと、しかし確実に干渉していることに目が止まるようになりました。ふと気が付いたらそっと隣に立たれていたような……曖昧なものを抱えているけれど、あれやこれやの軋轢(あつれき)を解消しようと、なんとかかんとか訴えかけるマナーポスターにはけなげさも見えるような気がします。日常に寄り添われていたことに気付く、ちょっとしたそわっとさ、マナーポスターと人々の暮らしとともに、いつもの生活のそこここにある物への興味深さを感じました。

サークル情報
サークル名:とりざらし
入手先:ギャラリー世田谷233(※前作『防犯ポスターからわかること』も取り扱いあり)
Twitter(X):@ckowsk
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/cschimk/
Webサイト:https://www.sitesue.net/(デザイン担当STUDIO SUE)
今週の余談
内容が同じでも、本の作りやビジュアル面で雰囲気も伝えられることも大きく変わりますね。そして豊富な実例とエピソードは、こつこつと現場を訪ねてこられたであろう質実さ、関わった方々との関係性の積み重ねがあることも感じました。
みさき紹介文
公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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