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ねとらぼ
2026/01/31 18:00(公開)

『攻殻機動隊』や『パプリカ』へのリスペクトに溢れる『マーズ・エクスプレス』を見る前に知ってほしい3つのこと

 1月30日よりフランス製のアニメ映画『マーズ・エクスプレス』が劇場公開中だ。結論から言えば、本作は「硬派な大人向けアニメ」を求める方に大推薦できる。日本のアニメ、特に『攻殻機動隊』のようなメカニックや哲学的な思想、今 敏監督の『パプリカ』に近い描写にも痺れる、「ジャパニメーション」への敬愛をたっぷりと感じられたのだから。

『マーズ・エクスプレス』2026年1月30日(金)より ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開 配給 :ハーク/トムス・エンタテインメント (C)Everybody on Deck – Je Suis Bien Content – EV.L prod – Plume Finance – France 3 Cinema – Shine Conseils – Gebeka Films – Amopix

 なお、レーティングはG(全年齢)であるが、わずかに性的な話題がある他、アンドロイド(人間型のロボット)や猫型のロボットが無惨に破壊される(殺される)場面もあり、物語に後述する通り「意図的なわかりにくさ」があるので、小さなお子さんにはおすすめはしない。中学生以上なら、問題なく楽しめるだろう。

 人間とロボットが共存する世界観や、退廃的な物語にマッチした音楽も魅力的なので、ぜひ没入観がある劇場でこそ見てほしい。佐古真弓、安元洋貴、内田夕夜、三瓶由布子というベテランの声優陣による日本語吹き替え版も素晴らしいクオリティーだったのでおすすめだ。

 そして、本作は「ある程度の前知識があったほうがいい」タイプの作品でもある。大きく3つに分けて、本編の魅力と共に解説しよう。

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1:「コンビで真相究明に乗り出す探偵もの」にして「迷宮に迷い込むフィルム・ノワールもの」である

 本作のあらすじを簡単に言えば「私立探偵の女性が、アンドロイドの相棒と共に、行方不明の大学生の捜査に乗り出す」というもの。これだけを取り出せばシンプルな「探偵もの」かつ「バディもの」で、あっと驚くアクションの見せ場もあるため、わかりやすいエンターテインとしての軸がある。

 しかしながら、立て続けに起こる出来事には「不可解さ」があり、「どういうこと?」と困惑する人は多いはずだ。衝撃的なオープニングシークエンスから「!?」となるだろうし、捜査をしていくと「行方不明の大学生は両親に大金を振り込んでいて売春の疑いもある」「アンドロイドが破壊される別の事件が起きている」といった、「ただの人探しというだけではない」事態に遭遇し続けるのだ。

 そうした特徴から、本作のジャンルは「フィルム・ノワール」でもある。フィルム・ノワールの定義は幅広いが、概ね「虚無的または退廃的なテイストの犯罪映画」であり、「ハードボイルドな探偵が社会の暗部を目にする」「ファム・ファタール(主人公を破滅へ導く蠱惑的な女性)が登場して男性を惑わせる」といった展開が多い。

 筆者個人としては、「出口のない迷宮に迷い込むような感覚」こそがフィルム・ノワールの「らしさ」であり、この『マーズ・エクスプレス』も「捜査はストレートには進まず、裏にある陰謀や誰かの思惑のために、どんどん混沌とした事態になっていく」特徴がある。そうした「事件の全体像がなかなか把握できない」部分、もっといえば「わけのわからなさ」をマイナスに捉えると退屈に感じてしまうのかもしれないが、その「翻弄される」感覚が魅力になるタイプの作品なのだ。

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 そして、辿り着く真相はとっぴなようでいて、「これまでの不可解さに(全てがスッキリするものではないものの)確かな意味があった」と思えるものだった。ある種の不条理さや理不尽さも含む結末ではあるが、それもまたフィルム・ノワールの「らしさ」だろう。

 実際にジェレミー・ペラン監督は、インスピレーションを得た映画として、『チャイナタウン』『ロング・グッドバイ』『殺しの分け前/ポイント・ブランク』『アンダー・ザ・シルバーレイク』という、やはりフィルム・ノワールまたはネオ・ノワール(1940〜50年代に流行したフィルム・ノワールを現代的な感覚で復興した作品)をあげている。他にも、『大統領の陰謀』『ミッドナイトクロス』『カンバセーション…盗聴…』という「陰謀に巻き込まれる」形式の映画にも影響を受けたのだそうだ。

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 その上で、ぺラン監督は「フィルム・ノワールの主人公はいつも男性ばかり」ということに気づき「女性を主人公にする」ことを思いついたのだという。そのため前述したファム・ファタールに当たる人物はいなかったりもするが、探偵の主人公はアルコール依存症で決して「正しい人間ではない」し、彼女も相棒のアンドロイドも、事件に翻弄され続けた結果として「心の闇」に囚われていくような場面もある。そこでもフィルム・ノワールらしい特徴が押し出されていた。

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