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ツインレバーでビル登ろう「クレイジークライマー」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)

連載第64回は日本物産の「クレイジークライマー」。ビルを登るという設定、ツインレバーによる操作、個性的な敵キャラクターなど、絶大なインパクトを残したゲーム。突然変異的に出現した異色作といえます。

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生物も無生物も入り乱れて、クライマーを総攻撃

photo 踏ん張り状態なら、植木鉢や空き瓶が当たっても耐えられるが、この写真のように体勢が崩れる

 窓から顔を出す“おじゃまMAN”は、真下に植木鉢や空き瓶などを落としてくる。なぜ彼らはこんな妨害を? と思う間もないほどやたらと出てきて、とても避けきれない。

 でも、両手で窓枠につかまった状態で、レバーを下に倒し、上体の重さを両腕に預ける形にすれば大丈夫。衝撃を両腕で踏ん張って受け止め、おじゃまMANが落とすものを、頭で跳ね飛ばすことができる。

 この際、体勢が崩れるので、急いで元の状態に戻さないと、続けて別のものが落ちてきた時に支えきれない。レバーを下に入れっぱなしにすれば、崩れた体勢がすぐ元に戻り、降ってきたものを連続して跳ね返せるのだ。

 ただし、ものが頭に当たるたびに、ゴールした時に得られるボーナス点が減っていく。余裕があれば、頭で跳ね返すより、横に移動して避けたほうがいい。

 おじゃまMANの攻撃が一段落したと思ったら、上空から白く大きな“しらけコンドル”という鳥がやってきて、卵やフンを落としていく。これは横移動で避けやすいし、当たっても両腕で踏ん張っていたら落ちずに済む。


photo 出現時のBGMと、かん高い「ホヤ!」という声が印象的なキングゴリラ

 再びおじゃまMANの攻撃が続いた後、登場するのは“キングゴリラ”。ビルの特定の階で、左右に瞬間移動しながらパンチを繰り出してくる。タイミングを計って登れば問題ないのだが、窓が横2列分しかなく、閉まっている場所によってはちょっと苦労する。

 ちなみに、クレイジークライマーが登場する4年前の1976年、映画「キングコング」がリメイクされ、翌年には日本でも大ヒットしたが、このキングゴリラがそれと関係あるかどうかは、不明ということにしておこう。

 イメージイラストでビルが火災に遭っていたのは、「タワーリングインフェルノ」を意識したのかもしれないし、そもそも「クレイジークライマー」というタイトル自体、「クレイマー、クレイマー」のパロディかもしれないし。

 2つめのビルに登り始めると、今度は鉄骨や鉄アレイが落ちてくる。

 鉄骨が落ちてくるのもコワいが、鉄アレイに至ってはどこから出てきたのか意味不明だ。でも、意味を考えている暇はない。鉄骨と鉄アレイは斜めに落ちてくることがあるし、レバーを下に入れて踏ん張っても、耐えられない危険性が高いのだ。

 さらに上へ進むと“Nichibutsu”と書かれた看板があるが、電飾用の線が切れて火花が出ている。このビルの管理体制はどうなっているのかと思うが、クライマーにとっては大したトラップではない。火花の届かない場所を通ればいいからだ。

 しかし、さらに進むと別の看板が、大きな音を立てて落ちてくる。しかも何枚も何枚も。このビルの管理体制は……。さすがにこれが当たれば、踏ん張ろうが何しようがひとたまりもないので、急いで避けないとならない。

photophotophoto (写真左)鉄骨と鉄アレイは、横移動で避けるのが基本。避け切れなかったら踏ん張って、運を天に任せるしかない
(写真中央)火花が飛び出す“シビレ看板”。当たってもすぐにミスにはならない
(写真右)“ハズレ看板”。この大きさの看板が、次々と落ちてくるのだ

時代を感じさせる音楽と音声

 敵キャラもインパクトがあったが、BGMや効果音もまたインパクトがあった。

 ビルを登り始める時(各ステージの頭)に流れる曲は、ヘンリー・マンシーニの「小象の行進」の1フレーズ。「ハタリ!」という映画の挿入曲だそうで、テレビでサバンナの映像が出てくるときのBGMに良く使われる。

photo しらけコンドル。今30歳以下の方のほとんどは多分、元ネタをご存じないんじゃないだろうか?

