ねとらぼ

みいちゃんと山田さんに似た人は、誰の周りにもいる

 一方で、先天的な障害があるとは示されていない主人公の山田さんも、「環境」に起因する問題に苦しめられていることが明かされる。彼女の母は過干渉で教育に厳しく、大学生になった今でも一人暮らしの部屋に押しかけ、漫画家になる夢を否定し、進路を押し付けてくる。

 この母親の振る舞いは作中では明確に度を越したものとして表現されているが、程度の差こそあれ、教育に強い期待を寄せる保護者自体は決して珍しい存在ではない。その中で山田さんは、蓄積されたストレスから、ティッシュや消しゴムを食べてしまうという異食症であることが示唆される。

 そんな山田さんだが、みいちゃんを友達として気にかけ、その「めんどうくささ」と適度な距離を取りつつも寄り添おうとすることで、自分自身も少しずつ変わっていっているように見える。

 このように、『みいちゃんと山田さん』のキャラクターそれぞれは極端なようで、現実に根ざした生きづらさを抱えており、亜月の言うように「あなたの周りにみいちゃんや山田さんみたいな人っていませんでしたか? または自分に似てる部分ってありませんか?」と、常に問いかけてくる作品となっているのである。

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この世界は辛くて悲しいことばかりじゃない

 その上で、山田さんやみいちゃん、ニナちゃんやムウちゃんのように障害があったり、あるいは今の環境に問題がある場合は、どう生きればいいのだろうか。それは山田さんの3巻および4巻の、以下の言葉にも集約されていると思う。

「ねえ、みいちゃん。この世界は辛くて悲しいことも多いけど、そればっかりじゃないとも思う。なるべく楽しく元気に生きていこうね」
『みいちゃんと山田さん』第3巻より

「長い人生だし、生きてる途中なら、その時点では幸せでも不幸でもどっちでもいいと思う。でもおばあちゃんになって、それまでのことを振り返ってさ、死ぬ間際には『まあまあいい人生だったな』って思えたらいいよね」
『みいちゃんと山田さん』第4巻より

 山田さんが口にするこれらの言葉は、みいちゃんが若くして殺されてしまう結末を知っていると、残酷に聞こえる。みいちゃんの障害、または環境の問題を解消するには不十分な、単なる慰めにすぎないようにも思える。

 しかし、それでもなお、その幸福の考え方、そして「そう言ってくれる友達がいる」ことはみいちゃんにとっても、それを言う山田さん本人にとっても、少なくとも「その時」にはとても大切なことで、大きな希望でもあったのだと思う。

 そんな友達がいないという人にとっても、そうした考えを促してくれる『みいちゃんと山田さん』は、とても大切な作品になり得るだろう。

ヒナタカ

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いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)
「死にたい」「消えたい」「生きることに疲れた」など、あなたのそんな気持ちを専門の相談員が受け止め、あなたの状況を一緒に整理し、必要な支援策などについて一緒に考えます。
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よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
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・実施日時:24時間対応

いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)
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・電話番号:0570-783-556(ナビダイヤル)
注)NTTコミュニケーションズが定める通話料がかかります。電話会社の通話料割引サービスや、携帯電話の料金定額プランの無料通信は適用されませんのでご注意ください。
・実施日時:午前10時から午後10時まで、ナビダイヤル受付センターに順次おつなぎします。

チャイルドライン(特定非営利活動法人(NPO法人) チャイルドライン支援センター)
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・フリーダイヤルのため、IPでんわからは接続できません。
実施日時:毎日ごご4時からごご9時
※12月29日~1月3日の期間は、相談受付休止

24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関に接続します。いじめやその他のこどものSOS全般について、夜間・休日を含めて24時間いつでも相談できます。
電話番号:0120-0-78310 (フリーダイヤル・無料) フリーダイヤルのため、IP電話からは接続できません。
実施日時:24時間対応

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