ニンテンドーDSでよみがえった王道RPGは、やっぱり王道を行っていた:「ヘラクレスの栄光 魂の証明」レビュー(1/3 ページ)
「ヘラクレスの栄光」と聞いて、さまざまな思い出が頭によぎる人もいるだろう。ファミコン時代からスーパーファミコン時代まで、本格RPGとして名を馳せたあの「ヘラクレスの栄光」が、長い時を経て帰ってきた! DSで生まれ変わったギリシャ神話の世界をどうぞっ。
14年ぶりにDSで“栄光”を手にした“ヘラクレス”
「ヘラクレスの栄光」……。このタイトルを聞いて「うわ、懐かしい」と思ったファミコン世代の人、手を挙げて! ハイ!
というわけで、筆者もファミコン世代の1人として「ヘラクレスの栄光」という名前に「お! 新作出るの?」と反応してしまった人間だ。
「ヘラクレスの栄光」シリーズは、ファミリーコンピュータで「ドラゴンクエスト」が1986年5月に発売され、RPGというジャンルが広く認知されはじめたころに登場した本格的RPG。1987年6月にデータイーストから発売された1作目「闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光」は、「ドラゴンクエスト」の約1年後、「ファイナルファンタジー」(1987年12月発売)の約半年前にリリースされている。まさにファミコンにおけるRPG群雄割拠の時代に生まれた1作だと言っていいだろう。
当時「ドラゴンクエスト」でRPGの面白さを知った筆者は、この「闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光」にも手をつけ、その神話っぽい雰囲気を楽しんだものだ。各武器、防具に“耐久力”があり、使えば使うほど疲弊する(鍛冶屋に行けば直してもらえる)というシステムは、子供心に「リアルだなぁ」と思い、夢中になって遊んだのを今でも覚えている。
その後の「ヘラクレスの栄光」シリーズは、「ヘラクレスの栄光II タイタンの滅亡」(ファミリーコンピュータ)、「ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙」(スーパーファミコン)、 「ヘラクレスの栄光 動き出した神々」(ゲームボーイ)、「ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物」(スーパーファミコン)と、続々リリースされている。タイトルに“ヘラクレス”とあるように、ギリシャ神話をモチーフにした幻想的な世界観が特徴のRPGシリーズだ。
当時はそこそこ人気があったように思うが、「ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物」以降まったく新作は発売されず、2003年には残念なことにデータイーストが破産宣言をして会社がなくなってしまった。もはや「ヘラクレスの栄光」シリーズの新作は出ないのか……と思いきや、データイーストの知的所有権の一部はパオンに引き継がれ、14年ぶりに「ヘラクレスの栄光」シリーズの新作が世に出ることになった。それが本作「ヘラクレスの栄光 魂の証明」だ。
ニンテンドーDSでよみがえった「ヘラクレスの栄光」は、パオンが開発を手がけ、任天堂から発売された。ファミコン時代から「ヘラクレスの栄光」を知っている人間としては任天堂から「ヘラクレスの栄光」が出る、というのは何だか不思議な感覚だが、とにもかくにも「ヘラクレスの栄光」祝・復活! なのである。
豊かな演出で描かれるギリシャ神話の世界で、オリンポスを目指せ
本作の世界観は前述の通り、ギリシャ神話をモチーフにしている。オリンポスの神々が世界を統治していた時代を描く、一大ファンタジー絵巻だ。
プレイヤーキャラである主人公が、記憶を失って海岸に倒れているところから物語は始まる。高いところから何度落ちても死なない主人公は、どうやら“不死”の能力を持っているらしい。同じく不死の能力を持つ少年(?)ロコスと出会った主人公は、ロコスとともに自分は何者なのかを探す旅に出ることになる。
冒頭に出会う妖精たちからは「英雄ヘラクレス」と呼ばれる主人公だが、冒険の中で自らに名前をつけ(序盤のあるタイミングで、主人公にはヘラクレス以外の名前を自由につけることができる)、オリンポスを目指す旅に出る。美形の青年シュキオン、頼りになるガズス船長、豪快で陽気なヘラクレス(自分をヘラクレスだと名乗る謎の男)、事故に巻き込まれ記憶をなくした少女エリスなど個性豊かな仲間たちと出会いながら、主人公は成長していく。
果たして主人公は本当にヘラクレスなのか。なぜ不死の能力を持っているのか。エリスの消えた記憶には何が隠されているのか。そして倒すべき真の敵は誰なのか――。壮大な神話の世界を舞台に、謎多き物語を楽しむことができる。
本作のグラフィックは基本的に3Dポリゴンで、街やダンジョンの中はクォータービュー(斜め上からの視点)で描かれている。街の中では、LボタンやRボタンで視点を横回転させることができ、臨場感を感じることができるようになっている。
グラフィックのクオリティに関しては、ニンテンドーDSというのを考慮に入れても若干粗いと言わざるを得ないが、会話のたびにアイコンで感情を表したり、細かい動きをするキャラたちは、生き生きと描写されていると言っていい。戦闘中に回復行動をとると、回復役「がんばって」、回復されたキャラ「ありがとよ」などというセリフのやりとりがあったり、ボス戦終盤になると「かなり効いてますよ。もう一息です!」と仲間のキャラが発言するという演出も、豊かなキャラ造形につながっている。レベルアップ時に「やったー!」とか「ふふふ」など、キャラの性格にあった一言リアクションをとるのも、愛嬌があって好印象だ。
また、本作において一際秀逸なのが、BGMなどの音楽の数々だ。移動中、戦闘中、それぞれに雰囲気を盛り上げる音楽がかかり、確実にプレイヤーのテンションを上げる手助けをしてくれている。電車の中など屋外でプレイする際は音なしでプレイすることも多いかもしれないが、本作に関して言えば、ぜひイヤフォンなどをつけて音ありでやってほしいところだ。
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