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ゲーム保存協会の松原圭吾です。今回探しているゲームソフトは『I/Oカセット・ライブラリ』シリーズです。
この『I/Oカセット・ライブラリ』は、1979年12月から1983年8月までの工学社発行の『I/O』誌と、その増刊や別冊に掲載されたプログラムを収録したコンパクトカセット(いわゆるカセットテープ)が通信販売されたものです。
ライター:ゲーム保存協会

2011年設立。日本が世界に誇るゲーム文化を100年先の未来に残すため、関係する歴史的資料の保護・保存技術の開発や啓蒙、他団体との連携・支援などに取り組む完全非営利の民間団体。本部は東京世田谷の等々力にある。
公式サイト:https://www.gamepres.org/
ゲーセンで遊べるようなゲームを家で遊びたい!
当時のゲーム好きにとって、ゲームセンターで遊べるようなゲームを自宅で遊ぶという夢をかなえてくれるのが、雑誌掲載プログラムリストの存在でした。ゲームソフトそのもののプログラムが紙面に掲載されており、実際にマイコンに打ち込むことで、そのゲームソフトを遊ぶことができました。当時このためにマイコンを買った人も多かったのではないでしょうか。
このプログラム掲載コーナーは読者からの投稿形式をとっており、さまざまな実用ソフトやゲームソフトが投稿され続けました。この中で完成度の高い作品は人気となり、投稿者の中には当協会の名誉会員であるK.N(中村光一)氏や芸夢狂人(鈴木孝成)氏といった、のちの有名人も多数名を連ねていました。
しかし、Webサイトや動画配信サービスなどがない当時、こうした投稿プログラムは打ち込んでみるまでどんな内容か分からず、誌面に掲載された画面写真から推測するしかありませんでした。また、実際に打ち込むとしても、長大な内容を1文字たりとも間違わずに入力しきるのは至難の業でした。
そこで登場したのが、「カセット・サービス」という通信販売でした。
『I/O』誌1980年4月号より登場したこの通信販売欄では、紙面に掲載されたプログラムのうち、特に人気の高かったものが製品として販売されました。当初は工学社が販売を行っていましたが、1980年8月号からは工学社の子会社であるコムパック社へと引き継がれたようです。特にマイコン販売店などの環境に恵まれない地方在住者にとって、このサービスはありがたかったのではないかと推察します。
また『I/O』誌には、過去掲載されたことのある特定機種専用のゲームを別の機種で動くよう、読者が独自移植したものも多数投稿されていました。それらが『I/O』誌面へ掲載されるかの判断は、オリジナル投稿作品よりも若干厳しめであったと聞いています。このような誌面への掲載は漏れたものの、お蔵入りさせるのは惜しいと判断された作品もこちらで販売されていたようです。
この『I/Oカセット・ライブラリ』は、その後マイコンショップの隆盛と共に店頭販売へ移行していき、引き続きコムパック社の取り扱いにて、紙箱のパッケージへ統合されてゆきます。
どのようなゲームがあったのか?
それでは、『I/Oカセット・ライブラリ』にはどのようなゲームがあったのか見ていきましょう。
『I/O』誌の「カセット・サービス」では、サービスが開始された1980年4月号以外には、通し番号のようなものが存在しませんでした。しかし、1981年3月号より全ての製品に「商品番号」が付与されました。以下、代表的なゲームソフトをこの商品番号順に並べてみました。
002:『与作ゲーム』(TRS-80用・1979年12月号掲載)
1979年のアーケードゲームであり、当時複数のメーカーが題材とした『与作』が元と思われます。同名の類似タイトルが複数あるため、明確な再現元作品は特定できない状況です。
004:『平安京エイリアン』(TK-80BS用・1980年2月号掲載)
こちらはアーケード版『平安京エイリアン』(電気音響・TSG、1980年)を再現したものではなく、未発表であるオリジナルApple II版からの移植です。そのため、アーケード版では2ボタン化するため廃止となった「べっこう飴」ボタン(エイリアン接触時に使用)があり、また残機制ではないといった違いがあります。なお、TK-80BS以外の移植(PC-8001やMZ-80K、MZ-80B等)では、アーケード版のルールに準拠していました。

