大友克洋監督、紫綬褒章を受章 芸術文化の発展に大きく貢献:会見一問一答
アニメ分野では98年秋の高畑勲監督以来となる。
漫画家・アニメーション監督の大友克洋さんが、2013年秋の紫綬褒章を受章した。「長年にわたり、圧倒的な画力(描写)と構図、物語の構築力、鋭い映像感覚をもとに、優れた作品を数多く発表し、国際的な注目を集めるなど、わが国芸術文化の発展に大きく貢献したこと」が理由で、アニメーション分野における受章は、1998年秋の高畑勲監督以来となる。
デビュー40周年を迎えた今年は、7月に最新作「火要鎮」を、オムニバス形式の劇場アニメ「SHORT PEACE」で公開したほか、9月に決定した2020年の東京オリンピック開催を、代表作「AKIRA」で予見していたこともネットで大きく話題になった。
大友さんは10月31日に都内で記者会見し、受章について「自分が対象になるとは知らなかったので驚いた」とコメント。自身の創作活動について「(出来上がったばかりの作品は)自分では面白いと思っているが、客観的にみるのは難しい。こないだ久々にAKIRAをみたら『(当時の自分は)へ~頑張っているなぁ』と思った。たまに古い作品を見ると良かったなと思う」などと語った。
一問一答
――受章の一報をきいたときの感想
章があることは知っていたが、自分が対象になるとは知らなかったので驚いた。そんな年になったのかな。
――これまでを振り返ってどのような作家人生になったと思うか
まだ、終わったわけではないので振り返ったことは全然ない。自分の中では淡々とやってるつもり。「AKIRA」はやはり転機になった。
――作品づくりでこだわっていること
一貫して何かあるかもしれないが、時々によって変わる。発表する際が作品の旬でありたいと考えている。そこには当時の自分の考えや時代が反映されている。
――ライフスタイルについて
朝9~10時に起きて、天気が良ければ散歩などをして11時~22時まで仕事。夜は気分が良いと酒を飲む。最近は忙しくて深夜2時頃まで仕事。机に向かっての作業は約8時間。それ以外に、いろいろと考える時間が必要で、起きている間は大体考えている。女房にはいつもぼんやりしていると言われ、実際半分そうかもしれないが、ぼんやりしていないとでてこないこともある。
――楽しみを感じるとき
企画当初は、「こんなことをやってみたい」「時代の感じからこんなことをやらなければ」と空想が広がって楽しい。実際に作っていると少しづつ変わっていく。映画は企画から考えると1本で約3年かかる。すると、最初に面白いと思ったことを持続するのは大変。やろうとしたことができなくて、完成した時にがっかりすることもある。自分では自分の作品がよく分からない。面白いと思っていても、客観的に見ることは難しい。こないだ久々にAKIRAを見たら「へ~頑張っているなぁ」と思った。たまに古い作品を見ると良かったなと思う。
――昨年、復興支援として原画展を開催していたが、被災地との関わりについて
当時、国のお金が行かないような小さな団体がたくさんあった。原画展のメンバーと話しあい、そういうところを支援したい、目が届く範囲でやってみたいと思った。多くのお客さんが来てくれて支援ができたから満足している。ただ、チャリティ企画なのに税金は高かった(笑)。今後も何かやろうと思っているが、方法は考えなければいけない。
――現在の日本をどうみているか
東京オリンピックも決まって、経済的に明るくなるのかなと漠然とした期待はある。ただ、浮かれてもしょうがない。新しい時代に向けて、自分なりの作品を作りたい。
――日本のアニメは海外で人気があるが、今後の展望について
全体ではややピークがすぎた感じがする。若い人があまり出ていなく、業界内の活気はいまひとつ。大ヒット作はあっても、業界として潤沢な資金があるわけではない。個人的には、こういう章を頂いたので、新作にチャレンジしたい。
――注目している地域はあるか
アジアのアニメなどが話題になったが、そんなに面白いかといえば意外とそうでもない。この業界は、いつどこから誰がでてくるのか分からない。
――「SHORT PEACE」では、年代の若い人と仕事をしていた。若者について
自分で育てる気持ちはあまりないが、若い人・面白い人とは一緒にやりたい。昔のアニメや漫画は日陰者というか、自分の好きなことをできた。近頃は企業も大きくなり、その中での企画が多くなった。そこに、新しい人や変わったことをやってる人は入れない。本来は業界が成長したならば、そういうプレイヤーに光をあてるべきなんだけど、なかなか難しい。次回またオムニバス形式があった時には、そういう面白い人を集めてやりたい。
――若者へのメッセージ
自分は先輩にいろいろ教わってきた。今は本屋に行けば、かなりのことまで分かる。問題は本人がどうやるかで、これは人によって違う。努力の仕方を教えることはできても、作品つくりは自分でやってもらうしかない。若い人には「ここまできてよ」と言うしかない。
関連記事
「AKIRA」の世界と一致! 2020年東京オリンピックで注目集まる
AKIRAの舞台は「2019年、オリンピックを翌年に控えたネオ東京」。作中には「東京オリンピック会場建設地」の看板も登場していました。万年筆だけでこの仕上がり 大友克洋さんの息子・SHOHEIさんの絵がすごすぎる
21時間万年筆で描き続けたという絵のクオリティにただただびっくり。アニメーションは「世界の秘密をのぞき見る」仕事――宮崎監督が語った、引退、ジブリのこれから、作品への思い
長編映画からの引退を決めた宮崎駿監督は、会見で何を語ったか。引退の理由、ジブリの今後、作品への思いなどについてのコメントを、まとめました。ねとらぼ(軽):大友克洋氏らのアニメ映画「SHORT PEACE」の予告公開
7月20日公開の「SHORT PEACE」の予告が解禁された。大友克洋氏らによるアニメーション映画「SHORT PEACE」 7月公開
大友克洋氏、森本晃司氏らによる4作の短編アニメを集めたアニメーション映画「SHORT PEACE」が発表された。Japan Expoでフランス人熱狂:「ひねくれた子だった」――浦沢直樹が語る幼少時代、「MONSTER」「20世紀少年」制作秘話
「Japan Expo 2012」でマンガ家・浦沢直樹氏が講演。ライブアートにHemenwayとのセッションライブなどファンサービスもたっぷりで会場はスタンディングオベーションに包まれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.