ねとらぼ
2025/12/19 07:30(公開)

京王バス、完全キャッシュレス化の方針を発表 「乗った後の残高不足どうなる?」「複数人のまとめ払いできる?」 心配事を聞いてみた

 2025年10月28日、京王電鉄バスグループ(以下、京王バスと表記)は「完全キャッシュレスバス」の実現に向けて推進すると発表しました。運行は調布営業所の管内路線から順次スタート。支払い方式は交通系ICカードとクレジットカード、定期券などとなり、現金の取り扱いはありません。

 乗降時の時間短縮が期待される一方、懸念点もあります。スムーズな運用は実現できるのか、利用者目線の不安を京王バスに取材しました。

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「後払い方式どうなる?」「車内チャージは?」 利用者の不安の対策は?

完全キャッシュレス化に向けた流れ(出典:京王電鉄バス株式会社プレスリリース)
完全キャッシュレス化に向けた流れ(出典:京王電鉄バスグループプレスリリース

 実証運行区間では現金が一切使えなくなるため、SNSでは「残高不足や通信障害の対策は?」「交通系ICカードを持っていない観光客はどうすれば?」といった声があがっています。乗車しようとした際に残高不足に気づくなど、これまで現金でフォローできていたトラブル時の対応に不安を持つ人も少なくないようです。

 こうした声に対し、京王バスは「バス車内での交通系ICカードへの車内チャージ機能は、お客様の利便性を考慮し、当面の間(2027年度時点)は継続いたします」と回答。ただ、将来的には廃止予定ということもあり、「今のうちから駅やコンビニエンスストアなど、車内以外での事前チャージへのご協力をお願いしてまいります」と、併せて周知も徹底するということでした。

 通信障害や機械故障のトラブルについては、「車両側の機械故障については、キャッシュレスのみならず、現金での対応でも発生しうる共通の課題であり、むしろ運賃機の現金取り扱い機能のほうが故障対応は多い現状です。キャッシュレスのみの弊害ではないと考えております」とコメント。加えて、「いずれの事態にも適切に対応できるよう、引き続き対策に努めてまいります」と回答しました。

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複数人分のまとめ払いは「すでに対応済み」

 またSNSでは、自動的に支払いが完了するキャッシュレス決済では、複数人分をまとめて支払いたい場合にどうしていいか分からないという声も聞かれました。

 ただ京王バスによると、キャッシュレスでの複数人分の支払いについては、現状すでに対応しているとの回答がありました。支払い時に運転士へその旨を伝えれば、交通系ICカードでも複数人分まとめての支払いができるようです。

 それでは、交通系ICカードを持っておらず、キャッシュレス決済に不慣れな人が乗車する場合は、どうすればいいのでしょうか? 近年は海外からの旅行客も多く、トラブルになってしまわないかという心配もあります。

 こうした不安に対し、京王バスは対応可能なキャッシュレス決済の種類を拡大予定。「交通系ICカードは、交通系ICカード全国相互利用サービスに加盟しているカードであれば、地方のカードもご使用いただけます。また今後、クレジットカード決済対応も拡大する予定です」とのことでした。

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車内で残高不足に気づいた場合はどうする?

 さらに、バスにはさまざまな乗車方法があります。後払い方式では、残高不足などの懸念を感じている人も少なくないようです。

 確かに、先払いの場合は残高不足に気づいて乗車しないという選択肢も取れますが、後払いの場合は、降車時に気づいて支払いができないというケースも起こりそうです。

 この問題点については、バスの乗車方法は「前乗り先払い方式」と「後乗り後払い方式」がありますが、後払い方式でも、交通系ICカードの残高金額やエラーの有無は、乗車時にわかる仕様となっております。しかし、後払い方式において、とくに車内チャージ廃止不安があることは認識しております」と、京王バスの担当者はコメント。また「交通系ICカードのチャージはバス車内だけでなく、JRや私鉄の各駅、コンビニエンスストアなど取り扱いは多くありますが、まだまだ認知されていないことも多いと考えております」とし、前もってのチャージについて周知を徹底していくとしています。

キャッシュレスを歓迎する期待の声も

 不安に思う人が多い一方、SNSには期待する声もあがっています。

 その大半は、乗降時間の短縮による効率化が期待できるというもの。京王バスもリリースの中で「スムーズな運賃支払いによって、乗降時間が短縮しバス運行の定時性が向上する」というメリットをあげています。

 また、前段でも言及されていた前払い/後払いの違いや、定額の運賃か距離で変わるのかなど、バスの支払い方法は統一されていません。今回の完全キャッシュレス化によって、その複雑さの解消にもつながるのではという声もあがっていました。

 また高齢者の利用について、キャッシュレスで支払いが単純化されることで、「むしろいいのでは」という意見もあがっています。

 すでにシルバーパスなどを活用している人も多いため、かざすだけで支払いができるキャッシュレス決済に慣れれば、そちらのほうが戸惑わずに済む可能性もあるのかもしれません。

公共交通機関で現金を取り扱わないことに問題はないのか?

 さまざまな意見が聞かれる今回の完全キャッシュレス化ですが、その他で多く見られた意見が「そもそも公共交通機関として現金を取り扱わないのは許されるのか?」というものです。

 法的な問題に対して、京王バスは「完全キャッシュレスバスについては、国土交通省が推進している施策でもあります」と回答。2024年に「一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款」が改正され、バス事業者が運賃・料金の支払い方法を指定できる規定が新たに設けられたそうです。

 京王バスは2024年に国土交通省の「完全キャッシュレスバスの実証運行」へ参画しており、法的に問題はなく、国の動向を踏まえての取り組みだということです。

そもそも京王バスはなぜ完全キャッシュレス化を目指すのか?

 京王バスは、2024年の実証運行参画をはじめ、これまでも段階的に完全キャッシュレス化の計画を進めてきました。その大きな理由としてあるのが「深刻な運転者不足」とのこと。バスネットワークを維持するためには、経営改善と運転者の負担軽減が急務となっているそうです。

 完全キャッシュレス化により、現金の取り扱いや管理業務を減らすだけでなく、運賃機など老朽化した専用機器への投資といったコスト削減にもつなげたい狙いがあるようです。

 また、現金で支払いを行う利用者がすでに少なくなっている現状も背景にあります。リリースによると、京王バスにおける現金での支払いは、2022年度ですでに4.3%と少なく、2024年度にはさらに減って3.9%。ほとんどの人がキャッシュレス決済を利用している状況です。

 現状の利用実態や課題を踏まえて発表された、京王バスの今回の方針。効率化や負担軽減により、地域の重要な公共交通機関としての機能を維持できるのか、今後の動向に注目が集まりそうです。

(2025年12月19日 18:30追記)

 京王バスは、今回のキャッシュレス化の取り組みについて紹介する「京王バスのキャッシュレス乗車|もっと便利で快適なバス体験へ」という特設サイトを開設。利用可能なキャッシュレス決済や実証実験の概要、主な疑問に対するQ&Aなど、さまざまな情報を発信しています。

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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