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皆さんは子どものころ、どんな仕事をしたかったですか? 今は、その仕事をしていますか? なりたかった仕事とは別の仕事に就いている人も多いのではないでしょうか?
キャリアプランという言葉がありますが、世の中なかなかプラン通りにはいかないもの。だからこそ、夢だった仕事と現実になった仕事は違うけど、やりがいを持って働いている人たちの話には、やりたいこと探しに疲れてしまった人や、キャリアに悩む人たちにとってのヒントが隠れているように思います。
というわけで今回は、28歳で仕事を辞めてライトノベル作家をめざし、最終的に「ねとらぼ」へたどり着いた中の人のKさんに話を聞いてみました。
そもそもやりたいことがなかった新卒時代
──そんなわけで、よろしくお願いします(笑)。
Kさん(以下、K):そんな大層な企画だと思ってなかったんですけど、よろしくお願いします(苦笑)。
──まず、社会に出るまでの経歴を教えてください。
K:都内の大学を卒業して、新卒派遣で教育系の中小企業に入りました。新卒採用で200社くらい受けたんですけど1社も内定が出なくて、卒業式の後に教育系の新卒派遣会社に登録して、なんとか就職しました。
──いきなり壮絶ですね……。その話も詳しく聞きたいんですけど、いったん先に進めますね。就職活動の中でやりたい仕事は見つかりましたか?
K:いえ、まったくでした。とはいえ、僕の就職活動は足りないことだらけだったので自業自得ですね。もっとちゃんと取り組んでいたら、あるいは違ったのかもしれません。
「ライトノベル作家になりたい!」 28歳で見つけた夢
──なるほど。それでは、最初の会社に就職した後の経歴を教えてください。
K:最初の会社でパワハラにあって3カ月で辞めて転職したんですけど、次の会社もハラスメントが横行していて10カ月で辞めました。
──すごい社会人スタートですね……。
K:それで3社目に転職したんですけど、この会社にいたとき、友達から勧められたライトノベルを読んで一気にハマりまして。その後、ここでも色々あって退職を決めて、この先どうしようかなと悩んでいたときに、一念発起して「ライトノベル作家めざす!」と会社を辞めました。
──ずいぶんいきなりですね。自信あったんですか?
K:いえ、まったくです。むしろやけくそだった感じですね。「こんなに転職を繰り返す自分なんて社会のお荷物なんだから、もうやりたいようにやろう」って。あと、それまで寝食を忘れてハマれるものってなかったので、それくらいハマれたものを仕事にできたら楽しいのかなと、漠然と思っていたくらいです。
退職してニートに。新人賞に挑戦するも最終選考で涙
──3社目を退職して、ライトノベル作家をめざす決断をしたわけですが、具体的にどんなふうにめざしたんでしょう?
K:ニートになって、貯金が尽きるまでに新人賞を取るのを目標にしました。知人から頼まれた仕事を少し手伝う機会もありましたけど、ほぼニートでしたね。
──かなり思い切りましたね。他の会社で働きながら受賞をめざす道もあったと思うのですが。
K:当時、主な新人賞の受賞者の年齢を分かる範囲で調べて、挑戦するにしても30代前半くらいまでが限界かなと判断したんです。僕は当時20代後半だったんで、悠長なことはやっていられないと思って、退路を断つ意味も込めてニートになりました。
──なるほど。では、ニートになった後の活動について聞いてもいいですか?
K:1日16時間はライトノベルのことを考えると決めていました。作品を読んだり書いたり、エンタメ作品に触れて魅力を分析したり。娯楽や寝食をとにかく断捨離して、ただ受賞をめざすことだけに集中しました。
──結果としてはいかがでしたか?
K:3年ちょっと挑戦したんですけど、貯金が尽きる寸前まで、2次選考すら突破できませんでしたね(苦笑)。最後に応募した作品が最終選考まで残ったんですけど、結局、受賞はできませんでした。それで再び就職活動をして、医療系の雑誌社に入りました。
あえてキャリアプランを考えない生き方
──ニートから再就職した後の経歴について教えてもらえますか?
K:まず医療系の雑誌社に入って、その後がWeb制作会社、ニュースメディア企業、携帯キャリアなどを経て、今のアイティメディアといった経歴です。あと、いくつかの会社では副業もしていて、営業やメディア運営、広告運用、スポーツイベントの企画運営といったことも並行してやっていました。
──かなり色々やっていますね。
K:誘われるがまま色々やっていたら、こんな感じになっていました。医療系の雑誌社にいたとき、ニート時代に知り合った友人から「うちの仕事を手伝ってほしい」といわれて、彼が立ち上げたWeb制作会社へ移ったり、そこで働いているときに副業で関わっていたWebメディアから「うちに編集として来ませんか?」と誘われて転職したり、といった具合です。
──ご自身の中でキャリアプランのようなものはありましたか?
K:いえ、まったくです。というより、あえて考えないようにしていました。
──と言いますと?
K:たとえば、最初の会社に入ったときは、まさかパワハラで会社を辞めるとは思わなかったですし、3社目の会社で「ライトノベル作家になりたい!」と思うなんて、全く想像していませんでした。自分の人生って、とにかくそうした偶然に左右されてきたので、キャリアプランをがっちり組むのは危険かなと思ったんです。
自分中心ではなく他人中心に考えるからこそ軸がブレない
──なるほど。でもそうなると、キャリアを構築できないといった不安はありませんか?
K:多少あります。ただ、任されたことをがむしゃらに頑張っていれば、そのあたりは勝手についてくるのかなという気持ちのほうが強いです。
ちょっと話が逸れますけど、自分はさっきも言った“社会のお荷物”っていう感覚がずっとあるので、仕事をもらえるだけありがたいと思っています。だから「自分が仕事でどうなりたいか」「自分が何をやりたいか」を考えるより、「自分を頼ってくれる人のために頑張りたい」「頼ってくれる会社が良くなる力になりたい」という思いがあります。
──仕事内容や職種には、特にこだわりはないですか?
K:唯一ライトノベル作家がそうでしたけど、諦めてからは特にありません。
──でも確かに、他人中心で考えると、キャリアの軸がぶれない印象があります。
K:そうかもしれません。僕も何度も異動になったり、職種や仕事内容が変わったりしてきましたけど、すんなり受け入れてこられました。自分のやりたいことやキャリアに対する思い入れが強いと、「キャリアプランから外れる」「その仕事はやりたくない」と感じて不満をためこんでしまうこともありそうですけど、そういう不満がなくて済んでいるのは、そのあたりの影響な気もします。
──「頼ってくれる人や会社の力になりたい」というブレない気持ちがあるからこそ、というわけですね。
K:そうですね。自分なりの武器を磨いてキャリアを築いていくのが王道なんだと思うんですけど、とにかく「この人のため」「この会社のため」という気持ちで頑張るだけでも、わりと勝手にキャリアって築かれていくのかなという気もします。もちろん合う合わないはあると思いますし、とにかくキャリアが汚い僕の話なので、決してオススメはできませんけど(苦笑)。
──なるほど(笑)。とても面白いお話でした。今日はありがとうございました!
K:どうも、お疲れさまでした。
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