BPO、佐村河内氏を紹介した番組に対して見解示す 「裏付け取材は不十分だが、放送倫理違反とまでは言えない」
ただし、各局の自己検証結果の公表を要望している。
放送倫理・番組向上機構「BPO」の放送倫理検証委員会は3月6日、約1年にわたって討議・審理してきた“全聾の天才作曲家”佐村河内守氏の5局7番組に関する見解をまとめ公表した。
委員会によると、「佐村河内氏の作曲活動と聴覚障害に関する各局の裏付け取材は不十分なところもあったが、放送時点において、その放送内容が真実であると信じるに足る相応の理由や根拠が存在していた」として、各対象番組に放送倫理違反があるとまでは言えないと判断した。
全聾でありながら「交響曲第1番HIROSHIMA」などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組などで紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚。虚偽の疑いのある番組が放送されたことにより、視聴者に著しい誤解を与えたのは明らかとして、5局の7番組を対象に審理していた。
対象となる番組は以下のとおり。TBSテレビ「NEWS23」(「音をなくした作曲家 その“闇”と“旋律”」2008年9月15日放送)、テレビ新広島(「いま、ヒロシマが聴こえる… ~全聾作曲家・佐村河内守が紡ぐ闇からの音~」2009年8月6日放送)、テレビ朝日「ワイド!スクランブル」(「人間一滴 被爆2世の天才作曲家 魂の交響曲」2010年8月11日放送)、NHK総合「情報LIVE ただイマ!」(「奇跡の作曲家」2012年11月9日放送)、NHK総合(「NHKスペシャル 魂の旋律 音を失った作曲家」2013年3月31日放送)、TBSテレビ「金曜日のスマたちへ」(「音を失った作曲家 佐村河内守の音楽人生とは」2013年4月26日放送)、日本テレビ「news every.」(「被災地への鎮魂 作曲家・佐村河内守」2013年6月13日放送)。
放送倫理違反ではないとはいえ問題発覚後の対応について、「なぜ虚偽の事実を真実であると信じてしまったのか、番組の取材・制作手法に問題はなかったのか」といった自己検証が不足しているとして、TBSテレビ・テレビ新広島・テレビ朝日・日本テレビの4局に公表を検討するよう要望。ドキュメンタリーを制作したNHKについても再度自己検証し、視聴者に公表するよう呼びかけている。
委員会は番組の制作者に「リサーチや裏付け取材の労を惜しんで、感動的な物語ばかりを安易に求めるとすれば、それは視聴者に対してあまりにも無責任な態度」「実際には立ち会っていない過去の場面を、『再現ドラマ』や『再現映像』で描写することは、制作者にとって危険な賭け」と苦言をていした。
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