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ねとらぼ

2:「ロボット工学三原則」に基づく法律と「脱獄」という独特の概念

 本作の日本版ポスターのキャッチコピーには「絶望的に平凡な23世紀の火星で、ロボットが脱獄(ダツゴク)する」とあるが、本作における「脱獄」とは、牢屋から物理的に脱出する、という意味ではまったくない

(C)Everybody on Deck – Je Suis Bien Content – EV.L prod – Plume Finance – France 3 Cinema – Shine Conseils – Gebeka Films – Amopix

 たとえば、オープニングではこの「脱獄」の知識を問われた主人公の相棒が「サイバー法から解放され、盗み、殺し、悪態も好き放題。バレれば即解体される」とはっきり言う場面がある。そのサイバー法とは、SF作家のアイザック・アシモフが考案した「ロボット工学三原則」に基づく、ロボットが破ることのできない根本原則のことだ。

【ロボット工学三原則】
第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条:ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
――アイザック・アシモフ「われはロボット」(早川書房)より

 その上で、劇中の脱獄とは「ソフトウェアのセキュリティや保護機能を解除し、本来とは異なる用途に転用すること(つまりは「ハッキング(クラッキング)」と同義)」であると同時に、「サイバー法に則った絶対服従を保証するシステムを無効化すること」も指す。つまり、脱獄とは「ロボットを自由にさせると同時に、人間に危害を加える可能性のある存在へと変える」という、人間にとっての脅威となる概念なのだ。

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 そして、劇中では「ロボットをぶっ潰せ」「人間優位の社会を」という言葉を掲げての暴動の様子も描かれているほか、生前の姿と記憶を宿したアンドロイドの相棒が元妻から娘に会うことを拒否される、という場面がある。『鉄腕アトム』などで描かれてきたロボットへの迫害と差別、あるいは排外主義的な描写が、物語および結末に大きく絡んでいるのだ。

 その他、劇中では以下の用語も特に説明なく登場するので、軽く頭に入れておいたほうがいいだろう。プレス資料から引用する。

サイバネティックス:生物および機械における通信工学、機械工学を融合させ総合的に扱うことを意図した学問体系。第二次世界大戦後、米マサチューセッツ工科大学のノーバート・ウィーナー教授によって提唱された理論であり、「サイボーグ」や「サイバー攻撃」といった現代語の語源でもある。

有機体:新世代の知能機械。従来のロボットのように機械や電子回路で構成されるのではなく、人工合成細胞から成る。

強化人間:外科手術、遺伝子操作、人工移植によって身体能力と頭脳を強化された人間。

 また、タイトルの「マーズ・エクスプレス」とは、20年以上にわたり宇宙で活動を続けている実在の火星探査機の名前である。荒唐無稽なSFのようでいて、思想や設定は現実の科学や歴史に紐付いていることを鑑みれば、さらに面白く見られるだろう。

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