スマホ? コンソール? ソーシャル? ゲーム市場の行方:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その44)(2/2 ページ)
サンフランシスコGDCに行ってきたくねくねハニィが8カ月ぶりに記事を書いたらしい。最近変貌するゲーム市場を雑多に語ってるみたいなんで読んでみてもよろしこ……(なんか書き方忘れた)。
「Game Developers Conference 2012」(以下GDC)は別の記事を見てね♪
サンフランシスコで行われたGDCに関しては、もうとっくにニュースになってるので、あんまり語りません(開き直っています)。それよりも、軽く話題だったことなど話してみよかと。
飛び交う言葉は「フリーミアム」、「Free to Play」、「マネタイズ」、「ゲーミフィケーション」。流れは明らかに変わってますよね。GDCの会場すぐそばでAppleが新しいiPadを発表してるのに、GDCではコンソールメーカーがキーノートにも現れず、「勢いの差を感じる」という現地の方々の声も多かったです。昨年は任天堂の岩田社長が3DSについて熱く語ってくれたんだけどね。
もう既にご存じかと思いますが、「Your games just suck.」発言についても触れておきます。インディーズゲームのクリエイターがセッションの中で日本人の「日本のゲームはどう思う?」の質問に答えたもの。直訳すると「おたくの国のゲームはヘタレでんなぁ」ってことでしょか。suckは俗語ですけど、翻訳が難しい。クソとかサイアクとも訳せますが、ハニィは「ヘタレ」と訳すかな。クレイジータクシーでクレイジーな運転をすると、お客さんが「You suck!」と叫んで降りるので(笑)、やはり侮蔑の意味あいが強いんでしょうね(関連記事:「日本のゲームはクソ」発言について「失礼だった」とPhil氏。質問者には励ましのメッセージも)。
リスペクトがない、とかそんなこと今さら言ってはいけません。もちろん黎明期のゲームや個々のタイトルに対してのリスペクトはありますよ。よ〜く質問を聴いてみると「日本の“最近の”ゲームはどう?」って聴いたんだから。オフィシャルの場で個人が発言するのは初めて聴いたけど、実はハニィは5年以上そんな直球をいくつも現場で聴いてきました。それに近いことも書いてきました。
そんな中、「Game Developers Choice Awards」(GDC中にゲーム開発者たちが選んだ優れたゲームの表彰)では「The Elder Scrolls V: Skyrim」がGame of the Yearに輝いたんですけど、久しぶりに「Dark Souls」が日本からノミネート! 大したものです。
GDCは史上最高の2万2500人の参加があった(2011年は1万9000人)そうです。日本人率は低かったけど。来年は3月25日〜29日だって。年度末のクソ忙しいところに当ててきますな。あ、アメリカの年度末は3月じゃないからいいのか。
PCゲームも作ろ!
北米市場の1月、2月のソフトランキングを見てもらえば分かる通り、海外製は必ずと言っていいほどコンソール版に加えてPC版があります。この言い方は実は間違ってて、コンソール版を作るにあたってPCゲームから作る、が正解なのかな?
ゲームと言えばコンソールの市場の大きい日本では、特定のコンソールに向けて開発・販売することが多かったから、PCまでは目が向かなかったのもやむを得ないのですが、欧米ではPCゲームの市場は昔から大きかった。「ハイスペック機になったので単体コンソールでは開発費が回収できない」なんてことを言うずいぶん前からマルチプラットフォーム体制で開発してたんだし、そのマルチプラットフォームの中にPCは入ってたわけす。
さらに国土の広さや小売店の強硬姿勢などからダウンロードは「時間の問題」だったわけで、いよいよそんな「マルチプラットドーム」と「ダウンロード」時代が本格的に到来したです。
たくさんの開発費をかけられる上位パブリシャーが、マーケットシェアの80%を持って行ってしまうようなコンソール市場を追求せず、在庫やマークダウンリスクのないPCダウンロードに偏向する中小以下のパブリッシャーが多いのは至極当然なお話です。
大手ゲーム開発会社であるValve社が運営するPCゲームダウンロードポータル「Steam」は、PCのダウンロードチャンネルとしては世界最大のもの。EAなどの大手パブリッシャーは自社のタイトルをダウンロードさせる動きは大昔からあったものの、ValveはあらゆるPC向けのタイトルを取り扱うので、ゲーマーたちからすればパブリッシャーを限定せずともワンストップでさまざまなタイトルをチェックしてダウンロードできます。
さらにOnLiveやGaikaiなどなどクラウドを利用したデバイスフリーなアイデア(GaiKaiはLGと提携したのでデバイスフリーってのは考え方によっては違うかもねぇ)などなど更に先はありそうなんだけど、日本のメーカーもそろそろPC版からの開発もデフォルトで考えないとまた置いて行かれますよ。デバイスごとにコンバージョン(移植)してたらホント大変ってこと、もうそろそろ気がついてらっしゃるでしょうしね。