 しらけコンドルの登場BGMは、もちろん「しらけ鳥音頭」。1970年代後半、小松政夫さんが「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」というテレビ番組のコントで歌って大ヒットした曲だ。

 ゴリラ登場時のBGMは「ピンク・パンサーのテーマ」。こちらもヘンリー・マンシーニだ。「8時だヨ!全員集合」で、泥棒コントのときに使われたことで、当時の小学生にもおなじみの曲だった。


photo ラッキー・バルーン。あせってつかもうとしても逃げていってしまう。下りてきたところを狙ってつかむのが良い

 クライマーがビルを登っている途中、どこからともなく巨大な風船が現れることがある。これは“ラッキー・バルーン”と呼ばれ、クライマーが風船のひもをつかむと、何階か上まで連れていってもらえる。

 この時のBGMは、アニメ「ドラえもん」の主題歌「ドラえもんのうた」。テレビ朝日版「ドラえもん」の放送開始は、クレイジークライマー登場の前年、1979年だった。


 これらのBGMは、どうやら音楽著作権の使用料を払わずに使われていたようだ。後年、クレイジークライマーは数々のゲーム機に移植されているが、曲が少し変わっているものと、日本音楽著作権協会(JASRAC)を通して使用許可を得たもの(パッケージにJASRACのマークがついている)がある。

 BGM以外では、音声が数多く使われているのも印象的だった。おじゃまMANの落としものが当たると、クライマーが“イテ!”と言うし、クライマーがなかなか上に進めないでいると、“ガンバレ!”と声がかかる。ゴリラはパンチを出す時に“ホヤ!”と叫ぶ。ミスすると“あれー”という声を残してクライマーが落ちていく。

 しゃべるゲームとしては、同じ1980年に登場した「スピーク&レスキュー」(サン電子)が最初とされ、ほかに同年「キング&バルーン」(ナムコ)もリリースされたが、ゲームがしゃべること自体が、それらのゲームの大きな売りとなっていた。

 なにしろ、“しゃべる自動販売機”の出現が、ニュースになるような時代だったのだ。機械がしゃべるというのは、鉄腕アトムやドラえもんのような、意思を持ったロボットが活躍する未来を予感させたものだった。

実は各世代の家庭用ゲーム機に移植されている

 先ほどもちょっと触れたが、クレイジークライマーは、家庭用ゲーム機に何度か移植されている。

 ファミコンへの移植は1986年。アーケード版から6年経っているので、グラフィックが新たに描き直されており、ゲーム内容にも大幅にアレンジが施されているらしいのだが、残念ながらわたしは入手できなかった。ツインレバーの操作は、コントローラーを2個使うことで再現。十字キーにかぶせる、小さいジョイスティックがついていたようだ。

photo スーパーファミコン版には、グラフィックを新しくしたアレンジモードもある。窓がない個所が素通しになっていた。ビル風対策か?

 スーパーファミコンとプレイステーションで発売された「ニチブツアーケードクラシックス」には、クレイジークライマーと「ムーンクレスタ」「フリスキートム」が収録されている。プレイステーション版には「クレイジークライマー'85」など、各作品の続編も収められている。

 スーパーファミコンもプレイステーションも、コントローラーの右手側にボタンが4個ついているので、これらを右レバーの代わりにして操作できる。わたしはスーパーファミコン版をプレイしたが、思っていたより違和感はなく、操作しやすかった。

 プレイステーションではその後、「ハイパークレイジークライマー」「クレイジークライマー2000」というリメイク版も登場。クレイジークライマー2000には元祖クレイジークライマーも収録されている。また、ハムスターから「Major Waveシリーズ」の1本として発売されており、結局プレイステーションには3回も移植されたことになる。

 携帯ゲーム機のワンダースワンでもクレイジークライマーが発売されている。もともとワンダースワンには、方向キーが2組あるので、操作には問題なし。モノクロながらもアーケード版4ステージが再現されており、さらにオリジナルの4ステージも追加されている。


photo プレイステーション2版(「オレたちゲーセン族」シリーズ)の画面。縦横比をアーケード版同様にできる

 プレイステーション2版は2005年発売。ハムスターの「オレたちゲーセン族」シリーズの1本だった。さすがにプレイステーション2、再現度は非常に高い。さらに、コントローラー(デュアルショック)に2本のアナログスティックがついていることが、このゲームを操作するのに好都合だった。

 Wiiでは2007年末、Wiiリモコンとヌンチャクコントローラを使って登る、日本システムから「クレイジークライマーWii」が登場。

 最初のアーケード版が出てからもう28年も経っているのだが、数年に1回のペースで、ゲーム機への移植版が出たり、リメイクされたりしている(ファミコン版からスーパーファミコン版までは9年あいているが、その間にアーケード版「クレイジークライマー2」が出た)。このゲームの息の長さに驚かされる。

 あと、ゲーム機へ移植される際に必ず問題となるのが、独特の操作方法をどうやって再現するかだが、時代が進むごとにコントローラーのボタンが増えて、どんどんクレイジークライマーを移植しやすくなってきた。

 もしかしたら、ゲーム機のコントローラーは、クレイジークライマーのようなゲームがプレイしやすくなるように、進化してきたのかもしれない。

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