宇宙で惑星同士が衝突する――。そんな決定的な瞬間は、理論では知られていても、実際に観測されることはほとんどありません。ところが今回、地球から遠く離れた宇宙で、その痕跡が詳細に捉えられました。しかもこの現象は、かつて地球と月を生み出したとされる衝突と似ている可能性があるといいます。

 いったい、何が起きていたのでしょうか。

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突然“異変”を見せた星

 観測されたのは、地球からおよそ1万1000光年離れた場所にある、太陽に似た恒星「ガイア20ehk」です。もともとは安定した、ごく普通の星として知られていました。

 しかし約5年後、その様子が一変します。

 星の明るさが突然、不規則に暗くなる現象が繰り返し観測されたのです。こうした変化は通常の恒星ではほとんど見られず、研究者たちも原因が分からず困惑したといいます。

画像は「University of Washington/NASA/NSF NOIRLab」からの引用

 詳しい観測の結果、星の前を何かが横切り、光を遮っていることが分かりました。さらに赤外線で調べると、周囲には高温の物質が存在している兆候も確認されました。

 つまり、単なる塵ではなく、加熱されて強く輝く物質が広がっている状態だったのです。

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惑星同士の衝突というシナリオ

 こうした観測データをもとに、研究チームが有力と考えたのが「惑星同士の衝突」です。しかも、1度の衝突で終わったわけではない可能性があります。

 最初に見られた複数回の減光は、2つの天体が接近しながら何度もかすめ合った過程を示していると考えられています。そして最終的に大規模な衝突が発生し、高温の塵や岩石が大量に放出されたとみられています。

 この破片が星の光を遮る一方で、赤外線が強く輝いたことで、今回の特徴的な観測結果につながりました。

 若い恒星系ではこうした衝突が起きていると考えられていますが、実際にここまで明確に捉えられるケースは非常に珍しいとされています。

画像は「University of Washington/Andy Tzanidakis」からの引用
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「月」誕生と似た現象の可能性

 今回の発見が注目されている理由は、その珍しさだけではありません。この衝突は、約45億年前に地球と月を生み出したとされる“巨大衝突”と似ている可能性があるのです。

 現在の有力な説では、火星ほどの大きさの天体が地球に衝突し、その破片が集まって月になったと考えられています。今回観測された現象も、それに近い条件で起きたとする見方が出ています。

 さらに、衝突によって生じた塵の雲が、地球と太陽の距離に近い軌道を回っている点も共通しています。こうした環境では、長い時間をかけて再び天体が形づくられていく可能性もあるとされます。

 もちろん、今回の現象がそのまま月誕生と同じ過程を示しているとは断定できません。しかし、似た条件が観測されたことは、過去の出来事を理解するうえで重要なヒントになるとみられています。

画像はNASA.GOV「Moon Formation」からの引用
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惑星同士の衝突が教えてくれるもの

 研究チームは今後、同様の現象をさらに探していく方針です。新しい望遠鏡の観測によって、今後10年のあいだに多くの事例が見つかる可能性もあるとされています。

 こうした惑星同士の衝突がどの程度起きているのかを知ることは、惑星がどのように形づくられるのかを理解するうえで欠かせません。そして、それは地球のような環境がどのように生まれるのかを考える手がかりにもつながっていきます。

 遠い宇宙で起きたひとつの衝突。そのわずかな光の変化の中に、私たちのルーツをひもとくヒントが隠されているのかもしれません。

 この研究成果は2026年3月11日付の『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されました。

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参照