ねとらぼ

V8エンジンを積んだ大型船外機、それは水上のスーパーカーなのです。

大馬力の高級船外機は「水上のスーパーカー」である

──ということで、今回は発売予定のキットを持ってきてみたんですが……。

 いや〜、よくできてますね! エンジンカバーの開き方が、ちゃんと実物通りなんですね。中身のエンジンには目が行くと思いますけど、この辺のスイベルケースとか、船外機マニアじゃないと気にしないようなところも、すごく精巧にできてます。正直、ここまでは期待してませんでした。

プラモデルを前に、若かりし頃の記憶が蘇ってくる福田さん

──実物を作っている人から見ても、出来がいいんですね。

 実際船外機をやってる立場からしても、すごいプラモだと思います。見てると、本物のエンジンの形やディテールを思い出しますね。立場的にV8の開発に直接携わったわけではないんですが、若かりし頃にはこれの弟分のV6をサービスキャンペーンの現場とかでよくいじってたんで、その頃の記憶を思い出します。

──実機のカラーバリエーションも、今後バリエーションとして発売されるかも……ということなんですが。

 色違いやカラーリング違いも、富裕層のお客様からは需要があるんですよ。

──やっぱり、大馬力の船外機を買う人というと、自分で大型のボートを持っているようなお金持ちが多いんですか。

 そうですね。特にアメリカだと、やっぱりお金持ちからのレジャー用の需要というのは大きいです。そういうお客様って、「かっこいいから大きいエンジンを乗せたい」という気持ちがある人が多いんですよ。車もそうですが、アメリカには大きくて強いエンジンへの需要が常にある。彼らって、意外に燃費も気にするんです。

──けっこう庶民的なところを見るんですね。

 いや、出費を気にしてるわけではないんです。燃料が1ガロンいくら、みたいなところは彼らにとってはどうでもよくて、「船の燃料タンクを満タンにしてどれだけ走れるか」というところを気にするんです。つまり、燃費が良ければ1回の給油で遠くまで行けて、長い時間遊べて、面倒な給油のタイミングが少ない。そっちの方がうれしいっていう考えです。

──自分が考えてた「燃費の良さ」への評価とはベクトルが違いました……。

 なんせそういう人たちなので、基本「船もエンジンも見せびらかしたい」という気持ちがすごくあるんですよ。「自分の船と合わせたいから、船外機にも独自のペイントをする」っていう人もいて、いくらかかったか聞いてみたら1機あたり100万円とか。

──自分の金銭感覚でなんか言える世界じゃないですね、これは。

 船外機の値段って、だいたい1馬力1万円なんですよ。だからBF350っておよそ350万円するんです。でも、それを平気で2機3機と搭載しちゃう。3機で1000万円超えますけど、そもそもBF350が3機も必要な船って億単位の値段ですからね。もう、船外機代なんて端数みたいなもんです。とはいえ船外機って外から見えるんで、それがパワフルで派手でかっこいいと「どうだ!」ってなるんですよね。カテゴリーとしてはランボルギーニとかフェラーリというか、スーパーカーみたいなマシンということになると思います。

──なるほど……スーパーカーと言われると、大型船外機がどういう立ち位置のメカなのかスッと理解できました。

 なので、BF350もルックスにはこだわってます。これまでとはデザインの方向性を一新して、「Noble Motion Form」というラグジュアリーなスタイリングコンセプトを採用しました。ただ、船外機の後ろ側に「350」って書いてあるのは、やっぱり「馬力が書いてあると、後ろから見た時にかっこいいから」っていうことかもしれないですね(笑)。

燦然と輝く「350」そして「V8」の文字。そりゃV8積んでりゃドヤりたくなりますよね

──この船外機を持っていること自体でドヤれるようなデザイン、ということですね。さすがフラッグシップマシン。ちなみに先ほど世界的に大型船外機需要が高まっているとおっしゃっていましたが、この方向性のデザインで今後も大型機を出していくプランなんでしょうか。

 今後も続々と、この方向性で製品を作っていくつもりです。まずはやっぱり、デカい船に積むものから作っていきたいですね。やっぱり、ホンダのエンジン技術が生かせるのは大型船外機なんです。新しいデザインを踏襲しつつ、そこを集中的に攻めたいと思っています。

──船外機が、とにかく強力でタフなエンジンを積み込んだパワー系マシンでありつつ、贅沢でラグジュアリーな機械でもあることがよく分かりました。ありがとうございました!

大変楽しそうにプラモデルを見ていらっしゃいました

 船外機のプロのお話、読んでいただけましたでしょうか。純粋にエンジンのパワーがモノをいうワイルドなメカでありながら、同時にラクジュアリーさや洗練も求められるという点は、まさにスーパーカーと同じ。超パワーを秘めた綺麗なマシンが手元にあったら、そりゃ見せびらかすよね……。

 大和に零戦、タイガー戦車にスポーツカーにガンダムと、古今東西プラモデルのモチーフとして人気があったのは、何かしらスーパーパワーを秘めたマシンでした。そういう観点から見れば、確かにスーパーでスペシャルなマシンである「V8エンジンを積んだ大馬力な船外機のプラモ」が登場したのも納得です。少なくとも、自分はもうすでにちょっと船外機のプラモが欲しくなってきた……。では、そんな船外機がプラモデル化されるまでには、いったいどのようなプロセスがあったのか。記事の後編では、その辺りについてお話を聞いてみようと思います。

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