ゲームの新しいマーケットを開拓したい――ソニエリ金子氏に聞く「Xperia PLAY SO-01D」の狙い:東京ゲームショウ2011
初代プレイステーションのゲームを遊べる“プレステ携帯”「Xperia PLAY SO-01D」が日本で発売される。どんなユーザー層を狙っているのか。提供されるコンテンツは。海外より発売が遅くなった理由は――。ソニー・エリクソンの金子克之氏に聞いた。
ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが9月15日、「東京ゲームショウ2011」の開催に先立ち、NTTドコモ向けスマートフォン「Xperia PLAY SO-01D」の発表会を開催した。また発表会後に、ソニー・エリクソン マーケティング部 統括部長の金子克之氏にXperia PLAYや同社のスマートフォン戦略について話をうかがう機会を得たので、あわせてリポートする。
ターゲットは「空き時間にゲームをするライトユーザー」
Xperia PLAYはゲーム機能にこだわって開発されたスマートフォン。ソニー・コンピュータエンタテインメントのライセンスプログラム「PlayStation Certified」を取得しており、初代プレイステーションのゲームや、Xperia PLAYのキーパッドに最適化されたゲームを遊べる。海外では2011年春から発売されており、日本での発売はこれまで明言されていなかったが、ゲームコンテンツがそろったこともあり、晴れて発売となった。
金子氏は「海外でXperia PLAYを発表して以来、日本での発売を望む声をたくさんいただいていた。Xperia PLAYはクオリティの高いゲームを気軽に楽しんでもらうための1台。豊富なゲームタイトルも魅力の1つ」と説明する。同氏によると、スマートフォンでのゲーム利用は、電話、メール、Web閲覧に次いで4番目に高いという。「スマートフォンでもゲームを楽しみたいというユーザー層が拡大している。Xperia PLAYのゲームキーパッド対応コンテンツがそろうことで、ゲームの新しいマーケットとユーザー体験を開拓できる」と意欲を見せた。
Xperia PLAYのターゲットは「ゲームをヘビーに楽しむ人というよりは、ちょっとした空き時間にゲームをするライトユーザー」(金子氏)。自宅で、というよりは移動中など外出時に遊ぶシーンが想定される。海外では欧州、中国、台湾などで発売されており、米国のVerizon WirelessとAT&Tに供給することも決定した。海外での売れ行きについては「ゲーム層には好評で、今後も売上は拡大する」と同氏はみている。「海外では自宅でゲームをするスタイルが多いが、日本では通勤途中など外出先でゲームをする人が多い」こともあり、Xperia PLAYは日本のゲームスタイルに合ったモデルといえそうだ。
海外のXperia PLAYユーザーの75%が有料ゲームを入手している
海外に比べて日本での発売が遅くなったのは、コンテンツが十分にそろっていなかったため。「日本語対応のソフトを用意しないと、手軽にゲームをしたいという層には浸透しないのでは。ゲームのヘビーユーザーの中には英語版でも遊びたいという人もいるかもしれないが、日本語の対応を重視した」。そして最も大きな要因となるのが、初代プレイステーションのゲームを購入できるAndroid向け「PlayStation Store」の開設だ。Xperia PLAYでは海外での発表当初から“世界初のPlayStation Certified対応スマートフォン”をうたってきたが、肝心のプレステゲームが未配信だった。海外でもXperia PLAY専用のゲームは100タイトルほど配信されているとのことだが、“プレステ携帯”としてのインパクトはどうしても薄くなってしまう。
海外での発売から半年ほどが経ち、Android向けPlayStation Storeの開設とXperia PLAY対応の日本語ゲームがそろうめどが立ったため、10〜11月に日本で発売することが決定した。「Xperia PLAYは今年の夏くらいに日本で出せても不思議ではない状況だったが、日本語対応ゲームがどれほどそろうのか、そろったとしてそのゲームは面白いのか、などを検討し、キャリア(ドコモ)さんへの提案はやや慎重になっていた」と金子氏は話す。PlayStation Storeの開始時期は「年内」の予定で、Xperia PLAYの発売より遅くなる可能性もある。PlayStation Storeはソニー・コンピュータエンタテインメントが運営しているので、ソニー・エリクソンがコントロールできる部分ではないが、端末発売と同時期の開始が望まれる。
