人類と深い関わりを持つイエネコ。長い間、その起源については「約9500年前のキプロス島で人と共に埋葬された個体」が最古の証拠とされてきました。
しかし、最新の古代DNA研究によって、この定説が大きく揺らいでいます。ヨーロッパ、中東、そしてアジアを含む広範囲から集められた200点以上の古代猫の骨を、最新のゲノム解析技術で分析した結果、私たちが飼っている“現代のイエネコ”の起源は、従来の想定よりもはるかに新しい起源を持ち、加えて古代に人と共生していた猫とは別の遺伝系統であることが明らかになりました。
これは、「最古の共生猫=イエネコの祖先」という従来の解釈を見直す、新たな視点を示しています。

古代のDNAから再構築される“イエネコ誕生”の姿
約9500年前のキプロス島で人と共に埋葬されていた猫は、「農耕民がネズミ対策として猫と共生し始めた」という家畜化モデルを裏づける重要な証拠とされてきました。しかし、この個体は現代のイエネコとは別系統であることが、DNAから判明したことをScience誌は伝えています。
農耕社会の発展とともに人の生活圏に入った猫は、複数の系統が存在していました。ところが、これらの多くは現代には受け継がれておらず、最古の共生猫が“現代イエネコの直接の祖先”とは限らないという、新たな事実がわかったのです。

現代イエネコは北アフリカの特定系統が起源
Phys.org によると、国際研究チームが古代と現代の猫のゲノムを比較した結果、世界中のイエネコは北アフリカのリビアヤマネコの特定系統から派生したことが明らかになっています。
さらに、以下のような点も示されました。
・現代イエネコにつながる系統が広がり始めたのは、約2000〜3000年前
・これは「約1万年前から家畜化された」という従来の理解よりもはるかに新しい
・古代の農耕社会で見つかる猫の多くは別系統で、現代には続いていない
つまり、古代には多様な猫たちが人の生活圏に存在していたにもかかわらず、現代のイエネコにつながった祖先系統は地域的・遺伝的に非常に限定的だったことになります。
この系統が生き残った理由として、研究者は次の特徴を挙げています。
・人に慣れやすい性質を持っていた
・人の移動や交易ルートに乗って広まりやすかった
・さまざまな環境への適応力が高かった
これらにより、特定の系統が人とともに世界へ広がり、現在のイエネコのルーツとなったと考えられています。

家畜化は複数地域で並行して進んだプロセスだった
今回の研究で示されたのは、猫の家畜化が単一の地域で起きた単純な出来事ではなかったという点です。
・農耕民が穀物を守るために猫と共存した
・交易ルートでネズミ対策のために猫が運ばれた
・地域ごとに異なる猫系統が、人とさまざまな形で関係していた
こうした複雑な関係が積み重なり、時間の経過とともに北アフリカ系統の猫だけが、“現代のイエネコ”として定着したと結論づけられています。
猫の家畜化の歴史は一つの系統が続いたものではなく、複数の分岐と収束を経た歴史だったのです。

DNA技術が明かしたもうひとつの猫の歴史
長らく信じられてきた猫の家畜化の歴史は、今回の研究により大きく書き換えられました。古代DNA解析の進歩によって、これまで見えていなかった猫の進化の姿が少しずつ浮かび上がっています。
今後さらに古い骨のDNA解析が進めば、猫の家畜化の歴史はさらに大きく書き換えられる可能性があります。人類と猫の物語は、まだほんの一部しか明らかになっていないのかもしれません。
参照
- Science 「The dispersal of domestic cats from North Africa to Europe around 2000 years ago」
- Phys Org 「Domestic cats came from North Africa to Europe only 2,000 years ago, DNA evidence suggests」
- EurekAlert! 「Ancient DNA reveals a North African origin and late dispersal of domestic cats」
- Independent 「DNA study changes long-held theory of when cats were domesticated」