アートとエンターテインメントが交差する最先端を知る――「第9回 文化庁メディア芸術祭賞贈呈式」(2/2 ページ)

» 2006年02月23日 19時50分 公開
[加藤亘,ITmedia]
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アニメーション部門

 長編、短編を問わずアニメーション作品がデジタル技術を用いて作られた映像作品を対象にしたアニメーション部門では、アニメーション部門主査の富野由悠季氏の言を借りれば混迷を極めたものとなったとのこと。その中でも榊原澄人氏の「浮楼」が選ばれたのは、「変化する機能」を映像作品として組み入れたアイディアが評価されたようだ。NHK人形劇「三国志」などで人形美術を担当した川本喜八郎氏が優秀賞に選ばれたのは印象深い。

「浮楼」で大賞を受賞した榊原澄人氏はうれしさを素直に表現。この作品は、日々の営みが平穏に繰り返される街を俯瞰しており、見続けていると建物を出入りする人や街頭で停まる車、かけていく犬などバラバラに繰り返されている動きが、次第に関わり合うかのように見えてくる。やがてその中に、ある女性の成長のドラマが忍ばされていることに気付くという、人生の時間を静かに見せる

大賞「浮楼」榊原澄人
優秀賞「死者の書」川本喜八郎
「かみちゅ」舛成孝二
「flowery」橋本大佑
「年をとった鰐」山村浩二
奨励賞「seasons」藤田純平
(C)榊原 澄人

マンガ部門

 ストーリー漫画、コマ漫画、オンライン漫画、実制作漫画を対象にしたもので、今年度は吾妻ひでお氏の「失踪日記」が大賞に輝いた。今年度は応募作品も多く増えたものの、海外からの応募がアニメーション部門に比べ少なかったのが残念と部門主査の里中満智子氏がコメントを寄せている。

「失踪日記」の吾妻ひでお氏は「ホームレスはけっこう寂しいです」とだけ発言。吾妻氏は1970年代後半に「不条理漫画」と呼ばれるジャンルを確立した人物。本作は、作者自身の突然の失踪から、自殺未遂、路上生活、肉体労働、アルコール中毒、強制入院までの波瀾万丈の日々をつづった赤裸々なノンフィクション作品である

大賞「失踪日記」吾妻ひでお
優秀賞「PLUTO」手塚治虫・浦沢直樹(作)/長崎尚志(プロデュース)/手塚眞(監修)/手塚プロダクション(協力)
「エマ」森薫
「ドラゴン桜」三田紀房
「晩夏」せきねゆき
奨励賞「Web4 コマ漫画」中江嘉男
(C)吾妻ひでお/ イースト・プレス

功労賞

 功労賞が贈られた宮脇修氏は、日本が得意としたミニチュアや模型を、高い技術によって実現しただけでなく、原型師の自由な創作を促し、また原型師の名前を商品に明示することによって、フィギュアを芸術の域にまで高めた功績を称えられた。日本のメディア芸術の新しい分野を開拓した点も評価された。

海洋堂フィギュアミュージアム黒壁館長・宮脇修氏には功労賞が贈られた。作品は「DINOTALES恐竜・古代生物フィギュアコレクション」と「アリスのティーパーティー海洋堂不思議の国のアリス」の2点。宮脇氏は「若い人の中での受賞で緊張しています。日本の新しい文化となりつつあることを認めていただき感謝しています」と受賞の喜びを語った
(C)KAIYODO

 小坂憲次文部科学大臣は、文化庁メディア芸術祭賞贈呈式を総じて多くの応募作品があったことと、海外からの応募が多数寄せられたことに触れ、グローバルに認められた芸術祭に育ってきたと印象を述べつつ、受賞したアーティストに謝辞を贈った。また、アニメ・マンガ・ゲーム・ファッションなど新しい日本ブランドとして、世界に広く知れ渡り魅了している現状を鑑みて、今後もさらなる発展を期待する旨を伝え挨拶とした。

 「第9回 文化庁メディア芸術祭」は2月24日から3月5日までの10日間、受賞した作品のほかにも審査委員会推薦作品を合わせた約180点の作品を展示、上映している。メディア芸術祭の歴代受賞者の新作を中心に展示する「ディバイスアート展」や、各部門の受賞者による「シンポジウム」、アジアからの留学生と日本の学生たちによるアニメーションのワークショップも行われている。また、「第11回学生CGコンテスト受賞作品展」も同時開催されており、静止画、動画、インタラクティブの3部門に応募があった1379作品から選ばれた優秀作品を紹介している。

平成17年度〔第9回〕文化庁メディア芸術祭

  • 会期:2006年2月24日(金)〜3月5日(日)10時〜18時(※木・金は20時まで)
  • 会場:東京都写真美術館[東京都目黒区三田1-13-3(東京・恵比寿ガーデンプレイス内)]
  • 入場料:無料
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