何かを書き、まとめ上げて公開する――そんなアウトプットの道具として、パソコンやスマホがすっかりおなじみとなりましたが、そこに至るまでの時代にワープロが活躍していたのを覚えておられるでしょうか。

 ワープロは文字の入力ができる機器で、編集に加え、プリンターもついていて1台で印刷もできました。文章の入力をするという部分は現在のパソコンでメモ機能やWordを使うのに似ています。

 国内では、1978年に初の日本語ワードプロセッサが発表されました。文章を書き、編集するツールとして普及したワープロも、2000年代には国内メーカーが相次いで生産から撤退したことから、触ったことのない方も大勢いらっしゃるでしょうし、ワープロそのものを知らない方もおられることでしょう。

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今回紹介する同人誌

『「ワープロ」の記録 文章系同人誌編』A4 88ページ 表紙カラー、本文モノクロ
著者:福井県人

ワープロを触ったことありますか?
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パソコン前の時代……ワープロと同人誌の関係に焦点を当てる

 今回のご本は、文章をメインにした同人誌において、ワープロが使われていた様子をたどる内容です。ワープロが発売され、同人誌制作でも活用されはじめ、浸透していく動向、文章系の自費出版物における紙面構成についてなど、ワープロ登場の前後でどのような変化があったのかを追っています。

 さらに作者さんはこのご本の前に『「ワープロ」の記録 歴史・技術編』という同人誌を出しているほど、ワープロについて深掘りされています。今回のご本でもワープロを軸にして、一般的な印刷の流れ、印刷の種類などについてもたっぷりとページが割かれています。

販売価格が下がり、入手しやすくなったことからワープロの利用も拡大
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文字を“清書”しなくてよくなった! 手書き文字からフォントへのインパクト

 1970年代ごろまで個人やグループで同人誌を作ろうと思ったら、文字はおおむね手書きでした。評論本や情報系はもちろん、小説だって全て手書きです。私も、「あのころは、字をきれいに書ける人が“清書担当”で、読みやすく書き直してくれていたんだよ」という話をお聞きしたことがあります。それが、ワープロによって誰が使っても整った均一な文字を出力できるようになったことは、いかほどのインパクトだったでしょうか!

 ご本では、文芸同人誌の印刷状況から、ミニコミ誌、SFジャンルでのファンの盛り上がり、そして同人誌即売会が開かれるようになったころの本づくりへと話が進んでいきます。資料としては、昭和の文芸同人誌を扱った『同人誌年鑑』や、歴史あるSF同人誌『宇宙塵』、アニメ雑誌の同人誌紹介など幅広い資料から情報が集約されています。

 そこから、例えばコミケカタログのサークルカットに「小説」や「Novel」と書かれているものを数え、1980年代後半から1990年代にかけてコミケ参加サークル数が増加していくなかで、小説本もぐんと伸びていった様子が浮かび上がるなど、長期的な視点でワープロと同人誌の関係が見えてきます。

ワープロが広まる前は? にも着目
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実体験と資料、調査から見えてくる当時の姿

 作者さんはご自身でも1985年からワープロを使った同人誌制作をされてきたとのことで、この実体験も随所からうかがえます。ワープロを使った同人誌を出せば、即売会の会場で「すごい、ワープロだ!」と感心されたり、ワープロを所持していた仲間が夏休みにワープロを持って帰省してしまったため作業ができず、次の本では手書きに戻ったり……と、当時の様子がいきいきと伝わってきて、なんとも楽しそうです。

 印刷前の原稿作りについても、一枚ずつ印刷用の紙を手動でセットしたり、感熱紙を使ったり、ワープロから打ち出した紙を原稿用紙に切り貼りして紙面構成をしたりと、具体的な作業が見えてきますし、ワープロが普及した後年には小説用原稿用紙が発売されたことなど、同時代を体験してきた方ならではの細やかな記述が光ります。

 さらに、当時ご自身が購入していた評論系や、マンガ家さんのファンクラブの同人誌をもとに、どのメーカーの何ドットのフォントかを判別し、使用状況を調査するなど、これまでのご活動に基づく深い知見が随所で発揮されています。ワープロを使って同人誌を作ったことのある私も、「そうなんだ!? そういうことがあったんだ!」と、知らなかったワープロの歩みをかみ締めました。

 体験と見識、調査を掛け合わせた厚みによって、懐かしさや追想だけでなく、今、私たちが楽しく活動している同人誌が、過去からのさまざまな積み重ねの上に続いてきたことに思いをはせました。

データ入稿が普及する前の、アナログならではのあれこれの手間が詰まっています
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サークル情報

サークル名: 懐旧的映像資料
入手できる場所:メロンブックス
次回イベント参加予定:コミックマーケット109(2026年12月31日)
X:@fukui_kenjin

今週の余談

 学生のお小遣いの範囲でやりくりするべく、印字のためのインクリボンをひっくり返して再利用……私もしてました! 道具があるから表現が広がっていくの、うれしいですね。

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