夏から秋にかけて旬を迎える野菜「ナス」。みなさんはどのように調理していますか?

 ナスにはアクがあるため、昔ながらの調理法では、切った後に水にさらすのが一般的でした。しかし近年の研究によって、ナスの新たな事実が明らかになっています。一体どのように調理するのがよいのでしょうか?

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ナスの調理は“丸ごと加熱”か“素揚げ”がオススメ

 ナスに多く含まれるコリンエステルは、血圧低下や抑うつ・リラックス効果を期待できると注目の成分です。ナスに含まれる量は、ほかの農産物と比べて約3000倍ともいわれています(参照:農畜産業振興機構「なすの食品機能と機能性表示食品」)。

 ただし、コリンエステルは熱に強くて加熱で失われにくい一方、切るとナスの中から分解する酵素が出て、失われやすくなります。さらに水にも流出しやすいため、水にさらすのは避けるべき。丸ごと電子レンジで加熱するか、素揚げをしてから調理するのがオススメです。

レンチンが手軽でオススメ

 手軽でオススメなのが、電子レンジによる加熱です。丸ごとラップにくるみ、ナス1本につき1〜1.5分ほど加熱してください。加熱によってコリンエステルの流出が抑えられ、その後なら切って調理してもOK。保存する場合も、生のままではコリンエステルが失われやすいので、加熱後に冷凍保存するのがオススメです。

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皮やヘタもそのままでOK

 ナスの皮にも、健康に良い成分が含まれています。よって、むかずに食べたほうが効率よく栄養を摂取できます。また、アクにも体に良い成分が含まれているので、そのまま加熱すれば、アク抜きはしなくても問題ありません。

 さらに、ナスのヘタやガクにも栄養があります。ガクは口に残るので、切り落としてもかまいませんが、ヘタは加熱後にそのまま調理して食べてしまいましょう。食感が気になるなら、カレーやスープなどに加えるのがおすすめです。

ワンポイントでカロリーオフ

 ナスは揚げ物や炒め物にすると、おいしく仕上がりますが、その身はスポンジ状で油を吸いやすく、そのまま調理すると仕上がりが油っぽくなりがちです。

 これを防ぐのが、油によるコーティング。最初に少量の油を絡めておくことで、余分な油が吸収されずカロリーを抑えられます。

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ナスにはこんな栄養も! ただし食べすぎには注意

 ナスの約90パーセントは、水分で構成されています。そのため栄養がないと誤解されがちですが、コリンエステルのほかにも、体の調子を整えてくれる栄養素が多数含まれています。代表的な成分を見てみましょう。

(1)ポリフェノール(ナスニン、クロロゲン酸)

 ナスの皮には、アントシアニンの一種であるナスニンなどのポリフェノールが含まれています。またアクの正体は、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸です。

 ポリフェノールには抗酸化作用のほか、糖分の吸収を抑えて脂肪の蓄積を防ぐ効果も期待されます。糖尿病をはじめとした生活習慣病の予防にも役立つと考えられています。

(2)天然の抗がん成分

 ヘタやガクには、“天然の抗がん剤”ともいわれる成分(9-oxo-ODAs)が含まれています。古くからナスのヘタはイボを取る効果があるとされ、民間療法で活用されてきました。このことに着想を得た研究により、ヘタやガクに含まれる天然化合物が、子宮頸がんのがん細胞の増殖を抑えることが発見されたのです(参照:名古屋大学「ナスから発見された天然化合物が子宮頸癌細胞への抗腫瘍効果を発揮することを実証」)。

(3)カリウム

 ナスの身には、ミネラルの一種であるカリウムも含まれています。カリウムには余分な塩分を排出する作用があり、高血圧の予防や改善が期待できます。また、体の熱を外に逃がし、体温を下げる効果も期待でき、夏のような暑い季節や、体に熱がこもりがちなときに、積極的に摂りたい食材ともいわれます。

(4)食物繊維

 ナスには100グラムあたり約2.2グラムの食物繊維が含まれています。腸内環境を整える作用があるほか、食後の血糖値の急激な上昇を抑えたり、血中コレステロール値を下げたりする効果も期待できます。

摂取量の目安

 栄養満点で捨てるところのないナスですが、食べすぎには注意しましょう。栄養が優れているからと、同じ種類の食品を食べすぎると、アレルギーを発症するといったリスクが高まります。淡色野菜に分類されるナスだけでなく、緑黄色野菜なども合わせて適量を取るなど、バランスの良い食生活を送りましょう。

 これまでの常識と異なる調理法や、ナスの持つさまざまな栄養素に驚いた人も多いのではないでしょうか。秋に売られるナスは秋茄子と呼ばれ、皮が薄くて柔らかく、みずみずしいのが特徴です。効果的な調理法で、ぜひ食卓に取り入れてみてください。