肩の力を抜いてタッチペンを握ろう。この快適さはクセになる「シムシティ DS」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年03月13日 00時00分 公開
[水野隆志,ITmedia]
前のページへ 1|2       

税金を集めて不足を補い、少しずつ街を大きくする

 さて、とりあえず線に沿って最初の街並みが出来たら、それを見ながら少しずつ線を延ばしていく。この時、真っ直ぐ延ばすのではなく、長方形になるようにするのがお奨めだ。一気にやらずに少しずつ。エネルギーと水が来ているかを確認しながら道路を延ばし、そこに沿った地域を3タイプのどれかにする。まだらにするのではなく、住宅地ならその周囲も住宅地にする、といった感じで集中化を図ろう。

画像 教育や娯楽関連の施設は周囲の土地価値を上げてくれる効果もある。工場の隣よりは緑に囲まれ、レジャー施設に近い場所のほうが人気があるのは当然。魅力の高い土地は周囲よりも発展するので税収アップにつながる

 ところで何かを建設するのには、当然ながら金がかかる。ゲーム開始時に一定額の資金が与えられるが、それだけでは全然足りない。そこで頼りになるのが税金だ。市民は勝手なことも言うが、自発的にそしてごまかしナシで税金をきっちり払ってくれるスゴイ人たちでもある。こうして集めた税金が建設費になる。人口が少なく、実入りも少ないうちは大建造計画など無理。そこで少しずつ、になるわけだ。

 ある程度の人口が集まり、税収入が安定してきたら、次のステップに移るタイミングだろう。何をするのかといえば、ここでも武器となるのは常識だ。ルールを覚える前にちょっと考えてみよう。目的は街を発展させること。そのためにもっとも必要なのは何か。答えは人材である。生きているだけで精一杯の人しかいなくては街を発展させるのは難しい。やはり優れた人材が必要なのだ。

 そこで街として最低限の基盤が出来たら、人材確保のために施設を建てていく。具体的には、教育、健康、娯楽に気を配ることになる。やはりいい人材を育てるには勉強が不可欠。学校がなくてはどうにもならない。初等教育だけではキビしいから大学や図書館といった設備もあったほうがいい。いい人材を育てても病気でバタバタ倒れられては意味がないから病院も建てる。精神的なゆとりもないとツラいから、公園や娯楽施設を建てて気晴らしをさせてあげる。こうして次世代を担うリーダーたちを養成していく。街の最初の基盤を造る時に空けて置いたスペースはこうした施設を建てるのに使うのだ。


画像 「新市長誕生」モードには、20種類のマップが用意されている。超初級から上級までさまざまな難易度があり、初期資金の額や地形が異なる。全部試すだけでも軽く100時間以上は必要。のんびりじっくり楽しもう

 この先はここまでの作業を繰り返すことになる。空き地になっている区画を選んで、まず最低限の施設を建て、人口の増加を待って、学校、病院、公園などを建てていく。マップの大きさにもよるが、難易度が低めのマップでは、面積的には十分な広さがあるので焦ることはない。ある程度距離を取りながらマップのあちこちを発展させ、それぞれの区域がそこそこ発展してきたら、今度はそれを連結して街を拡大していけばいいだろう。離れた地点を結ぶ場合は道路よりも鉄道のほうが効率的だ。

クエストクリアで日本中の名城を手に入れよう

 街の運営に慣れてきたら、マップを埋め尽くす前にいったん「新市長誕生」モードをお休みにして「都市を救え」モードをプレイするのもいい。こちらのモードは、災害やUFOの襲撃などで壊滅的な打撃を負った街を復興させることが目的。途中セーブができないが、それほど難しくなく、時間もかからない。途中ではさみこんだほうがいいのは、クリアするとボーナスとなる特別な建造物が使用可能になるため。このボーナス建物、実は日本の城なのだ。関東、近畿、九州・沖縄など、8つのブロックごとに分かれており、特定地域のマップをクリアすると、その地域にある城が“新市長誕生”モードで設置可能になる。ランドマークとして街の色添えになってくれることだろう。

画像 江戸城、安土城、姫路城などのメジャークラスはもちろん、通好みの渋いセレクトもあり。それぞれの城の解説も付いている

 これまでの内容をあらかじめ踏まえておけば、実際にゲームをプレイする時はかなり遊びやすくなっているはず(だとうれしい)。実際、シムシティは“街の不足を補う”、“そのためには関係ある建物を建てる”という基本ルールで全体が統一されていて、シミュレーションゲームとしては簡単なほうに属する。不足の状況も常識で把握できるレベルだし、対応も感覚的に分かりやすい。

 例えば、街で犯罪が起きている区域があれば警察署を建てればいいだろう、というのはすぐ思いつく。ルールはその常識が活きるように作られているので、多少数があっても混乱することはない。ただ、1つのマスには1つの建物しか建てられないから、どう利用するかで頭をひねることになる。時には街の発展に合わせて再開発をしたほうがいいことも出てくるだろう。ゲームスタート直後は郊外だったので工場地域にしていたのだが、住宅街が大きくなってきた、というような場合だ。そのままにしておくと、住宅街が工場に隣接し、土地の価値が下がってしまう。工場を思い切ってさらに郊外に移すか、住宅地の拡大を止めるか。こうした試行錯誤がリアルタイムで発生するのでプレーヤーはつねに最善の状況を作り出すべく、手を打っていくことになる。対策自体はシンプルなので難しくはないが、奥は深い。まさにシミュレーションゲームとはかくあるべし、という好例なのだ。

