自然を感じながらプレイする「ボクタイ」シリーズの最新作:「ボクらの太陽 Django&Sabata」レビュー(1/2 ページ)
シリーズ4作目となる本作は、初のニンテンドーDS用タイトルとなり、ニンテンドーDSならではのゲーム性に磨きがかかった。上画面で刻々と変わる天候を味方につけて、ダンジョンを攻略せよ!
2003年にゲームボーイアドバンスソフトとして発売された「ボクらの太陽」(以下、ボクタイ)に筆者は度肝を抜かれた。太陽光を実際にカートリッジに当て、ゲーム中のエナジーをチャージする。発想自体も斬新だが、そこに強いメッセージ性を感じた。晴れの日もあれば雨の日もある。刻々と変わる自然を肌で感じながらゲームをしてほしい……。そんな想いを込められたソフトは今まで決してなかっただろう。
制作したのは、「メタルギアソリッド」でおなじみの小島秀夫監督率いるクリエイター集団・小島組(現在の小島プロダクション)。小島プロダクションの作品は、いつも既存のゲームの枠を破ろうとする力に満ちている。まさにボクタイも象徴的な1本だろう。
その後、同コンセプトで「続・ボクらの太陽 太陽少年ジャンゴ」(2004年)、「新・ボクらの太陽 逆襲のサバタ」(2005年)と1年に1本ずつ続編が出ている。
今書いたように、ボクタイというと、とかく太陽光を使うシステムだけが注目されがちだが、独特の世界観とよく練られたゲーム性も忘れてはならない。闇の一族イモータルと太陽少年が対立するスケールが大きい物語に、やり込み度の高いアクションがマッチする。単純に、太陽光を使うアイディア先行ではシリーズは続かず単発に終わっていただろう。
今回の「ボクらの太陽 Django&Sabata」(以下、「ボクタイDS」)は、シリーズ初となるニンテンドーDS作品。太陽光を感知するセンサーはなくなったが、その分、“気候”をキーワードにしたゲーム性が新しい。上画面には気候シミュレータ「ギジタイ」が表示され、15分に1度、昼から夜へ切り替わる。しかも、晴れ、曇り、雨と天気も変わるのだ。このギジタイを上手に利用するのが今回の大きな要素だ。太陽光センサーがなくなったとはいえ、自然を感じるゲーム性はしっかりと残っている。
あとで詳しく書くが、小島プロダクションらしく、サービス精神も旺盛だ。ボス戦後のシューティングや、ロックマンシリーズの最新作「流星のロックマン」とのコラボ……。プレイヤーに目一杯楽しんでもらおうという気持ちが随所に感じられる。
リニューアルされた世界観
気になる舞台は、前作の“世紀末世界”の設定を一部引き継ぎつつも、主人公の仇敵ヴァンパイアの一族がパワーアップしてしまった“星紀末世界”へと移行した。太陽も外部からコントロール可能なギジタイに代わり、体質を強化する「棺桶スーツ」に身を包んだヴァンパイアは、行動の自由を獲得しているという、相変わらずオリジナリティのある設定だ。
――伝承の時代から人々を脅かすヴァンパイアたち。ついには太陽の力をも克服し、地球は明けることのない夜の闇に包まれた。ヴァンパイアの支配を受け入れた人々は、首輪をつけられ、血液を搾り取られて奴隷のように生きるしかない。暗黒と絶望の時代が到来した。
そんな中、人間狩りを好む残忍な辺境伯ライマーの館に侵入する1人の少年、サバタがいた。暗黒の剣を手に、お供の闇の精霊を連れたサバタは、ギルドの女戦士ビーティーに言い放つ。「オレの前に立ちはだかろうというのなら、何者であろうとたたきつぶすだけだ」と……。
一方、ヴァンパイアへの抵抗運動を続けるギルドには、心に太陽を宿した少年ジャンゴがいた。伝説の戦士トリニティの息子であるジャンゴは、ギルドがヴァンパイアの手の者に襲撃されたとき、真の力に目覚めた。
やがてジャンゴとサバタはクリアカン旧市街の酒場で出会う。2人は協力して戦うことに……。
過去3作と主人公の名前は一緒だが、今回はまったくの別人。2人のキャラクターを紹介しよう。
ジャンゴ
ヴァンパイアに抵抗する組織「ギルド」の見習い銃士。無鉄砲で行動的。戦いの経験は乏しいが、光の星霊獣オテンコさまに導かれ、ゲーム冒頭で秘めた力を発揮する。正義感にあふれた元気少年。
サバタ
暗黒の力を帯びた大剣を振るい、月の光を力とする眼帯の少年。ヴァンパイア狩りに執念を燃やす。相棒の黒猫ネロにしか心を許さない一匹狼だったが、太陽銃を使えるようになったばかりのジャンゴと出会い、女戦士ビーティーに無理やりコンビを組まされてしまう。
太陽の少年と暗黒の少年、これまでの双子という設定もなくなって、新鮮なイメージが生まれた。赤い服を身にまとった熱血少年ジャンゴと、黒いコートを翻すニヒルなサバタの2人の対比が、ストーリーに厚みを生んでいる。反ヴァンパイアという点ではどちらも同じだが、アプローチも考え方もまったく違う。それでも2人いなければ、目的は成し遂げられない。昼と夜の両方が揃って初めて1日が成り立つのと同様だ。キャラクターの背景などはもう少し描き込まれていてもよかったが、暗くて大人びた過去作に対して、アニメ的で明るい新しいボクタイ像を作り出すのに成功している。
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