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仕事はチームでやるもの。ですが、他のメンバーに仕事をなかなか振れないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか? 今回は、そんな悩みを抱えながら働くSさんのエピソードをもとに、人と組織、労働市場に関する調査・研究やサービス提供を手がけているパーソル総合研究所で研修講師として活躍する渡邉規和さんに、ポイントをコメントいただきます。
Sさんのプロフィール
| 性別 | 男性 |
| 年齢 | 30代 |
| 企業の業種 | 人材系(総合人材サービス会社) |
| 企業の社員数 | 約500人 |
| 企業での職種 | 管理系(総務、人事、広報など) |
「自分でやらないと不安」で、振るべき仕事を抱えてしまう
Sさんは人材系の企業で働く30代男性。仕事はバックオフィスで、総務系の業務を中心に広報や人事の仕事も一部ヘルプで手伝っています。
そんなSさんの悩みは、「周りに仕事を振れない」こと。
「他の人に任せるべき仕事だと分かっていても、自分でやらないと不安で……結局ぜんぶ自分でやってしまうんです」
Sさんはどんな仕事でも、自分の目が届いていないと心配になってしまうそうです。ちゃんと予定通り進んでいるのか、求めるクオリティになっているのか……。もちろんリーダーとしての業務もあるため、振るべき仕事を巻き取っていてはパンクしてしまいますが、「それで不安が解消できるなら、そのほうが良い」と言います。
「いざ仕事を振ると、あまりに不安で進捗や内容を細かく確認してしまって……。相手からすると嫌な気分じゃないかと思って、それなら最初から自分でやったほうが、お互いにとって良いかなって」
自分と同じレベルを求めてしまう悪いクセが変えられない
またSさんは、仕事を振れないもう一つの大きな理由が、自分と同じレベルの業務クオリティを求めてしまう点だと言います。
「ついつい自分の理想を相手にも押しつけてしまいがちなんです。悪いと分かってはいるんですけど、どうしても抑えられなくて……」
振った仕事が求めるクオリティに達しておらず、後から手直しすることもしばしば。それなら最初から自分でやったほうが早いと、周りに仕事を振れなくなってしまったそうです。ただ、「そのクオリティの仕事が出来るようにフォローしてあげるのが、僕の本来の仕事なんですけど……」と、現状を改善したい思いはあるようです。
周りを育てるべきと分かっていても「異動や退職で全て無駄に……」
周りに仕事を振れるようになったほうが良いと、頭では分かっているSさん。それでもなかなか改善に動き出せないのは、一体なぜなのでしょうか?
「周りに任せて、ちゃんとフォローして、一つ一つ出来るようにしてあげるのが、結果的にはタスクが手離れして楽になるんだと分かってはいるんです。でも、そこまで持っていく工数を考えると、正直あまり気が進まないといいますか……」
またSさんは、育ったメンバーが異動や退職でチームを離れてしまうリスクを考えると、腰が重くなると言います。
「弊社は異動や退職がわりと頻繁で、同じチームの人と離れ離れになってしまうことが珍しくありません。多くの時間を費やしてメンバーに業務を引き継いだのに、その人がいなくなってしまうというのは、毎年のようにあります」
そうなると、またゼロからやり直しになってしまう……それなら最初から自分でやったほうが早いしクオリティの心配もない、何よりメンタルにも良い、となってしまうそうです。
パーソル総合研究所・渡邉規和さんからのコメント
仕事ができる若手のプレイングマネジャーが、メンバーに仕事を任せることに不安を感じるその気持ち、分かります。私も以前はそうでした。メンバーが自分と同じように、またはそれ以上の品質で仕事をしてくれるだろうか? と思うと、不安になって結局自分でやってしまう、巻き取ってしまう、ということですね。
そんなSさんにお勧めの格言があります。「任せて任せず」です。これはパナソニックの創業者・松下幸之助が実践し、残した言葉です。実際に大阪のパナソニックミュージアムにも掲示されていました(2024年9月時点)。
松下幸之助はメンバーに仕事を任せる際、一人ひとりの長所を見たうえで、潜在能力を信じて大胆に任せていたそうです。経験や実績がなくても、です。こうして実績がなくても信じてもらい任せてもらったメンバーは、松下翁の期待に応えようと頑張って仕事をし、成果につながり、その結果、多くの人財が育っていったそうです。
仕事は任せる。しかし任せっ放しにはしない。メンバーからタイムリーに報告を聞き、状況によって的確な指導・アドバイスをしていく、ということです。
加えてSさんは、メンバーにいきなりSさんの高い品質基準を課さないことも大切ですね。100%を求めないとでも言いましょうか。「任せず」の面が行きすぎた介入、過度なマイクロマネジメントにならないように気をつけましょう。
メンバーは最初から期待の品質を満たせるとは限りません。そんな時でも「成果」ではなく、任せた仕事への「行動」を労えるといいですね。満点でなくても、できていること、取り組んでいることを労うのです。たとえば「粘り強く頑張っているね、ありがとう」とか、「おっ。やり方を工夫して取り組んでいるね、いいね」のような言葉による承認です。「行動」を承認されたメンバーは、きっといっそう前向きに取り組んで、「成果」につなげてくれることでしょう。
回答者プロフィール
![]() | 渡邉 規和(わたなべ・のりかず) パーソル総合研究所 トレーニングパフォーマンスコンサルタント 人材サービス業の営業マネジャー(東京・仙台)、BPO事業プロジェクトマネジャー、合弁会社の人事で採用担当、2社のベンチャー勤務を経て2018年から現職。研修講師の専門職として若手からマネジャー層向けのコミュニケーション等の研修に年間およそ140日登壇。PMP、実務教育学修士(専門職)、青山学院大学大学院社会情報学研究科博士前期課程在学中。 |

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