ゲームならではの教育ソフトしての価値も十分

 ニンテンドーDSの発売以降、ゲーム業界では一般に“エデュテイメント”と言われる、教育性の高いソフトが人気を集めている。他の携帯機やコンシューマ機でも発売されているが、数の上では何と言ってもDSが中心にあるのは間違いない。脳機能の活性化を図ったり、漢字や英語を覚えたり、パーティゲーム風のクイズに挑んでみたりと、そのバリエーションは広い。もっとも最近になって誕生し、そして活況を呈しているジャンルだ。

 だが、エデュテイメントソフトの隆盛はそれはそれでいいことなのだが、ゲームにはもともと学習性の強い作品が多かったことも忘れてはならない。ゲームを使って学習効果を図ろうという発想は、32ビット機以降、強くなってきたし、現にプレイステーションの初期には純粋な学習を前提としたソフトも発売された。PCゲームはさらに進んでおり、1990年代には早くもそういった動きが出始めている。中でもシミュレーションゲームはその性質上、学習にも応用できることが珍しくなかった。

 「シムシティ」は、そうした観点から見た場合、とりわけ優れた学習性を有している。まずテーマ。現代の都市を発展させるという目的はそのまま社会の勉強になる。街がどういう成り立ちになっていて、どんな施設がどんな役割を担っているのか。前述したようにルールがシンプルかつ常識に沿っているため、ゲームの中ではこうだけど、現実は違う、といった齟齬が生じにくい。もちろん現実は遥かに複雑だが、学習の端緒ではまず原則を捉えることが大切だ。リアリティよりも概念を把握したほうが後の学習効果が高まる。加えて、街の状況が刻一刻と変化するというシステムが、つねに試行錯誤を要求するという脳への刺激効果を生み出す。タッチペンの操作は、指先の巧緻性の向上に繋がる(かもしれない)。

 任天堂はトランプ、花札のメーカーだった当時から、家庭での遊びを意識してきた会社だ。その企業精神はWiiにもよく表れているが、エデュテイメントソフトを充実させることで、高齢者層も取り込んだニンテンドーDSも立派に三世代が遊べるハードと言えよう。子供がプレイして行き詰まり、高齢者が大人の常識を働かしてヒントを出すことでそれを解決する。孫と祖父祖母とのコミュニケーションがそこに生まれる。「シムシティ」はそれだけの可能性を内在している。ゲームの社会的地位が上がり、生活の中に着実に根ざしている今こそ、「シムシティ」の役割はさらに増しているのかもしれない。

シムシティ DS
対応機種 ニンテンドーDS
メーカー エレクトロニック・アーツ
ジャンル 都市育成シミュレーション
発売日 発売中
価格(税込) 4980円
プレイ人数 1人
(C)2007 Electronic Arts Inc. All rights reserved. Electronic Arts, SimCity, EA and the EA logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All other trademarks are the property of their respective owners. EA is an Electronic Arts brand.


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/08/news177.jpg イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  2. /nl/articles/2411/06/news180.jpg 「むりだろww」「笑いました」 ニトリでソファ購入 → 愛車の前でぼうぜん…… “まさかの悲劇”が1000万表示
  3. /nl/articles/2411/07/news182.jpg 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  4. /nl/articles/2411/07/news163.jpg 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. /nl/articles/2411/05/news138.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  6. /nl/articles/2411/08/news132.jpg peco、息子の近影を公開「すごーくりゅうちぇるに見えます!」「パパに似てる〜」 息子のスクールランチも色とりどりでおいしそう
  7. /nl/articles/2411/08/news143.jpg 高嶋ちさ子、3000万円超の“超高級外車”ゲットにドヤ顔も! 笑い止まらずハンドル握り「Woohoo!!!」
  8. /nl/articles/2411/07/news029.jpg 50代主婦が5日間、ひたすら草抜き&庭木の剪定→たった一人でやり遂げたとは思えないビフォーアフターに称賛の嵐 「尊敬する」「本当に脱帽です」
  9. /nl/articles/2411/08/news025.jpg 「そうはならんやろ」クルマ修理会社の壁を見ると…… まさかの“シュールすぎるイラスト”に9万いいね 「よすぎる」「天才か」
  10. /nl/articles/2411/08/news111.jpg 2人組ガールズユニット、突然の脱退を発表 マネージャー「本人の意思ではない」 母親とする人物からの脱退理由と経緯説明が物議
先週の総合アクセスTOP10
  1. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  2. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  3. 結婚相手を連れてくる妹に「他の人に会わせられない」と言われた兄、プロがイメチェンしたら…… 「鈴木亮平さんに見えた」大変身に驚がく
  4. 「2007年に紅白出場」 38歳になった“グラビア界の黒船”が1年ぶりに近影公開→驚きの声続々
  5. 「クソビビったwww」 ハードオフに38万5000円で売っていた「衝撃的な商品」が90万表示 「売った人突き止めたい」
  6. 夫婦喧嘩した翌朝の弁当を夫が作ったら…… “森”すぎるビジュアルに「インパクトすごい」「最高に笑いました」の声
  7. 約9万円の「高級激レアガンプラ」を10時間かけて制作→完成品に「家宝だ」「めっちゃくちゃにかっこいい!!」
  8. 天皇皇后両陛下主催の園遊会、“お土産”に注目 ジョージア大使「大好物です」「娘たちからも大好評」
  9. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  10. 事故で重体の人気日本人TikToker、1カ月の意識不明と家族ケア経て逝去……“旅立ち直前に会った”親友は「励ましに来てくれてたのかな」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた