ねとらぼ

3:小さな子どもの考え方を甘く見ない物語

 前作の物語で素晴らしかったのは、「2つの異なる立場の間にいるシャオヘイの“考える姿”」を描いたことだ。妖精の子どもであるシャオヘイは、人間に住む場所を奪われた立場であり、初めは妖精たちを仲間と思いそちらに寄り添っていたが、人間であるムゲンと行動を共にする道中で、彼なりに「何が正しいか」を考え続けていた。

(C)Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 劇中で描かれたのは、妖精と人間のどちらが悪と決めつけられる単純な二元論ではなく、双方の立場が複雑に絡み合う対立構造であった。それでもなお相手への理解と共存を探ろうとする姿勢は、現実社会にも当てはまる普遍的なテーマといえる。

 そして、続編である今回では、凄惨な襲撃事件を発端とした陰謀にシャオヘイたちが巻き込まれるばかりか、大規模な戦争が勃発しかねない事態となっていく。その先ではとあるショッキングな事実や過去も明らかとなり、シャオヘイは戸惑いや怒り、そして抑えきれないほどの嫌悪も見せる。

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 前作でのシャオヘイは6歳で、今回のシャオヘイが8歳。いずれにしても小さな子どもだ。しかし、『羅小黒戦記』という物語では、そんな小さな子どもの考え方を甘くは見ない。むしろ、子どもだからこそ大人たちの抱える問題を純粋な目で見つめ、正しい道を学び選ぶことができるのではないか――今回のシャオヘイは、前作にも増して、そんな利発さと希望を感じさせる。

 その先に待ち受けていた、シャオヘイとルーイエの物語の帰結と、多幸感に溢れたとある場面では、もう涙が滝のようにあふれて止まらなかった。

 おそらく、真犯人にまつわる描写や設定、結末そのものに賛否はあるだろう。だが、それでいい。見た人がそれぞれがモヤモヤを抱えていてこそ、今まさに痛ましい戦争が起きてしまった、現実の世界の問題を見つめるきっかけにもなる。ルーイエとシャオヘイが終盤にお互いへ問いかけた疑問の答えは明瞭なようでいて、実際はそう単純ではないことも、きっと伝わるはずだ。

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 なお、『羅小黒戦記』はWEB版(ショートアニメ)の日本語吹き替え版が放送中&各種プラットフォームで配信中だ。

 こちらは今回の『2』よりさらに2年後が舞台となり、シャオヘイが10歳になってからの出来事が描かれている。基本的にはゆるい日常的なアニメで癒し効果抜群、それでいて映画本編に迫るアクションの見せ場もあるので、併せて楽しんでほしい。

ヒナタカ

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