FacebookやTwitterがそうであるように、デバイスプロバイダーとサービスプロバイダーが分離するのがあったり前になっています。エコシステムを考えれば日本のゲーム業界の手法は真逆を行ってたのかな(笑)。サービスやタイトルはデバイスと無関係にPCから開発され、その時に可能なデバイスに向けて展開って流れに従わざるを得ない時代がようやく来たのかも……。
無視できないソーシャルゲーム
ここ1、2年でアメリカでは大きなコンソールのパブリッシャーからZyngaやその他のソーシャルコンテンツプロバイダーに転職する人がいっぱい。もちろん「給料が高いからそっちに行ったんだろ?」ってこともあるけど、実際にソーシャルが「成長」市場と見なされているから。10年くらい前に起こった「モバイルコンテンツ」への波とは大きさが違うのを肌で感じるハニィでした。
ソーシャルゲームの先駆者であるZyngaは、Facebookでは不動の地位を築いています。とてもじゃないけど今から割って入るのも困難極まりないかぁ、と思っちゃってたけど、日本からグリーやDeNAが北米をはじめ海外への進出を初め、新たなプラットフォームを構築しようとしているのも見えるから、既存のプラットフォームへのチャレンジのみならず、これらの新規アグリゲータさんに乗っかっちゃうのもひとつの手かもしれませんね。
大型IPのみでなく、ゲーム性で勝負ができるということも最初はアリなので、もしかしたら日本人の得意とするところなのかもとか思ったりもする。
ハニィが最近気になるのは、「ソーシャルゲームはホントのゲームじゃねぇ」という声。そう思う分には止めませんけど、ゲームかどうか判断するのは作り手じゃなくて遊び手なので、そんな極端な言い方をしてはいけましぇん。ホントのゲームってそもそもどんな定義?って聴き返したくなっちゃう。カテゴリの違いとか好みの違いとかいうのはあっても、「ゲーム」は「ゲーム」なんだろなぁと思うけどね〜。
Zyngaの創始者が、クラウドベースのテクノロジーを使ってXboxプラットフォームにコンテンツ供給可能との発言をしたから、「ついに、コンソールにもソーシャルの波が!」とニュースになってました。これも必然というか、正常進化の形ではないでしょうかね。コンソールがいつまでも「形」にこだわっていればユーザーからもコンテンツプロバイダーからもそっぽを向かれるだけです。任天堂のように自社のハードに対して満足のいくタイトルを自前で供給できるような場合は別かもしれませんけどね。
今年のE3は見ものですよ〜♪
そんなソーシャルの強烈なトレンドの中、E3でどうやらハードの発表があるらしいですよ。北米市場の報告のところでも書いたけど、現在のコンソールは発売から6年〜7年経っています。そろそろって声はずいぶん前から聴かれてたけど、ホントにそろそろなんですかね? 既に発表されているWii Uもさらに踏み込んだ話があるでしょうし。
とはいえ、Expoにおいてソーシャルゲームのプロバイダーたちも参加されるでしょうから(グリー、Zyngaなどエントリー済)、既存のコンソールメーカーとソーシャルプラットフォームの共存が見られるわけです。今後の北米志向がどのように引っ張られるのかを見る良い機会なので、皆さん円高を利用して行ってみてはいかがですか?
ゲーム業界においてココまでの大きな波は久しぶり(SCEがPS作ったときとか、セガがハードメーカーじゃなくなったときくらいぶりかなぁ)だし、世界の中心市場と言える北米市場(日本の4〜5倍あります)ですから、特に若い方々にはこの歴史が変わるところを見てほしい気もしますね(大げさ?)。
ハニィのあとがき
スイマセン! 8カ月ぶりでした〜。久しぶりに書いたからめっちゃ毒を吐いてしまった気がする。これはあくまでもハニィの意見なので反論戴いても真摯に受け止めます。ただ、やっぱり気持ちパトリオット(愛国者)のハニィですので、日本のコンテンツをどう海外に評価してもらうかというのが人生の命題だと考えています。
ところで、上述したけどE3は6月5日〜7日まで例年通りLACC(Los Angeles Convention Center)にて行われます。わたくしも参加するツアーもあります(宣伝です)。実際にゲームが売られているお店を周りながら宣伝広告や価格の秘密(笑)などを、専門ガイドがついて説明する予定ですのでご参加ください。
ハニィもようやく落ち着いたので(ホントかよ!)、E3前にはもう1回くらい記事を書きたいなって思ってます(ホントかよ!)。ホントに反省しています(ホントかよ!)。でも、業界の変化に戸惑ってたってのもホンネだったりするんですけどね……。
くねくねハニィのプロフィール
1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。
小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。
1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。
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