宇宙も海も、まだ誰も足を踏み入れたことのない未知の世界が広がっています。そして今、地球のすぐ近くともいえる18光年先に、生命を育む可能性を秘めた惑星が見つかりました。その名は──「GJ 251 c」。

 地球の約4倍の質量を持つ岩石惑星で、生命が存在できる「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」に位置しています。科学者たちは、この惑星を地球外生命探査の新たなターゲットとして注目しています。

画像はUniversity of California Irvineプレスリリース「UC Irvine News」からの引用 Credit by Michael Marcheschi / m2design
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地球の近くで発見されたスーパーアース「GJ 251 c」

 今回発見された「GJ 251 c」は、太陽よりも小さく冷たい赤色矮星GJ 251の周囲を公転しています。この恒星の適温な領域、いわゆるハビタブルゾーンの外縁近くに位置し、条件次第では液体の水が存在できる可能性があると考えられています。

 惑星の質量は地球の約3.84倍。地球より大きく海王星より小さい岩石惑星で、その表面は固体で構成されており、分類上は「スーパーアース」と呼ばれるタイプです。

 ペンシルベニア州立大学の天文学者スヴラト・マハデヴァン氏は次のように述べています。

「GJ 251 cはゴルディロックス帯(Goldilocks Zone)にあります。適切な大気があれば、水が存在し得る環境なのです」

 このゴルディロックス帯(Goldilocks Zone)とは、恒星からの距離が、惑星が熱すぎず冷たすぎない状態のちょうどいい位置を指します。このバランスの取れた軌道こそが、生命が存在できる惑星を見つける際の重要な基準となっているのです。

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20年以上の観測が導いた発見

 生命が誕生できる惑星を見極めるために、研究者たちは主に2つの条件を確認します。1つは地球のように固体で岩石質であること。もう1つは、液体の水が存在できる温度帯にあることです。

 この2つの条件を満たす系外惑星は、これまでに発見された多くの惑星の中でもわずか。さらに、地球から比較的近く観測しやすい惑星となれば、その価値は計り知れません。「GJ 251 c」は、まさに“宝の中の宝”と呼ぶにふさわしい存在です。

 ですが、この発見は一夜にして得られたものではありません。国際的な研究チームは20年以上にわたって、GJ 251を継続観測してきました。

 使用されたのは、テキサス州マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡に設置された
高精度近赤外線分光器「ハビタブルゾーン惑星探査機(HPF)」。HPFは、恒星光のわずかな揺らぎを測定し、周囲を回る惑星の重力による“ドップラーシフト” を検出します(参考:日本原子力研究開発機構「用語解説 ドップラーシフト」)。

 観測データを解析した結果、すでに知られていた内側の惑星「GJ 251 b」とは異なる軌道上に、53.6日周期で恒星を公転する新たな惑星の存在が確認されました。それが今回の「GJ 251 c」です。

 カリフォルニア大学アーバイン校のポール・ロバートソン氏は次のように話しています。

「18光年という距離は、宇宙的に見れば本当に隣のようなもの。これほど近くで詳細な観測が可能な惑星は貴重です」

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次世代観測が切り開く生命探査の新時代

 ペンシルベニア州立大学の研究チームは、将来的にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)や30メートル級地上望遠鏡を活用して、「GJ 251 c」の大気中に水蒸気や二酸化炭素などの痕跡を探る計画を進めています。

 現時点では、「GJ 251 c」が恒星の前を通過する「食現象」は確認されていないため、惑星の半径や大気組成を直接測定するのは難しい状況です。しかし、距離の近さと位置の条件が、次世代の望遠鏡による観測に最適な対象として期待を集めています。

 今回の「GJ 251 c」の発見は、長年にわたる生命居住可能な惑星の探索における大きな前進といえるでしょう。しかし、それが第2の地球となり得るかは、まだ誰にもわかりません。宇宙への果てしなき調査は続いていきます。

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