PlayStation Store開設当初に配信されるゲームタイトルも発表された。Xperia PLAYにプリインストールされる「みんなのGOLF 2」と「クラッシュ・バンディクー」に加え、「I.Q Intelligent Qube」「アーク ザ ラッド」「XI[sai]」「ポポロクロイス物語」「ワイルドアームズ」「Jumping Flash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」「デストラクション・ダービー」「ジェットモト」「アンドラ」など20タイトル以上がそろう。当初配信されるゲームはすべてソニー・コンピュータエンタテインメント製で、他社ゲームの配信は現時点では未定。また、PlayStation Storeで配信されるゲームは現時点では初代プレステ向けのみで、プレイステーション2やPSP向けゲームの配信は未定。
Xperia PLAYのゲームキーパッドに対応したゲームには、ゲームロフトの「Top HD Games - Gameloft」とGMOの「Gゲー」で配信され、Xperia PLAYの発売時期に合わせて約50タイトルがそろう。Top HD Games - Gameloftには「アサシンクリード 〜アルタイル・クロニクルズ〜 HD」「リアルサッカー2011 HD」「レッツ!ゴルフ2 HD」、Gゲーには「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」「デビル メイ クライ 4 リフレイン」「DARK SPIRITS」などのタイトルが含まれる。こうしたゲーム配信はグローバルで進めるほか、その他の日本のゲームメーカーとも「Xperia PLAY専用ゲームを開発してもらうよう交渉したい」(金子氏)とのこと。
ソニー・エリクソンによると、海外ではXperia PLAY以外のスマートフォンユーザーは無料ゲームを遊ぶ人が多いが、Xperia PLAYユーザーは75%が有料コンテンツをダウンロードしているという。この数字は日本のゲームメーカーにとっても好材料だろうが、一方で対応端末の“数”も重要だ。Xperia PLAYの後継機が登場するかは未定だが、「何らかの形でスマートフォンのゲームを快適に楽しんでもらえる環境は継続していきたい」と金子氏は話す。
マーケティングの優先順位はacro/rayの方が高い
Xperia PLAYのスマートフォンとしてのスペックを見ると、CPUは1GHzのシングルコア、ディスプレイは4インチ、カメラは裏面照射型CMOSセンサー非対応の510万画素CMOS、ROMは1Gバイトなど、この時期に発売されるスマートフォンとしては物足りない感もある。「Xperia arc」のCPUクロック数を1.4GHzに向上させた「Xperia arc S」を開発したように、日本向けXperia PLAYに向けた機能アップは検討しなかったのだろうか。金子氏は「10〜11月に発売するというスケジュールの問題もあり、そこまでは踏み切れなかった。日本市場でマーケットを拡大していく観点で見ると、arc/acro/rayの方が、マーケティング活動に投資するプライオリティは高い」と説明する。
Xperia PLAYはacroやrayのようなマスを狙った製品とは位置付けが異なり、ゲームという新しい価値を提供するもの。PLAYでは、これまでのXperiaシリーズで展開してきたテレビCMを打つ予定はないが、「(Xperia PLAYがよく使われそうな)駅や電車の中を集中的に攻める」(金子氏)手法を取り、発表会の最後に金子氏が発した「ready to play?」という言葉が広告などに使われる予定。
2011年は3月に「Xperia arc SO-01C」、6〜7月に「Xperia acro IS11S」「Xperia acro SO-02C」、8月に「Xperia ray SO-03C」、そして10〜11月にXperia PLAY SO-01Dと、ほぼ1四半期に1台のXperiaシリーズが日本で発売されることになる。ドコモの夏モデルでは、Xperia acroが発売された約1カ月後にXperia rayが発表され、悩ましい思いをした人も多いだろう。Xperia rayのみ5月のドコモ夏モデルの発表に間に合わなかったのは、rayの海外での発表解禁が6月22日だったため。こうしたスケジュールのずれは「できるだけ改善したい」と金子氏は話すが、発表のタイミングはグローバルメーカーならではの難しさがありそうだ。
「名作タイトルからカジュアルなタイトルまでコンテンツが多数そろっているので、手軽にゲームプレーヤー(Xperia PLAY)を外に持ち出してほしい」と話す金子氏。Xperia PLAYは東京ゲームショウのソニー・エリクソンブースで展示されており、ゲームを自由にプレイできる。新しいゲーム体験を得たい人は、訪れてみてはいかがだろうか。
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