ねとらぼ
2025/08/05 12:00(公開)

“7割の企業が知りたいこと”をアピールした就活生はたった1割? “ガクチカ”は響いていない? 10年以上変わらない就活ギャップの実態をプロに聞いてみた

 26卒生の活動が継続されている中、27卒生へ向けたインターンシップも始まっている新卒生の就職活動。酷暑の中、スーツ姿でコンクリートジャングルを歩いている就活生を見ると、思わず心の中で応援してしまいます。

 就職活動については、これまで活動開始時期の早期化や3割3年問題(就職した学生の3割が3年以内に退職してしまう)など、さまざまな課題が語られてきました。そんな就職活動において、面接におけるギャップが長らく課題となっているのはご存じでしょうか?

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就活生のアピールは、企業が知りたいことではないかも?

 リクルート就職みらい研究所(2025年4月にインディードリクルートパートナーズ リサーチセンターへ統合)が毎年公表してきた「就職白書」という資料があります。この中には企業や就活生の動向を中心に、就職活動に関するさまざまなデータや分析がまとめられています。

 その中で長らく実施されてきた調査の一つに、企業が採用基準として重視する点と、就活生がアピールした内容の比較があります。公開されている中で最も古い「就職白書2012」によれば、以下のグラフのような結果となっていました。

2012年版調査結果(就職みらい研究所「就職白書2012」より引用

 就活生がアピールした項目の1位が「アルバイト経験」だったのに対して、同項目は企業側が重視する採用基準としては上から7番目。一方、企業側が3番目に重視している「今後の可能性」は、就活生のアピール項目としては上から10番目と順位が低くなっていました。割合にすると、企業の約7割が重視しているのに対して、アピールした就活生はわずか1割程度に止まっています。

 他にも「所属クラブ・サークル」が就活生4位に対して企業13位、「趣味・特技」が就活生6位に対して企業19位、「所属ゼミ・研究室」が就活生7位に対して企業16位など、項目によっては大きな開きがあります。

 もちろん、就活生の多くがアピールしている「アルバイト経験」「所属クラブ・サークル」などのエピソードの中で、企業側が重視する「人柄」や「今後の可能性」について無意識に伝えられている可能性もあります。ただ、グラフを見る限りは、アルバイトやサークルの単なる活動報告に終始してしまい、企業が求める要素を伝えられていない就活生も多いとみられ、少なからずギャップが生まれているのは事実と言えそうです。

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2013年以降も続くギャップ

 この傾向は2013年以降も続き、同調査の結果が公表された2023年版まで同様の傾向が見られます。

2013年版調査結果(就職みらい研究所「就職白書2013」より引用
2023年版調査結果(就職みらい研究所「就職白書2023 データ集」より引用

 インターンシップ・1day仕事体験の経験を重視する企業が増えるなど、項目ごとに見ると多少のパーセンテージの増減はありますが、全体として企業と就活生の間には、まだまだ認識のズレが発生している様子がうかがえます。

 2024年版以降は、それまでのような比較グラフの掲載はなくなりましたが、データ自体は集計されており、全体傾向としては2023年までと大きな変化がない様子が分かります。企業の知りたいことと就活生がアピールしたことのズレは、まだまだ解消されていないようです。

2025年版調査結果(就職みらい研究所「就職白書2025 データ集」を元に編集部で作成。分類「全体」のデータのみ参照)

 もっとも、仮に就活生がこのようなデータを目にしても、「人柄や自社への熱意って、どうやってアピールすればいいの?」「そもそも『今後の可能性』って何?」と困惑してしまうかもしれません。就活生が企業の知りたいことをアピールできていないだけでなく、企業やキャリアセンターなどが就活生に必要な情報を提供できていない、という課題もあるのかもしれません。

 こうしたギャップについて、就職活動のプロはどのように見ているのでしょうか? 前リクルート就職みらい研究所長であり、現在はインディードリクルートパートナーズ リサーチセンターで上席主任研究員を務める栗田貴祥さんにうかがいました。

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インディードリクルートパートナーズ 栗田 貴祥さんからのコメント

回答者
栗田 貴祥(くりた・たかよし)
インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター 上席主任研究員 / 前リクルート就職みらい研究所長

 学生がアピールした項目と企業が採用で重視する項目にギャップがあるように見えるのは、企業は学生のこれまでの行動や体験を深掘りすることによって、その学生の持つ人柄や今後の活躍の可能性、そして企業への熱意を探ろうとしていることにあるからかもしれません。

 よく「ガクチカ」として、アルバイト経験や部活やサークル、ゼミ活動などでの取り組みを伝える学生も多いと思いますが、企業は、そういった学生の「取り組みそのもの」や「取り組みによる成果」はもちろんですが、それ以上に、その「取り組み」のプロセスを深掘りすることによって、学生一人ひとりの持ち味や“らしさ”を見出そうとしているのだと思います。

 ですので、学生の皆さんは、「自分がどんな環境で、どんなことに、どんな人と取り組むと成果を出しやすいのか」「自分の“らしさ”や強み・持ち味はどんなものか?」を具体的な実体験を通じて、分かりやすく伝えていくことが重要ですし、企業は、自社で採用したい人(≒活躍できそうな人)は、どんな価値感、どんな“らしさ”や強みを持った人なのかをしっかりと言語化した上で、これまでの体験の中で、そういった“らしさ”や強みを発揮したり、自覚できたりしている人なのかを見極めるような深掘りを行っていくことが必要になると思います。

 互いにそれが実現できれば、おのずとギャップは解消されるのではないでしょうか。

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