018:『地底最大の作戦』(MZ-80K用・1980年7月号掲載)
これはオリジナルゲームとなっており、多数の機種に移植されました。

030:『マリン・エイリアン』(PC-8001用・1980年8月号掲載)
アーケードゲーム『トマホーク777』(データイースト、1980年)を再現していると思われます。リストでは「ギャラクシアンの海中版」との紹介文があります。
038:『ギャラクシアン』(PC-8001用・1980年9月掲載)
アーケードゲーム『ギャラクシアン』(ナムコ、1979年)を再現していると思われます。後に『ギャラクシーフライ』へ名称変更されました。
050:『エイリアンフォール』(PC-8001用・1980年11月掲載)
アーケードゲーム『カミカゼ』(レジャック・コナミ工業、1980年)を再現していると思われます。
068:『パックマン(迷路作成プログラム付き)』(ベーシックマスターLEVEL2用・1981年1月掲載)
アーケードゲーム『パックマン』(ナムコ、1980年)を再現していると思われます。迷路を編集できるエディタが付いていました。後に『パックンボーイ』へ名称変更されました。

128:『スペースインベーダー』(MZ-80K用・I/O別冊『マイコンゲームの本 1』掲載)
アーケードゲーム『スペースインベーダー』(タイトー、1978年)を再現していると思われます。後に『SPACE SHOOTER』へ名称変更されました。
170:『エイリアンパート2』(PC-8001用・1981年5月掲載)
アーケードゲーム『スペースパニック』(ユニバーサル、1980年)を再現していると思われます。
227:『スペース・マウス』(PC-8001用・1981年10月掲載)
これはオリジナルゲームとなっています。後に作者が制作に参加していた『ジーザス』(エニックス、1987年4月、PC-8801mkIISR用)にミニゲームとして収録されていました。

278:『スクランブル』(PC-8001用・1982年1月掲載)
アーケードゲーム『スクランブル』(レジャック・セガ・コナミ工業、1981年)を再現していると思われます。後に『ATTACKER』へ名称変更されました。

『I/Oカセット・ライブラリ』の全体像
このようにゲーム保存協会では、2019年度の文化庁のメディア芸術アーカイブ推進支援事業にて『I/O』誌掲載の情報を分析し、通販ソフト一覧を作成、公開しています(「2019年度・通販ソフト一覧」(リンク)を参照)。
この内容は、1979年12月号から1983年8月号までの『I/O』誌とその増刊、別冊に掲載された通信販売リスト情報を整理したもので、734タイトル(商品番号848まで)となります。また後期の実際の商品には商品番号の前に機種を表す情報の記載もありました(例「MZB-232」「PC80-115」等)。
プログラムリスト掲載と『I/Oカセット・ライブラリ』の違い
さて、『I/O』誌に掲載されたプログラムリストですが、実はバグを含んでおり、そのままでは動作しないものがありました。こうしたものは後の号で修正情報が掲載されました。そのため、修正や動作確認がされている『I/Oカセット・ライブラリ』版は確実に動作するという安心感がありました。
また、同じ商品番号であっても、販売時期によってジャケットデザインの違いや名称変更のあったものが確認されています(写真掲載の『スクランブル』→『ATTACKER』など)。これは著作権に関する対応も含まれていると考えられます。いずれにせよ、多くのバリエーションが存在している可能性が高く、こうした点も今後確認を進めていかなければならないと考えています。
収集の現状
現在ゲーム保存協会で所有している『I/Oカセット・ライブラリ』のタイトルは、100に満たない状況です。重複所有しているタイトルもほぼないため、同タイトル2つ以上のデータを比較して正しく保存できたかどうかを確認するという望ましい対応ができていません。また、掲載時のプログラムリストとの違いを確認できるようにすることも重要です。寄贈のご協力をご検討いただければ幸いです。
また、『I/Oカセット・ライブラリ』シリーズには、ゲームではない実用ソフト等も含まれています。こうした種類のものも歓迎いたします。
寄贈および情報提供のお願い
今回の記事で紹介させていただいたゲームに限らず、自宅で眠っているゲームがもしございましたら、手段の一つとして当協会に寄贈することをご検討いただけませんか? 機種・型番等の情報提供のみでも歓迎です。パッケージやバージョンの細かな違いを判別するため、重複に見えても全ソフトを1本ずつ比較・分析します。純正メディア単体での寄贈もぜひご協力ください。
また、当協会の活動は多数のサポート会員からの会費によって支えられております。寄贈やサポート会員登録をご検討いただけると幸いです。
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