ねとらぼ
2025/12/19 19:30(公開)

【このゲーム、探してます!】スタープログラマーを産み出したエニックスの傑作『ドア・ドア』誕生秘話

 みなさま、はじめまして。NPO法人ゲーム保存協会と申します。

 ゲーム保存? 謎の団体? いえいえ、そんなことはありません。れっきとした日本が世界に誇る文化である「ゲーム」を未来に残すため、ゲームに関係する歴史的資料を保護し、保存技術の開発や啓蒙などを行っている民間団体です。ゲームが大好きなボランティアで構成されています。

 当協会は日本のあらゆるゲームを平等に保護するために、多岐にわたる資料を収集しています。このコラム記事ではゲーム保存協会が探している、未入手のバージョンを含めたゲームを紹介しつつ、そのゲームの生まれた背景や歴史などを紹介していきます。

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ライター:ゲーム保存協会

2011年設立。日本が世界に誇るゲーム文化を100年先の未来に残すため、関係する歴史的資料の保護・保存技術の開発や啓蒙、他団体との連携・支援などに取り組む完全非営利の民間団体。本部は東京世田谷の等々力にある。
公式サイト:https://www.gamepres.org/
X:@gamepres


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スタープログラマーを産み出したエニックスの傑作『ドア・ドア』

 ゲーム保存協会が探しているゲームは多数ありますが、 今回はその内のひとつ「エニックス」(現在のスクウェア・エニックス)の黎明期のゲーム『ドア・ドア』を取り上げてみたいと思います。

FM-7版ドア・ドア。パッケージ裏には中村氏の顔写真が掲載されている。
PC-6001版ドアドアmkII。改良が施された(画像:ゲーム保存協会

 エニックスは1982年に設立されました。当初は自社でゲームの開発部隊を持たず、プログラムコンテストを行って優秀なゲーム開発者を発掘し、ゲームを製品化して市場に投入するという手法を取りました。

 会社設立後まもなく、各パソコン雑誌に広告を打って「第一回ゲーム・ホビープログラムコンテスト」を開催。最優秀プログラム賞(賞金100万円)をはじめとする賞を設けて、全国のアマチュア開発者の参加を促しました。そして、このコンテストに応募した多数のゲーム作品から各賞が選ばれ、開発者とともに新聞やパソコン雑誌で発表されて、翌1983年から製品化されていきます。

雑誌『ログイン』1983年12月号の読者が選ぶTOP20。ドア・ドアの人気の高さが伺える(画像:ゲーム保存協会

 この第一回コンテストの最優秀プログラム賞は『森田のバトルフィールド』というウォーシミュレーションゲームでした。また、優秀プログラム賞として『ドア・ドア』『マリちゃん危機一髪』の2本のゲームが選ばれました。このうち『ドア・ドア』を作ったのが、後にチュンソフトを設立して、堀井雄二氏と一緒に『ドラゴンクエスト』の制作に関わることになる中村光一氏です。実は堀井氏もこの第一回コンテストに自作のゲームを応募し、入選をはたしているのは有名なエピソードです。

 中村氏は高校時代にNECのパソコン「PC-8001」を購入(当時の希望小売価格 が16万8000円!)。アーケードゲームを移植して雑誌に投稿しています。その後、上位機種の「PC-8801」を購入して、オリジナルの『ドア・ドア』を制作し、前述の第一回コンテストに応募、優秀プログラム賞を勝ち取りました。

 この後、『ドア・ドア』も製品化されたことで、中村氏はプロのゲームクリエイターへの道を歩み始めました。その後、『ニュートロン』というゲームを開発し、友人らとゲーム会社を作ります。そう「チュンソフト」です。そして、堀井氏らと共にファミリーコンピュータ版 『ポートピア連続殺人事件』や『ドラゴンクエスト』を開発していくことになります。

雑誌『ログイン』1984年1月号・エニックスの広告。コンテスト入賞作のパッケージが勢ぞろい(画像:ゲーム保存協会

 では、中村光一氏のプロデビューのきっかけとなった『ドア・ドア』はどんなゲームだったのでしょうか?

