プロジェクターは“第三のゲーム体験”を生み出せるか――メディアクリエイト細川氏:「Game Tools & Middleware Forum 2008」
ゲーム開発者向けのセミナー「Game Tools & Middleware Forum 2008」が本日開催された。基調講演にはメディアクリエイトの細川敦代表取締役が登壇。ゲームハードの未来について考察した。
「Game Tools & Middleware Forum 2008」はウェブテクノロジ、オートデスク、シリコンスタジオ、Dolby Japan、ボーンデジタルといったゲーム開発向けツール・ミドルウェアメーカーにより主催される、開発者向けのセミナー。2003年より毎年開催されているが、本年は6月4日の東京会場をはじめ、6月13日には福岡、6月17日には大阪で開催される運びとなっている(関連記事参照)。
本日開催された東京会場では、第1回目のセッションとして、メディアクリエイト 細川敦代表取締役による基調講演が開催された。メディアクリエイトはご存じの人も多いと思うが、ゲームビジネスを中心とするデジタルエンターテインメント産業にフォーカスしたマーケティング会社だ。ITmedia +D Gamesでも週間ソフト販売ランキングを提供していただいている。
メディアクリエイトが創業したのは1995年。プレイステーションやセガサターンが覇を競っていた時期となるが、同社の調べによると、プレイステーションの時代はソフト装着率(ソフト累計販売本数÷ハード累計販売台数)は10.96であったのに対して、プレイステーション 2となると8.27まで下がってしまっているとのこと。プレイステーションに比べると、プレイステーション 2のソフト市場は7割になってしまっている、と細川氏。
ファミリーコンピュータが登場して以来、テレビゲームはこれまでテレビへ出力し、再生するという“テレビと一体的な関係”を作ってきたのだが、最近はテレビを巡る競争が激化してきた、と細川氏は語る。「テレビが1世帯に1台という時代から1人に1台という状況になってきたところ、大画面液晶テレビの普及、ハイビジョン化などにより、再びリビングに1台という時代になった。このためテレビの取り合いが始まっている」(細川氏)。ただしリビングでのシーンを見ると、テレビはとりあえず付いているものの、それを見ながら携帯型ゲーム機で遊ぶなど、スタイルフリーとしての携帯型ゲーム機の存在が挙げられる。これがニンテンドーDSやPSPが伸びた要因であると細川氏は見る。携帯型ゲーム機は外出先で使われていると思われがちだが、同社のリサーチでは、約7割が自宅でプレイしているという結果が出ているそうだ。
ハードメーカーの視点から見ると、ゲーム機がテレビから外されないように頑張るか、もしくはテレビを制していくことが大事だと細川氏。「プレイステーション 3、Xbox、そしてWiiの3機種ともに制する方向であると思う。テレビが“主”となる関係というよりイーブンな関係を築きたいのではないか。今後テレビがネットワークに対応し、『IPTV』とも呼べる時代が来た時には、IPTVとネットをつなぐセットトップボックス(STB)としてのゲートウェイを目指しているのかもしれない」(細川氏)。
そして細川氏は「これまでのように、ハードの伸びに合わせてソフト市場が拡大するというのは幻想にしか過ぎない」と指摘する。「コンテンツがあふれる時代にはパッケージ契約が主流となって、1つ1つのサービスを個別で購入することはあり得ない。このため配信ではなくパッケージソフトのほうが優位だろう。最終的に配信が主になると思うが、パッケージがなくなるとも思えない」(細川氏)。つまりゲームソフトはハードウェアと同じ道を選ぶのではなく、どこかの時点でテレビと離れなければならない、と細川氏。テレビゲーム自体が、新たな出力先を考えなければならない時になっているわけだ。
その出力先について細川氏が有望視するのは“プロジェクター”。現在はプロジェクターの性能も向上し、小型で軽量、高輝度なものが登場している。細川氏は5年後くらいには携帯電話にプロジェクターが入るかもしれない、と聞いたこともあるそうだ。プロジェクターの利点は、壁や天上だけでなく、局面や立体にも投影できることにある。そして各種センサーとの組み合わせも可能だ。
「プロジェクターをゲームの出力先として選ぶ、という考えはこれまでもあっただろう。加えて、解像度の落ちるものをなぜ使うのかという話もあるとは思う。しかしテレビを巡る環境も変わった。なにより、高解像度がすべてでない、ファミリー向け、カジュアル向けのゲームが出てきていることも、この3年間の変化で知っている。そういう意味ではプロジェクターを巡る環境も変わってきた。解像度勝負からアイディア勝負へ、“ありもの”を使ってゲームを楽しむ環境が実現する。アイディア次第でいろいろなことが変わる。テレビのあり方が変わってしまい、その変化の中で翻弄(ほんろう)されるゲームソフト市場において、ほかのコンテンツと勝負してテレビと一緒に生きることを選んでもいいだろう。ただしほかの選択肢もあるということだ」(細川氏)。
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