 ジャンルとしては、ステージクリア型の固定画面アクションゲーム。プレイヤーは「チュン君」という帽子をかぶったかわいい1等身(?)キャラを操作します。画面はビルを横から見たような感じで、6階までのフロアが梯子で繋がれ、ドアが点在しています。チュン君のできることは移動とジャンプすること、それと「ドアの開け閉め」です。フロアをうろつく敵キャラ(こちらもかわいい)をドアに閉じ込めてステージクリアを目指していきます。

 その後、敵キャラの追加や画面構成の変更・キャラクター大型化などグレードアップを図った『ドアドア mkII』を発表、1985年に発売されたファミリーコンピュータ版の『ドア・ドア』は、この『ドアドア mkII』をベースに作られています。

 『ドア・ドア』は、当時の色々なメーカーが出していたパーソナルコンピューター向けにリリースされており、細かく分けると色々なバージョンが存在します。当時のパソコンは「互換性」というものがあまり考えられていなかった為、それぞれ専用のパッケージを用意しないとなりませんでした。NECは勿論のこと、シャープ(MZシリーズ・X1シリーズ)、富士通(FMシリーズ)などなど。 ここでゲーム保存協会が把握している『ドア・ドア』『ドアドア mkII』を一覧にしてみます。

『ドア・ドア』パッケージ一覧

機種メディア番号備考
PC-8801カセットテープ102-13-10
カセットテープE-G002新型番
カセットテープE-G002新型番・PC-8801mkII対応
MZ-2000カセットテープE-G014
PC-8801FD 5.25インチ 2DE-G016
FM-7カセットテープE-G019
PC-9801/E/FFD 5.25インチ 2DDE-G0602D対応
X1カセットテープE-G070
PC-8001mkIIカセットテープE-G076
MB-S1カセットテープE-G101
MB-S1FD 5.25インチ 2HDE-G102
PASOPIA 7カセットテープT-1E01
FM-77FD 3.5インチ 2DE-G073

『ドアドア mkII』パッケージ一覧

機種メディア番号備考
PC-6001カセットテープE-G068
PC-6001カセットテープE-G068A面:mkII以降版
B面:PC-6001(32K)
PC-6001カセットテープE-G068PC-6601SR対応
MZ-1500クイックディスクE-G112
FM-7カセットテープE-G138
PC-8801FD 5.25インチ 2DE-G139
FM-77FD 3.5インチ 2DE-G140
MSXROMカートリッジE-M004

 『ドア・ドア』『ドアドア mkII』、この2つのゲームだけで、これだけのパッケージが存在すると考えられています。ゲーム保存協会では、この中で特に探している『ドア・ドア』『ドアドア mkII』のパッケージがあります。

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このゲーム、探しています!

 1つ目は、日立製作所が販売していた「MB-S1」というパーソナルコンピューター向けです。上記の表のように、カセットテープ版と5.25インチ フロッピーディスク版という2つのメディアのパッケージが存在することになっており、保存協会ではこの5.25インチ フロッピーディスク版を探しています。

 『MB-S1』は当時の人気機種から見ると少しマイナーな立ち位置に有り、ユーザー数も少なかったであろうと考えられています。また「MB-S1」版は、当時の雑誌の広告を追っていくと最初のPC-8801版からかなり後に出ており、市場に出回った数も少ないと考えられ、現在では大変貴重になっています。

 2つ目はシャープが出していた「MZ-1500」向けのパッケージです。「MZ-1500」は本体に「クイックディスク」というフロッピーディスクに似たメディアのドライブを内蔵し、ゲームソフトもクイックディスクで供給されていました。当協会ではこの「MZ-1500」版のメディアのみ保管しており、付属品を含む完品は入手できていません。ゲームメディアのみならず、箱や説明書といったパッケージを構成するすべてが当協会の保存対象です。


NPO法人ゲーム保存協会とは

 2025年4月、ゲーム保存協会は中村光一氏を名誉会員としてお迎えさせていただきました。黎明期から第一線でご活躍されているクリエイターの方々との輪を大切にし、その足跡を記録していくことも「ゲーム文化」を保存していくうえで大変重要なことと思っています。

 当協会は、数々の名作を含むゲーム、およびその動作環境や文化を未来のために平等に保存し、内外のゲーム研究の為に活用されていくことを目標としています。

 今回の記事で紹介させていただいたゲームに限らず、自宅で眠っているゲームがもしございましたら、手段の一つとして当協会に寄贈することをご検討いただけませんか? また、当協会の活動は多数のサポート会員からの会費によって支えられております。寄贈やサポート会員登録をご検討いただけると幸いです。

ゲーム保存協会:https://www.gamepres.org/
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